ヨノナカロクデナシ
翔を逃がすために校舎裏までやって来た。
あの後彼女は、どうしても離れたくないらしく「翔君じゃなくてもいいじゃない」とか「彼女でもないんだから寄り付かないでよ」とか言ってきたためあまりにもらちが明かなかったため翔の腕を引き強引にここまで来たわけだ。
彼女が追ってくると思っていたが、運良く途中で教師に捕まりこうやって巻くことに成功した。
あの教師、裏金お嬢の邪魔をしたわけだけれど明日になったら首になっていたりは・・・いや、さすがに漫画の読みすぎか。
そんなことになっていたら昨日の件で自分も何らかの嫌がらせを食らっているはずだ。流石にそこまでわがまま出来る権力は無いだろう。
「すまん勇太」
「なにが?」
多分あの裏金お嬢から引き離したことだろうがあえて惚けてみる。
「いや、アレから解放してくれたこと」
一昨日は名字だったのにアレ扱いとかさらに悪化してない? それとも普段から本音ではそう呼んでいたのだろうか?
「ああ、気にしないで。それにしてもほんと大変だね翔は」
「お前は別の意味で大変だけどな」
何が? と思ったが昨日と今朝の裏金お嬢の話をしてくる。
どうも昨日逃げた後そのまま学校を早退したらしい。流石に殺したはずの相手がボロボロの状態で目の前に現れたのがかなりきたらしい。
で、翔が家に帰った後彼女に「ホモ男の霊に呪われた!」と泣きつかれたそうだ。
どうやら彼女は一昨日の通り魔をやったことを彼に話したらしい。
翔は何故そんなことをやったのか聞くとなんでも彼とのなかを邪魔する虫を排除しただけとの事。
もしこれが恋人同士だったり大切な相手だったなら好感度も上がったかもしれないし「つらかったな 」と慰めたかもしれない。だが、ただでさえ煙たがられているような相手にそんなことをしようなら評価も下がるだろう。
「というか、ちゃんと話聞いてあげるって優しすぎない?」
「いや、怯えてたら流石に話くらい聞くだろ」
「そういうところが勘違いさせるんでしょ?」
「そういうものなのか?」
そういうものなんです。世の中本当につらい時に手を差しのべられると簡単にころっと行くもの。それも最愛の幼馴染みからなんて余計そうなります。
ただしフツメン以上に限る。
「そういう無意識に善人的行動出来るのほんと尊敬するよ」
「お前だって良く助けてくれるじゃないか」
「そう?ありがと」
なんて返事はしてみるもののあれは普段のお礼だったり、自分に特がある時だけの事で打算的な行動だから実際は違う。
閑話休題
当然始末した俺が目の前に現れたせいで自分に復讐しようと化けて出たと勘違いし呪い殺されちゃうと彼に泣きついたのだ。
当然そんなこともなく保健室まで運んで応急措置もしたわけだし生きていることを確信しているわけで生きていることを言い聞かせたそうだ。
しかし、何故かそのお姫様だっこで運んだ事までこぼしてしまっていたこの阿呆に安心してますます惚れ込んだのはつかの間、当然嫉妬心爆発し普段よりしつこくあれこれ理由をつけて引っ付こうとするし、俺の事排除しようと余計燃え上がるのだった。
「それにしては、そんな殺意感じなかったけれど?」
それだけ殺る気に満ちていたならあの時何か行動しようとするはずだ。それなのにどこか行けと邪険にする程度で敵意までは感じなかった。
まあ戦士でもないから気配なんて感じ取れないけど。
「それは多分、勇太だって気がついてなかったからだと思うぞ」
それはそれでひどくない?
主人公が体はって相手庇うときとか、イケメンの頼みごとほいほい受けてしまう時は大体打算なんてない。
優しさも悪意も判断基準は他人からどう写るかだからね