称号の理由
「え、なんでわかるんですか?」
【鑑定】されたとか?
でもそれならギフトについて聞いてきたりしないよな。
「あぁ、やっぱり。無事に戻れて何よりだ。これからはあまり無理をしてはいけないよ?」
「あ、はぁ……」
心の底から労わるような言葉を掛けられて呆然としているととんでもないことを言われた。
「君、その時に一度死んだのだから」
「はい?」
一度くらいは死んでも大丈夫……『惑う深紅』に鍛えてもらっていた時に言われた言葉を思い出した。
でもあれは、そういう気構えで戦え、という話であり、またスザンナの魔術が前提にあっての言葉だったはずだ。
余程のレアアイテムを所持しているか、それこそスザンナのような高レベルの魔術師が仲間にいるかでなければ、一度死んだらそれで終わりだ。
「たまにね、運良く死を乗り越えられるものがいる。その時に新たなスキルや属性を獲得することがあるんだよ。聖属性の場合、その傾向が顕著だ」
「……死を乗り越えたから、聖属性を得られた?」
「そう。運が悪ければそのまま死んでいたね」
「ひっ……」
ぞっとした。
あの時腹を貫かれて死にそうになった。
どうしても女装していたことが引っかかって、死んでたまるかと祈るように思ったわけだけど、何の奇跡が起きたのか、聖属性を得て死なずに済んだわけだ。
あの時、本当に俺は死んでいるはずだったのか……。
「た、助かってよかった……」
「強い思いが命を引き留める、なんてことも聞くねえ。君は何か守りたい物でもあったのかい?」
のほほん、とハラド次長に聞かれたけど、そんなものは……。
「せ、世間体……?」
「なんだい、それは」
冗談を言ったと思われたのか、ぶはっと次長が吹き出し、ダッドリーさんや解体士さんも朗らかに笑った。
「は、はは……あはは……」
俺も笑ってごまかしておく。
俺は女装したまま死にたくなかっただけなんだ。あと、できれば彼女とか作って結婚して子供を見せに村に帰ってから死にたい。
「そんな奇跡がしょっちゅう起きるわけでなし、次にこいつに出くわした時のために、しっかり弱点を覚えておくんだな。その様子じゃ、聖魔法はまだ自在に使えるわけじゃねえんだろう?」
トントン、と寄生蜂を載せた台を叩いてダッドリーさんが言う。
「はい!」
「よし、いい返事だ。見な、ここが口吻、こっちが気門、ここが輸卵管。寄生体は輸卵管から植え付けるわけだが、その前に口吻から出る毒で寄生主を混乱状態にすることが多いな。だからこいつに限らず蜂種の討伐の場合、まずは口吻をぶち折っちまうことだ。それから、関節は先よりも根元の方が弱い。ただ、こっちの角度で折るよりかは……――」
ダッドリーさんの丁寧な説明を受けつつ、必死で特徴を頭に叩き込む。
寄生蜂は独特な繁殖方法を取っているが、構造としてはハニービーなど、他の一般的な蜂種とほとんど変わらない。
翅と針を取るだけなら、それほど手間をかける必要はないが、蜂毒は高額で売れるため、可能ならば毒腺を採取すること。
毒腺を採取しようと思ったら……などなど。
ダッドリーさんの説明は、いかつい見た目の割に理論的でわかりやすかった。
少なくともスターカの町で受けた講習の「腹をばッとやって、ぶちっと……」なんていう、指示語と擬音ばかりで感覚任せの説明とは全く一線を画している。
これは勉強になる……。
「っとまぁ、こんなところだ。解体をギルドに任せたのはいい判断だったな。虫類は死んだ後でも反射で攻撃してくることがある。ここなら万が一があっても、防御魔法がかかっているから、解き放ってしまって街中で暴れられるようなことがない」
「はい、ありがとうございました」
俺が頭を下げて礼を言うと、ダッドリーさんはくすぐったそうにニヤニヤとした。
「おう、いいってことよ。俺はたいていここで仕事をしてるから、もしまた面白い魔獣を討伐したら、俺に仕事を任せてくんな」
「はい!」




