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経験値横取りにキレた俺は女装で無双する  作者: 白生荼汰
第三章 過去が背中を追いかけてくる

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ダッドリーの解体講座

「僕はハラド=ヴァランジールと言います。この王都ギルド東地区支部の総括次長を担っています。便利屋のおじさんだと思ってくれればいいよ」

「俺はD級冒険者のアディと言います。よろしくお願いします」

「若い子にしては礼儀正しいねえ。向上心もあって、君みたいな冒険者には今後活躍をしてもらいたいところだ」


 はっはっは、と快活にハラド次長は笑う。

 ナントカ長ってつくからには、ここの偉い人なんだよな?

 その割にやけに親しみやすい。

 見た目も小柄で、おそらく俺の親父よりも年上なんだろうけど威圧感はない。

 歳のせいか額はやや広くなっているけど、腰のなさそうな髪はふわふわとして量が十分にあり、そのあたりが年取って落ち着いた犬みたいな印象に繋がっている。黒い毛と茶色の毛と白髪が混ざり合っているのが、余計に犬っぽさを醸し出しているんだろう。

 俺みたいなガキがそういう評価をするのも失礼な気がするけど、ギルドなんかより、子供に囲まれているのが似合う優しそうで可愛らしいおじさんだ。


寄生蜂(パラサイトビー)は自分で倒したのかい?」

「そうです……っていってもいいのかな? 無我夢中で、気が付いたら死んでたんで」

「教会でちゃんと浄化(プリフィクション)は受けた?」

「それはもちろん」

「お、ちゃんと勉強してるねえ。重畳重畳」


 寄生するような魔獣には、寄生体を人里に持ち込む危険性が伴う。

 それが自力での解体を避けた理由でもあるんだけど、人体に憑りついた寄生体を無力化するには、教会か神官に浄化(プリフィクション)を受ける必要がある。

 『暁の星』で寄生樹パラサイトツリートレントを倒したことになっていたから、町に戻ってすぐ全員で浄化(プリフィクション)は受けている。


「おーい、この子に寄生蜂(パラサイトビー)の解体を見せてくれないか?」


 解体室の扉を開け放つなりハラド次長が言うと、肩からタオルを下げているおやっさんが「あぁ?」と顔を上げた。


「解体見学希望か。そいつは珍しいなぁ」

「頼むよ、ダッドリー」

「かまわねえよ。ほら、こっちにこい」


 ダッドリーさんはそこらの冒険者顔負けな上腕二頭筋の持ち主で、やけに艶のある肌をしている男だ。

 口元の皺の目立つ顔には大きな傷があって、それが近寄りがたい風格を醸し出している。

 短く切りそろえた緑の髪は、よほど毛が固いのか天に向かって逆立っていて、強情そうな気質を表しているかのようで、ちょっと怖い。


「よ、よろしくお願いします」

「おう。この寄生蜂(パラサイトビー)は兄ちゃんが自分で倒したのか?」

「は、はい」

「ずいぶんきれいに倒したもんだ」


 感心した様子で転がしながら確認してから、ダッドリーさんの解体講座は始まった。

 他の解体職人もわらわら集まってきて感心しているから、相当きれいに倒せているものらしい。

 寄生蜂(パラサイトビー)は空を飛ぶし、黒くもなくて毛が生えているけど、虫系魔獣だ。

 なので、ビートル系などの虫系魔獣と同じく関節部が弱い構造になっている。

 バキバキと大胆に腑分けしていく割に、ダッドリーさんの作業は繊細で、説明もわかりやすい。


「今現物がないが、こいつの翅は見た目に反して水分を吸いやすい。それと寒いときには動きが鈍くなるから、水魔法や氷魔法が使えるやつがいるといい」

「あ、俺、水魔法なら使えます」

「けど、こいつを倒したのは聖魔法だ。違うか?」

「は、はい……多分そうです」


 自信がなくてもごもご答えると、ダッドリーさんが不思議そうな顔をした。


「多分、たぁ、どういう意味だ?」

「あの……発動したのが偶然というか、その時初めて聖属性が目覚めたので……」

「あぁ!」


 納得した、という風にダッドリーさんは頷いたけど、他の解体職人たちは悲鳴みたいな声を上げた。


「うわ、そんなこと本当にあるんだ」

「おとぎ話かと思ってた」


 わいわい解体職人たちは騒いでいる中、ハラド次長が労わるみたいに俺の背中を撫でてくる。


「それは……大変な目にあったねえ」

「え? えぇ……」


 何で皆が騒いでいるのかがわからず、置いてきぼりになった気分を味わっていると、ハラド次長に驚いた顔で見られてしまった。


「おや、知らない?」

「何を……ですか?」

「君、ギフトは?」

「剣士、ですけど」

「あぁ」


 今度はハラド次長が納得顔で頷いた。


「神官や聖女、御子以外で、聖属性に目覚めるのは珍しいから、知らなくても無理はない」

「はぁ……」

「君、『超越せしもの』『不屈』『死に戻り』とか、そのあたりの称号を得たんじゃないかい?」


 得たばかりの称号を言い当てられて、今度は俺が驚いた。

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