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経験値横取りにキレた俺は女装で無双する  作者: 白生荼汰
第一章 すみません甘えてました
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それって生贄だったりしますか?

「ホーンラビット1匹の依頼達成ですね。お疲れさまでした。薬草3束、ホーンラビット肉の買取も合わせて銀貨八枚になります」


 やっぱりホーンラビットの毛皮は買い取ってもらえなかったか。

 傷だらけにしちゃったもんな……。

 それに肉の買取額もずいぶん安い。

 わかり切っていたこととはいえ、少しがっかりしながら報酬を受け取る。

 銀貨一枚はギルドの口座に預けて、七枚を懐にしまう。

 今日はそこそこ稼げたけど、日によっては無収入なんてこともあるから、節約は大事だ。

 とりあえず、この七枚で今日明日の宿代と明日までの飯代にはなる。

 明日も稼ぎがあるといいな。

 依頼が掲示されている壁を軽く確認しておくか。


 ギルドで受け付けられた依頼は、受付処理が済み次第掲示される。

 一件一件処理するごとに貼るなんてちまちましたことはどの職員もやりたがらないから、だいたいは朝一番になって貼り出されることが多い。

 夕方に貼り出すと、我先に受付しようとした冒険者によって残業をさせられかねないからだ。

 それでも時々、気まぐれみたいに朝はなかった依頼が貼られていることもある。

 緊急だったり、あるいは子どもの使いみたいなつまらないものだったりもするが、中にはとんだ掘り出し物の依頼なんてこともある。

 つまらないものでもついでに受けられるのであれば小遣い稼ぎにもなるし、常設依頼以外は早い者勝ちだから、俺はなるべくこまめに掲示を確認することにしている。


 D級パーティ『暁の星』を抜けた俺は、今のところE級冒険者でしかない。

 冒険者見習に割り振られるG級、やっと正規登録者と見做されるF級ときて、まだまだ初心者に毛の生えた駆け出しのE級では、依頼こそ山のようにあるものの、その分冒険者の層も厚く、依頼自体が奪い合いだ。

 上下ひとつずつ階級が違う依頼も受けられるが、やはりより難易度の高い依頼をこなした方が昇格も早い。

 G級なんてまだ正規登録のできない子供ばかりで、実質はF級から始まるようなものだから、冒険者になったばかりのF級でも受けられるE級の依頼なんて、貼られたと思ったら剥がされてしまう。

 後に残るのは割に合わなかったりで塩漬けとなっている依頼ばかりだ。

 D級、E級あたりの掲示をじっくり見ていると、ギルド内がざわついた。


「化け物……」

「しっ、目を合わせるな」


 注目されているのは受付の辺りで、そこには女性と思しき3人組が見える。

 何で女性と思しき、なんてあいまいな表現をするかというと、風体が異様だからだ。

 そこいらにいるタンク職よりもがっちりとした身体に、大きく傘の開いたキノコみたいなスカートを身に着けているせいで、常人の3倍はかさばっているピンクのフリフリ。

 背が高く変に曲がりくねった姿勢で、上から下まで真っ黒な服を着ているおかげで歩く枯れ木みたいな痩せっぽち。

 真ん中の真っ赤なドレスを着たひとりだけは貴族様みたいに身なりもいいし、しゃんとして姿勢もいいけど、おかしな二人を従えているせいでそれすら異様に見える。

 彼女たちはどうやら何かの依頼に来たみたいだった。

 下手に動いたら目を付けられそうで、ギルド内は妙な緊張を保ったまま彼女たちに注目している。


「人を紹介してほしいの」


 真ん中の人が広げた扇で口元を隠して言った。


「人を紹介、ですか」


 不幸にも受付担当になってしまったギルド職員が素っ頓狂な声を上げた。

 多分、反射的に無理です、とでも言いそうになったのだろう。


「えぇ。レベル20にならないくらいで伸び悩んでいる、剣士か騎士かの、出来れば男の子」


 ギルド職員が救いを求めるみたいにギルド内を見た。

 みんな揃って目を逸らす。

 女性陣と、男の子って年じゃないベテラン勢がほっとしている。

 なんだ、そのピンポイントな条件。

 俺に当てはまってしまうじゃないか。


「男の子……ですか。その、容姿だとかにご要望があったり……」


 職員が震える声で確認をする。


「そうねえ……可愛ければ、もちろん嬉しいけれど、パーティメンバーにそこまでは求めませんわ」


 ころころと笑って、ドレスの人が振り向く。


 あ、すごい美人。

 ……目が合ってしまった。


 すっと立ち上がった美人は、ゆっくりとした動きで俺に近づいてくる。

 うっかり魔獣と目を合わせてしまった時みたいに俺は動けなかった。


「ねえ、あなた。その格好は、剣士じゃないかしら。それで、今レベルはどのくらいか、伺ってもいい?」


 ギルドにいる人たちが気の毒そうな目で俺を見た。

 やめて、拝まないで!

 縁起でもない!


 そうして俺は『惑う深紅』に一時加入することになったのだった。

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