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経験値横取りにキレた俺は女装で無双する  作者: 白生荼汰
第三章 過去が背中を追いかけてくる

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閑話 ロージィという少女

「そう上手くはいかないか……」


 アディから離れてしばらく、ロージィは溜息をついた。


 インベントリ持ちで、かつ【回復(ヒール)】まで使えるアディは、たとえ職種が何だったとしても、釣り合うレベルである限り有用な人材だ。

 いちからのやり直しを考えるにしても、もしパーティを組めるならそれに越したことはない。

 それに離れていた間の成長ぶりを考えても、懐具合には多少の余裕もありそうで、その点も頼りにできそうだった。

 いくらギルドからの補償金で、切羽詰まった状況にはないと言っても、謹慎を食らって余裕がなく、また同情はされつつも自業自得と遠巻きに見られていた面々ならば、動けるようになってすぐにでもアディに接触を図ることは目に見えていた。

 むしろ現れたのがカスハだけだったのが意外なくらいだ。


 ダメもとで自分もパーティを組もうと申し出てみたが、昔のアディでは考えられないくらいにあっさりと一蹴された。

 別に好きでもないのに付き合ってもいいと言い出したのは、微かに残った自尊心もあったが、今のロージィにはそのぐらいしか差し出せるものがないからだ。

 今のアディにしてみたら、もし必要ならきっともっと使える(・・・)相手と組むことも不可能ではないだろう。自身の技量は、おそらくアディが求める域にまで達していない。

 自分の容姿であれば、その足りない分を補えるのではないかと、少しだけ希望を持ったけれど、結局それでも考慮すらしてもらえなかった。


「……性格悪いって何よ」


 別に意地悪をしようとはしていない。

 自分では親切にやれていたつもりだ。

 あたりはきつかったかもしれないが、それはそもそもの癖みたいなもので、昔からアディには注意してあげたり、助言してあげたりしている。ノーマやカスハがしていたようにバカにしたつもりはない。

 そりゃ、多少は彼女たちの尻馬に乗って揶揄(からか)ったりしたこともあるけれど、その程度の悪ふざけ、友達や仲間ならよくあることだろう。


 さっきアディを探しに来てあげたのだって、もし他のメンバーに絡まれるようなことがあれば助けてあげようという親切心からだった。

 一応、自分もパーティを組もうと申し出てみたけれど、そこで了承されたら、今度こそ以前のお詫びも兼ねて多少の譲歩はしてあげるつもりだった。

 今はまだ足手まといになりそうな気がするが、いずれ恩を返せるように頑張ろうと思っていた。きっとノーマやカスハが相手では同じことの繰り返しになるし、きっぱりと断らなければいつまででもしつこく絡むことだろう。

 自分を選んでもらえなくても、そのぐらいは助けてあげなければならないと思った。

 アディには自分も多少迷惑はかけただろうし、責任もある。

 たとえ、自覚はなくても。


 ロージィの親は商家の雇われ人だった。

 5歳の時にギフトを受けるまでは、ごく普通の子供だった。

 この世界で多いギフトは『村人』や『町人』などだが、戦闘への特色を持つ『兵士』、なども珍しくはない。

 ロージィの持つ『暗殺者』だって、冒険者ギルドに訪れればけして珍しくもないギフトだと知ることができただろう。

 だが、町に生まれたロージィの周りにはおらず、また名称が子供たちにとっては剣呑に過ぎた。

 これが冒険者の多い地域や、もしくは貴族周辺の生まれであれば話は違ったのかもしれないが、ロージィは平民であり、町人の生まれだった。

 同じように『盗賊』や『博徒』といったギフトでもまま起きがちな話だが、ギフトからくるイメージをロージィは押し付けられて、いじめられた。

 この世界の住人であっても勘違いをしやすいが、ギフトは与えられる才能の方向性であって、必ずしもその職業につかねばならないということでもない。

 冒険者の中にも『農家』はいるし、逆に剣など持ったこともない『剣士』もいる。

 たとえ『暗殺者』であろうとも、商家の道も、お針子の道もあったのだ。


 そういうことがあるから、人によってはギフトについて明らかにしないものも多い。けれど、たまたまロージィの周りには、神から与えられた役割に興奮し、お互いのギフトについて口にしてしまう子供が多かった。

 流されるままロージィが自身のギフトをばらしてしまったのは、仕方のないことだった。


 成長してもロージィは周囲との溝を埋めることが出来ず、また元々の気の強さも相まって12の時に冒険者ギルドへと登録した。そして14で正規の冒険者登録に更新した時に、ガリオンらと出会った。

 パーティに加入した当初、彼らは親切だった。

 冒険者になったばかりに少女に対し、ノーマやカスハはあれこれと世話を焼いてくれたし、リディも優しかったし、リーダーのガリオンも鼻につく態度はあれど、同じく親切だった。

 アディは他のメンバーのようにロージィを構ってこようとこそしなかったが、誰かに何かを頼むと、大体最後にはアディが面倒を見てくれた。

 癇癪を起しやすいロージィが八つ当たりをしても、自分勝手なガリオンに子供の頃から慣れているせいか、溜息をつくぐらいで根気よく話を聞いてくれた。


 だから、勘違いしてしまった。

 自分たちが頼めば、アディは何でもやってくれるものだと思ったし、そのせいでアディに負担がかかっているなど想像もしなかった。

 自分たちがどれほどアディに甘えていたかなんて、誰も気が付きはしなかったし、そのまま緩やかに『暁の星』は破綻していった。


 アディが脱退した直後に加入したのが『神官』のジョーイだ。

 それとほぼ同時に、アディよりも高レベルの『盗賊』の少年をポーターとして加入させた。

 年下好きのノーマがまだ14歳だった少年をやたらに構い、ジョーイが不潔だと怒って結果的にノーマが追い出されることになった。

 ガリオンは喜んで受け入れていたし、アディは受け流していたから、ロージィも何も思わなかったが、確かに自分が年上の男にされていたらと考えたら、ノーマのしていたことは気持ち悪かった。


 しばらくして加入したモイラとカスハは馬が合わなかったらしく、カスハの方が追い出された。

 ノーマもカスハもいなくなっていると、なんだか風通しが良くなったような感じがして、ロージィには息がしやすくなったように感じられたが、その分パーティメンバーとの衝突が増えた。

 ノーマやカスハが、ロージィはまだ子供だしね、と半ば侮りながらも甘やかしてくれていたもろもろが通用しなくなっていったのだ。

 最終的に「ガキじゃあるまいし、甘ったれないで」とジョーイに馬鹿にされたのをきっかけに、ロージィも『暁の星』を辞めた。


 辞めてすぐに、カスハがパーティを作ろうと思っている、と誘ってくれた。

 まだまだひとりじゃ冒険者としてはやっていけないだろうし心配なの、と先に合流していたらしいノーマとふたりがかりで誘われて、ムカッとはしたものの、ひとりでやっていけるとも、知らない相手とやっていけるとも思えず『蜜花の集い』を作ることになった。

 ジョーイの悪口を言って盛り上がった時は一体感が得られたけれど、なんとなく燻ぶったような気持ち悪さを抱えたまま日々を過ごすことになった。

 その後『暁の星』を追放されたリディが参加しても、天井につかえているような閉塞した気分は変わらなかった。

 そして、ここらへんで一山当てたいし、気分を変えよう、とファラネーサへの移動を兼ねて護衛依頼を受けたのが運の尽きだった。


   ◇ ◇ ◇


「ロージィ、格上に有利な特性を生かせてないぞ。さっきのなら、俺のサポートに入れよな」

「……ごめん」

「いや、謝る必要はないけど。連携取っていこうぜ、パーティなんだから」

「……うん。次はうまくやる」


 スターカに戻ったロージィは、何度か臨時パーティを組んだ同い年くらいの初心者冒険者と正式にパーティを組んだ。

 最初はロージィの方でいろいろと教えてあげたが、自分も以前のパーティではメンバーに甘えてばかりで知らないことが多いのだと、素直に吐露した。


「そういうことあるよな。俺、村じゃいっぱしの狩人のつもりでいたのに冒険者になるまで焚火の組み方も知らなかったもん」

「わっかる。思いがけず変なこと教わり忘れてたりするよね。私なんてさ、ポーション飲むタイミング知らなかった」

「何それ」

「うち金持ちだったから、ちょっとでも疲れたらポーション飲んでたのよ」

「ひくわー。金持ち自慢?」

「何よ、自慢じゃなくて知らなくて恥ずかしいって言ってるの!」


 村では狩人の見習いだったという弓使いの少年と、少しばかり装備に負けている剣士の少女と笑いあいながら、ロージィは『暁の星』でのことを思い出した。

 一方的に何かを言いつけられたり、一方的に甘えて寄りかかったりするのではなく、お互いにできることを助け合いながら、時に注意をしあいながら、このメンバーとなら一緒に成長していけるだろう。

 今のパーティメンバーとなら、いつかアディに会ったときに普通に話せる自分になれるような気がして、やっと自分のギフトを受け入れてもいいかと思えた。

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