表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/163

シカイ⑦

目を開くと風紀委員長の顔が目の前にあった。

目を覚ましたのに気が付いたのか、少し赤くした顔をはなしていく。


「わーお・・・」


かろうじて口から出たのはそんな言葉だった。

目を覚ますのに王子様のキスだなんてそんなメルヘンチックな条件ある?

乙女ゲーもネズミの国のアニメだって今時破廉恥判定されるからってやらないよ。


「おはよう御座います。先輩」


「ああ、おはよう」


そう言って気恥ずかしいのか顔を背けてしまう風紀委員長。ははーん照れてますな、照れてますな?


起き上がろうとすると右腕に重みを感じる。何だと思い見ると例の少女が不服そうな顔で右腕に抱き着いていた。

いや、君はほんとに横にいたんかいと突っ込まざるを得ない。

頭を撫でてやると満足したのか姿を消した。


起き上がり改めてあたりを見渡すとここが集団用の病室だと言うことがわかる。ただ、普通と違う点はかなり多く、明かりはついているはずなのだがかなり薄暗く、壁に血管のような赤黒い管が張り巡らされ、ベッドの上にある繭へとつながっている。

先程まで自分もあの繭に寝かされていたことが分かる。


「ありがとうございます。どうやっても起きられなくって」


「そうか、助けにこれてよかった」


「しかし意外でしたね、先輩が抜け出せるなんて」


「運が良かっただけなので」


運がよかったか。

多分あの繭はここに来た人間に都合のいい夢を見せて逃がさないようにする仕組み。それも納得がいかなかったらある程度書き換えられる仕組みだ。あからさまに非現実的なことが起こっていても初めから夢だと自覚していても少しでもいいなと思える部分があれば出ることもできない。

それを何の特異点のなさそうな風紀委員長が脱出できたということはよっぽど酷い解釈違いの事をされたか、夢だと自覚したうえで自分の願いに対してキレたか。

風紀委員長は自分自身に対して凄く厳しい人なのかもしれない。


それにしても、キスで目覚めさせられるか。

なんでそれが目覚めの鍵になってるかはともかくとして、よく気がついたものだ。

起こし方を教えられてもそうそうできるような事じゃない。あ、そうだよ勝手にキスされたんだよ。

いくら起こすため仕方がなかったからと言って男にキスとかされたんだよ。少しくらいからかっても許されるよね?


「それにしてもよくキスなんて、メルヘンな事思いつきましたね。もしかして夢見た勢いで抑えきれなくなっちゃいました?」


「え、はぁ!?なんで知って!?」


お、おお? 言葉使いが崩れてる。

これはまさかそういうことか、そういう夢見てたか!


「ケイ先輩、違うとか言っておきながらやっちゃったんですか? それも寝てるからって試してみてもいいかななんて思って?」


「その呼び方! なんで、いやそういうことかー!」


そう言って突然頭を掻きむしり始める。ほうほう、まさか風紀委員長、俺と付き合ってる夢見てた? そこまで本気だったかー・・・

呼び方はもし呼ぶとしたらケイ先輩って呼ぶかなと思ってカマ掛けてみたけど、流石リアリティのある夢。そこまで予想して演じるとは恐るべし。

圭吾先輩(・・・・)は夢に本物の俺が出てきてその記憶を持ってると勘違いしていると。もうちょっといじってみるか。


「やっぱりというべきか俺に告白して欲しいだなんて先輩受け身なんですね」


「うぐ」


「しかも告白の返事がハグだとか。嬉しくて言葉を忘れるとかドラマのワンシーンですかね」


「ぬぐぐ」


「まあでも膝枕や何かあるごとにキスするとかのイチャイチャやそれ以上のエロエロなこととかせずに、隣に寄り添って褒めるだけってのはなかなか・・・」


「すみません、もう勘弁してください」


耐えきれなくなったのか言葉を遮る圭吾先輩。

おお、きれいな土下座


単なる想像垂れ流してるだけとか言えないな・・・。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ