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経験値横取りにキレた俺は女装で無双する  作者: 白生荼汰
第三章 過去が背中を追いかけてくる

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どこまでも巻き込まれる俺

「おぉ、顔が痛くない……痛くないってこんな感じだったか」

「痣のついた顔で見慣れたから、なくなるとなんか物足りないな」

「抜かせ。地味な顔で悪かったな!」

「そんなこと言ってないだろ」


 くだらない言い合いをして、キースと笑い合う。

 ギルドへの依頼完了報告前に顔を治し、依頼料を受け取って、ここまでの道中で採取した物を買取に出した。

 せっかく衣服で有名な街へ来たのだから、一張羅の一つも仕立てたいところだが、あいにくとそこまでの収入はない。

 もっともやはり新しい服を買う人も多いのか、その分古着がかなり安く手に入るから、着替えくらいは買ってもいいかもしれない。


「取り置き頼んで悪いな。俺、しばらくはマセチェッタ工房にお世話になるから、何かあったら連絡くれよ」

「あぁ。また依頼があればギルドに頼む。俺もしばらくはこのファラネーサに滞在して動くから、時間があればまた飲もうぜ」

「おう」


 そんなわけで無事依頼を完遂し、俺はしばらくファラネーサの街に滞在することになった。




 『蜜花の集い』の面々は、ギルドに移送されてすぐに簡単な事情聴取を受けて解放された。

 その後、ルファナ商会の背後等を調べるために、詳細な事情聴取も受けなくてはならなかったらしい。

 噂によれば、ルファナ商会がガランドン商会を襲ったのは、ガラン爺さんの身内によるお家騒動の依頼を受けてのもので、『蜜花の集い』の連中に護衛依頼を出したのは、商会としての体裁を整えて誤魔化すのと、実行後は隣国に逃げる手はずになっていたから、行き掛けの駄賃として彼女たちを売り払うつもりだったんだそうだ。

 道理でガランドン商会の関係者は、襲撃に備えていた節があったわけだ。

 なので、はれて『蜜花の集い』の疑いは晴れ、逆にルファナ商会の狙いにも気づけず、おかしな依頼を発注したとして、彼女たちにはギルドからの補償金も支払われたそうだ。


 依頼主を見抜けなかったのはギルドもだけど、彼女たちだって同じことだ。

 補償金を受け取ってすぐ、その割り当てと責任の所在について諍いになり、口論からもみ合いになって大立ち回りを繰り広げることになったらしい。

 むろんギルド内での私闘はご法度なので、しばらく彼女たちは謹慎処分を受けた。


 当時ギルド内で彼女たちがもめているのを目撃した冒険者たちは、その醜態を大いに酒の肴とし、あることないこと噂として盛り上がっている。

 多少かかわりがあるはずの俺はと言えば、せっかく新天地に移動したので、軽くEランクの依頼で肩慣らしをして、その後、『双轍(そうてつ)』や『狼牙(ろうが)』の面々をはじめとする先輩冒険者に付き合って貰ったりしながら、日々軽めの依頼をこなしていた。

 だってせっかくなら、ここで装備新調したいし。


 そうこうしてしばらくたったある日のこと――


「やっと会えたわ、アディ」


 ギルドを出たところで、やけに芝居がかった調子のカスハが俺に駆け寄ってきた。


「……謹慎期間終わったんだ?」


 呆気にとられた俺はつまんないことしか聞けなかった。


「私やっと目が覚めたのよ。私みたいなタイプは前に出るよりサポートの方が向いてるんだわ。だから、これからはアディのことを支えてあげたいの」

「なんの話?」


 小首を傾げた前傾姿勢で迫られて、俺は物理的に一歩引いた。

 なるほど、胸元の開いた服にペンダントってこういう効果があるのか。

 確かに視線がひきつけられるね、馬鹿野郎!


「やっぱり考えることは同じってわけ」


 俺が狼狽えていると、どこからかロージィが現れた。

 あ、【隠密】レベル上がったみたいだね。

 俺、君がいるのちっとも気づけなかったよ。


「アディ、便利だもんね? あの騒動で入れてくれるろくなパーティもなくなった私たちが冒険者を続けようと思ったら、アディを頼るしかないもんね?」


 そう言ってロージィはしな垂れかかるみたいに俺の腕を取った。


「でも、おあいにく様。アディは年上が好みじゃないってノーマが言ってたじゃない。残念ね、おばさん。垂れかけたオッパイは眼中にないって」


 何これ、怖い。


「ひ、ひどい……ほら、私お料理も得意だし、これからは支援スキルを伸ばすつもりでいるの。だって【踊り子】のギフトがあるんだもの。【剣士】との相性は【暗殺者】よりもいいはずよ。もちろんアディが望むなら、依頼以外のことだってサポートするわ」

「きっもちわる。いかにも賞味期限切れのおばさんって感じのアピールね。縋りつきたくて必死なの、ひくわー」


 あははははは、と(あざけ)り笑うロージィに気が遠くなりそう。

 ねえ、俺なんかした?

 何で突然こんな目にあってんの、俺。


「ロージィには悪いけど、私の方がアディとの付き合いは長いし、好きなモノだって知ってるわ。アディはボアが好きだとか、ロージィは知らないでしょ」


 ……俺も知らなかったな、それ。

 どうせなら安い肉の方がたくさん食べられていい、みたいな話をしたことはあるけど。でも食えるものなら、ブル系の方が即血肉になりそうな感じがして好きだよ?


「肉が好きなんて若ければ普通じゃん。あー、そろそろお肉きつくなってきた? やだぁ、それ老化してるからそろそろ引退考えれば、お・ば・さ・ん?」


 周辺から面白そうな目で見られてる……。

 ねえ、ほんと、俺なんかした!?


「最近化粧濃くなってきたけど、やっと皺に気が付いたわけ? 気が付くの遅いよー。っていうかさー、同じパーティだった時は我慢してあげてたんだけど、臭いよ? 香水のつけすぎ? それとも体臭? くっさいおばさんとか最悪じゃない?」


 鼻をつまんで顔を背ける仕草に、やじ馬が吹き出している。

 お、俺、この争いに無関係なんで!

 ちょ、腕放して!


「行き遅れのおばさんが若い男にしがみついてんのって、みっともなくて見てられなぁい。男が若いとさー、余計に老けてんの目立つよねー。若さだけが取り柄だったカスハみたいなのが年食うと悲惨だよねえ、私も気を付けよーっと」


 怒涛(どとう)悪罵(あくば)に、カスハは真っ赤になって口を開こうとした。


「やだぁ、若さに嫉妬されてるー。おばさんこわーいぃ」


 文句を言う前にさらなる口撃を放たれて、カスハは何度も口を開いたり閉じたりした後、踵を返して立ち去った。


「はぁーい、茶番は終わり。ほら散った散った。いつまで見てんのよ、金取るよ?」


 ロージィは集まって来ていた人たちにしっし、と手を振ると、俺の手首を掴んで強引にカスハとは逆方向へと引っ張った。


「ちょ……」

「何? まだ注目されたいわけ?」

「いや、それはない。けど……」

「いいから。あのままあそこにいたら収拾つかないでしょ」


 ロージィは適当なところまで俺を引っ張ると、ぱっと手を放した。


「……カスハとパーティ組みたかった?」

「それはない」

「だと思った。今日謹慎明けなの。だから、誰かはアディを勧誘に来るとは思ってたんだよね……ねえ、私とパーティ組まない?」


 おぉう、俺モテモテじゃんか。

 さっき本音を聞いちゃったからあんまり嬉しくはないけども。

 他にろくな当てがないからって勧誘に来られてもなぁ……。

 そもそも『蜜花の集い』の連中と改めてパーティ結成なんて、ごめんこうむるけど。


「今、俺は自分のことでいっぱいいっぱいだから、他人の面倒見てる余裕はない。俺だって上を目指したい」

「……そっか。私が付き合ってあげるって言ってもダメ?」

「なんだそれ」


 ものすごく気のない提案に、俺は怒ったり拒絶する前に呆れてしまう。

 そんなものを対価に差し出されても……まぁ、喜ぶ奴がいないとまでは言わないけど、お互いに気がないんじゃどっちも不幸になりそうだ。


「私、そこそこ可愛いでしょ。アディじゃこのレベルと付き合えることなんてまずないよ」


 すげえことを言いやがる。

 いや、まぁ、否定はできない。

 見た目で言うなら間違いなくロージィは可愛い部類に入るし、俺はすれ違った瞬間に顔も覚えていないくらいに地味だ。

 並んだら、それこそレベルが釣り合わないだろう。

 だけど、恋愛ってレベルとかそういうのでするもんなの?

 俺、生まれてこの方彼女がいたことないからわかんないんだけども。


「……俺、付き合うなら性格がいい人がいい」

「はぁ!? 私の性格が悪いって言いたいわけ!?」


 いや、よくはねえだろ。


「ほんっと、しつれーなやつ。そんなんだから、ノーマとかカスハみたいなのに憑りつかれんのよ」

「それ関係あるか!?」

「パーティ組もうなんて、言ってみただけ! 別に本気じゃないし。そっちも本気にしないでよね。ましてや、アディごときが私と付き合えるわけないでしょ」


 すごい……断ってるのに、俺が振られたみたいになってる。


「『蜜花の集い』は、喧嘩別れで解散したの。別にアディに言われて離れようと思ったわけじゃないから勘違いしないで」

「はぁ」


 勘違いも何も、これからの活躍に期待してるよ、ってなもんで、別に俺には関係のない話だ。


「私、スターカに戻って最初からやり直してみる。ギルドの講習も受けなおしてみるつもり」

「そっか。うん。いいと思うよ。いい先生が見つかるといいね」


 あのままじゃ、近いうちにまた危ない目にあっただろうから、やり直すのはきっとロージィのためにもいいことだろう。

 何でそれを俺に宣言するのかはよくわからないけど。


「それで、もっと私を生かしてくれるパーティを見つけるつもり。それで、いつかお互い一人前になったら、合同クエストを受けてあげてもいいわよ。だからアディも頑張りなさいよね」

「お、おう……」


 ロージィは決意表明に来たのかな?

 やっぱり、なんで俺に? って気がするけど。


「再会した時に挫折してたら指さして笑ってやるからね」

「……おう」


 ロージィは一度も目が合わないまま立ち去った。


「……なんだったんだ」


 なんかすごく巻き込まれた感が半端ない!

ここで3章おしまいです。


閑話で『蜜花の集い』の面々の小話をいくつか入れてから次章かなー。

お疲れさまでした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >小首を傾げた前傾姿勢で迫られて、俺は物理的に一歩引いた。 > なるほど、胸元の開いた服にペンダントってこういう効果があるのか。 > 確かに視線がひきつけられるね、馬鹿野郎! …爆笑! …
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