何でもできるやつ
見つかるもくそもなく、何歩か草むらに入ったところにホーンラビットがいた。
「はい、しゅーりょー」
スパン、と風魔法で首を落として終わり。
いやぁ、思えば俺も強くなったもんだ。
昔はあれほど苦労してたのに、ホーンラビットくらいなら魔法一撃で倒せる。
これだと毛皮も高く売れるんだよな。
「え、ちょ、もう終わり?」
「あぁ、すぐに見つかってラッキーだったな」
狩りで大変なのは、獲物を見つけるまでだ。
探し回るでもなく、手ごろな野草が生えてたのもラッキーだった。
この野草を食いに来ていたんだろうが、ホーンラビットの好物だけあって、料理する時に使うとほろ苦さがホーンラビットの淡白な味によく合う。
「えぇ……覚悟を決めた俺の期待……」
「くいっぱぐれなくてよかっただろ」
些かがっかりした様子のキースをしり目に、ささっと食う分だけ野草を摘んでから、ささっとホーンラビットを捌いてしまう。
「ほえー、手際いいなぁ」
「慣れだな」
おぉ、なんか俺ベテランっぽいこと言ってない?
自分でもかなり手際は良くなったと思うけど、他人に褒めてもらうと嬉しい。
覗き込まれてて、なんとなく目障りだったのなんて吹っ飛ぶくらいには嬉しい。
「あ、ねえねえ、皮と角って売ってもらえる?」
「かまわないけど」
「金額交渉あり?」
「……常識の範囲なら」
少し警戒して言うと、キースは冒険者ギルドで売るよりも全然高いぐらいの金額を言ってきた。
え、警戒したのが申し訳ない……。
「そんなにいいのかよ」
「だって、これだけ状態がいい皮を買えるんだぜ? それに商業ギルドで買うよか安い。多分、間の手数料がないからだろうけど」
じっくりと皮の状態を確認しながらキースはうっとりしている。
そうか、手数料か。
「全部とは言わないけど、町に着くまでに良さそうな素材が獲れたらまた売ってくれよ。俺の懐具合もあるし、絶対買うとは言えないけど」
護衛をつけるときの条件にはいろいろある。
飯はそれぞれの負担とするとか、依頼主が負担する代わりに道中で狩ったものは依頼主のものにする、とか。
そのあたりの交渉やすり合わせは結構めんどくさい。
俺が今まで受けたことがあるのは、生産職が出す日帰りで近場に採取に行きたい、なんていう依頼で、本格的な護衛依頼は今回が初めてだ。
もっとも、D級冒険者が個人で受けるようなものじゃないからな。
キースの依頼は、飯はそれぞれの負担、道中でも獲物は拾得者の物、という取り決めがわかりやすかった。
「……じゃあ、余裕があるときの飯はサービスにしといてやるよ。こいつの代金に込みだ」
「お、マジで? やったぁ!」
キースが小躍りして喜ぶ。
毎回こう上手くいくとは限らないけど、今回の依頼は思ったよりも稼げそうだ。
休憩地に戻り、水魔法や火魔法を使って飯の支度をしているのも、キースは面白そうに眺めている。
「すげーなアディ。なんでもできるじゃん。料理までできんの?」
「野営の時に食うような簡単なモノしかできないけどな」
「それでもすげえよ。俺、飯は食う専門」
「……よくそれで狩りに行こう、とか言ったな」
呆れながら言うと、キースは悪びれることなく笑いながら言った。
「だって、焼けば食えると思ってたんだ。こうしてみるとそんなに簡単じゃねーな」
とりあえず、串に刺した肉をあぶりながらスープを作り、残った肉はインベントリにしまった。
これで夜も肉が食えそうだ。
「インベントリ持ってんの?」
「たいして物は入らないけど」
「うわ、羨ましい! 仕入れが超楽になるじゃん!」
羨ましー、羨ましー、と騒ぐキースに、できたばかりのスープを渡してやる。
肉が焼き上がるにはもう少し時間がかかる。
「うっま! なんか腹ん中に沁みてくるな。今回は干し肉と固パンで過ごす覚悟決めてたから、こんな美味いものが食えると思わなかった」
「大げさだな」
「いや、美味いって! 食ってみ?」
「作ったのは俺だよ!」
ワイワイ騒ぎながら食っていた俺たちに、近づいてきた奴がいた。




