廃病院side-宮崎-
先輩に連れられてやって来たのは住宅街の外れにある廃病院だった。
木造でできた2階建とその隣に建つコンクリート製の二棟に分かれている病院。
長く使われていないのがわかる名前のわからない蔦の葉が壁面に走っており、いたるところで罅が走っていた。
ここは、私の子供のころからある廃病院で危険だから絶対に入るなと親からよく注意されていた場所だ。
敷地への入り口の一つであるここには立ち入り禁止のロープが張り巡らされており、入ろうと思えば簡単には入れる。
だが、肝心な病院の入り口は板で固定されているため簡単には侵入できないようになっている。
「ここって、【帰らずの病院】だよな?」
帰らずの病院?
ああ、そういえば友達が何か言っていた気がする。
たしかこの病院の新棟に入ってはいけないという話。
この病院は基本扉が封鎖されているけれど牛時?になると扉の封鎖が消えるときがあるらしく、そこに入った人は帰ってこれたためしがないって言ってたっけ。
「ああ、そうだね。多分君の弟もここに肝試しに来たんじゃないのかな?」
廃病院というのは確かにこの町ではここにしかない。
「でも帰れないのでは?」
「ああ、それは新棟のほうの話だ。旧棟ではそういう噂は聞いたことないし、窓が外れる場所があって向こうは入り放題なんだよ」
確かにあの木でできたいかにも古そうな病院と言っていいかわからない方は窓などが簡単に外れそうだ。
「で、祠というのはここにあるのか?」
「ああそうだ」
「よし」
九条は決心したかのかすぐに立ち入り禁止のロープをくぐろうとするが。
「ああまちたまえ、まだ入ってはダメだ」
何故? そう聞こうとすると近場で車のクラクションが鳴る。
何かと思って振り返るとそこには車が止まっており、中から警察のような格好の男性が出てくる。
多分この建物管理している警備員だろう。あれが近づいて来ていたのであれば先輩が制止したのに納得がいく。
「宮北さんですね?」
警備員からの説教が始まるのかと思いきや先輩へと声をかけた。
「はいそうです。忙しい中ありがとうございます」
「どういうことだ?」
「ああ、それは・・・」
宮北先輩はどうも今日ここに来る用事があらかじめあったのだとか。
不法侵入するのもあれだからとあらかじめ警備会社に連絡し許可を取っていたのだという。
「変なところで常識的なんだな・・・」
「何を言うかね? ルールを破るのは必要な時だけ。当たり前のことだろう?」
厳守はしないんだ。
「さぁ、そんなことはさておき祠へと向かおうじゃないか」
オカルト研究部の部長をやっているような人ではあるけれど、守るべきことはしっかりと守っているのかと感心する。
・・・一体何の用でここに来ようとしていたのかは今はあえて聞かないようにしよう。どうせろくな内容じゃない。