オハヨウ
朝、目が覚めるとメアリーの顔が目の前にあった。
昨晩家に帰った後、少しで毛でもすすめておこうと先輩に言われていた短編を書いていたはずなのだが、そのまま眠ってしまっていたようだ。
で、布団で寝ているということはメアリーがひいてくれたのだろう。そしてメアリーがそのまま添い寝したと・・・
今、抱きしめられているような体制なのだが、かたい腕や体なのになんだか安心するような気がしてもう少しこうして眠っていたいような・・・。
そう思い彼女を抱きしめようと
ピンポーン
玄関からチャイム音が鳴る。時計を確認すると出発5分前・・・
「やっば!」
飛び起きて急いで服を着て準備をしていく。家を出ようとしたところで、メアリーは冷蔵庫にあったタピオカドリンクと書きかけの原稿用紙を渡してくれた。
「サンキュウ! それと行ってきます!」
そう言って外に出ると早川が待っていた。初日にひどく遅刻しそうになったうえに、おがいに何度も遅刻しそうになるので、片方が起きたらもう片方も起こすよう習慣がついてしまった。
「遅い、遅刻するわよ」
「なんて言って昨日は早川が遅刻しそうになったじゃないか」
「仕方ないでしょ、面白いドラマがあったの。それよりなんでタピオカ飲んでるのよ」
「タピオカなめるなよ。ハイカロリーだし水分はとれるし、腹の中に多少はたまる効率食なんだぞ。本場でもあさはこれ一杯って言う人結構いるらしいし」
そんな感じに他愛もない会話をしながら学校に登校するのだった。
・・・
・・
・
学校の正門前に着くと長蛇の列ができていた。
なんだなんだと前のほうを確認してみると先頭には足元に段ボール箱を置きいちいちカバンの隅々までチェックする腕章をつけた集団が。
いや、はい生徒会役員たちです。物凄くもったいぶっていたけど単なる抜き打ち検査です。
「げ、抜き打ち・・・」
「なに、なんか変なものでも持ってきたのか?」
「リップ、それも色付きのやつ」
「え、おまえ普段唇染めてなくない?」
早川なのだが、学校に行かない休日とか出くわしたことがあるが、化粧品を一切使っているところを見たことがない。
本人曰く化粧なんてめんどくさいし時間の無駄とか言っていたが、顔に全くコンプレックスになるできものがないという反則的な体質だから言えることだ。
ちなみにうちの学校、化粧や髪染め、アクセサリーなども禁止。制服も改造禁止、靴は黒革靴となっている。例外としては宗教上の物となぜか革製のブーツに関してはOK。いや、なんで?
「薬用のリップと間違って入れたの。出た後に気づいたんだけどめんどくさくて」
そのまま入れっぱなしにしたと。それは災難。
俺は特にカバンに物が入っていない。基本ほとんど学校に置き勉しているし、今日は体育はない。入っているのはせいぜい財布と昨日の作文用紙と宿題くらいだ。
そんなことを考えているととうとう自分の番が回ってくる。
目の前の早川は当然リップを没収されていたが、実はうちの持ち物検査没収物を受け取りにいかなければ反省文を書かなくってよかったりする。多分そのまま処分してもらうんだろうな。
で、俺はというと・・・お、担当生徒会長じゃんラッキー
生徒会長は見た目さわやか系のイケメンで、弓道部のエースかつ成績もトップクラスの文武両道を行く絵にかいたような人物だ。
まぁ、その裏で若干女性恐怖症気味なところがあるように見える。
こういう事務的なところは大丈夫なのだが、女子との会話はなるべく避けようとしている節がある。さっき女子に手をつかまれていたが、軽く赤い斑点が出ていて搔いてるし。
で、何がラッキーかというと以前の持ち物検査で確認せずに通してくれたから、今回も楽に通り抜けられるかもしれないからだ。
生徒会長が俺に気づくと少し安心した感じに・・・いや、なんで俺のことみてリラックスしてるの?
「やぁ、おはよう四方山さん」
おいこら、なんで「さん」なんだ。他の生徒には「君」付けだろうが。
「おはようございます。大変そうですねそれでは・・・」
そう言ってスルーしようとするが、腕をつかまれる。やっぱりスルーさせてくれなかったか。
「まぁ、仕事だからな。ほら見せた見せた」
それはそうだ。しかし、今回も特に持ってきてはいけないものとかは入っていない。それどころか必要なものも特に入っていないのだ。いや、逃げはせんから手さっさと放せや、手握ってくるんじゃない。鞄開けれんだろ。
あと、周りの女子からの目がすっごく痛いんだが?!
「何か見せられないものでも?」
「とくに?」
適当にかばんを開いて中身を見せる。何も問題はないはずだったが・・・
「え?」
鞄の中には入れた覚えがない人形の胸部が入っていた。
Q:荷物検査って風紀委員会では?
A:うちの通ってた学校ではそうだったから




