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経験値横取りにキレた俺は女装で無双する  作者: 白生荼汰
第二章 普通の男の子に戻ります! 戻してください!

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多大なる勘違いと愛の奇跡

「この間、運悪く依頼中にC級魔獣と遭遇して危うく死にかけたんだけど、その時に奇跡が起きたんだよ!」

「ほぅ」


 運悪く(・・・)、なぁ。

 索敵担当に撤退を進言されたのに、強引に突き進んで遭遇するのを運悪くっていうのは斬新な解釈だな。


「アディ……あ、女神の方な? 間違ってもお前じゃねーから! アディはそれまで聖属性はなかったらしいのに、からくも魔獣を倒したけど死にかけた俺のために聖属性に目覚めたんだよ!」

「勘違い甚だしいな」

「マジだって! これぞ愛の奇跡だろ? 回復役も役立たずでさー、役立たず同士の傷の舐め合いなのか、状況が読めないのか、使えないテイマーを先に回復しやがってさ……でも、俺のアディが優しくヒールを掛けてくれた眼差しで愛の深さがわかったんだ……」


 そのアディは間違いなく俺だし、寄生樹パラサイトツリートレントを倒したのはお前じゃないし、聖属性に目覚めたのはひとかけらもお前のためなんかじゃないし、何より愛なんかないし、何から何まで間違ってるよ!

 とんでもない思い込みにゾゾゾっと鳥肌が立って、何度も腕を擦る。


「ん? 風邪か?」

「あ、いや……」


 ありもしない愛の深さがわかった割に、なんでそのアディが俺だってわからないのかがわからねえ……。

 いや、バレてなくていいんだけども。


「愛されてるのは知ってたけど、奇跡まで起こすほどの思いだぜ。応えないわけにいかないだろ? それで彼女に別れを切り出したんだけど……喧嘩別れになっちまってさ。それで解散になった」

「あぁ……そう……」


 もはや混乱魔法以上に色んなものを削られてる気持ちで、俺は酒を啜る。酒の味なんかまったくしない。

 話が途切れたら、とっとと腰を上げよう。

 そうしよう。


「ヨナは……あ、ヨナって彼女な? そのヨナってのがひどい女でさ、俺が倒したのって寄生樹パラサイトツリートレントだったんだけど、遭遇するなり勝てないと思い込んで、俺らを見捨てて逃げたんだよ。そんな女、今度はこっちが捨てて当然だろ?」


 いや、まぁ、あれは奇跡でも起きなきゃ勝てなかったのは確かだな。

 逃げる気持ちもわかるし、別れる気持ちもわかる。

 でもそこで他の女――実際は俺だけど――を持ちだされたら、怒るのも当然だ。

 だって浮気だもの。


「だけど、アディは慎ましいからさ……そんな女に遠慮したのか、俺が誘ってやってもずっとかたくなに『暁の星』に入ろうとしなくてさ……考えてみれば当然だよな。そんな前の女の匂いが残るパーティに入りたいわけがないんだ……」


 ふっと何かに酔いしれるようにガリオンは笑って、額に手をやった。


「あぁ、俺って奴は罪な男だぜ。涙を呑んで身を引いたアディの手を咄嗟に取ることも出来なかった。真実の愛の前では、この俺もウブな少年だったのさ」


 いや、割と無遠慮にボディタッチしてくるのが気持ち悪くて、躱しまくった覚えしかないんですが。


「だから俺は、思い切ってお前と設立した思い出深い『暁の星』の名を捨てて、新たにアディとパーティを組むことにしたんだ」

「あ、遠慮します」

「バーカ、お前のことじゃねえよ」


 そう言ってガリオンは機嫌良さそうに笑う。

 バーカ。そりゃ俺のことだよ。

 この節穴さんめ……。


「一応お前には……悪いと思ってるんだぜ? お前と俺で駆け抜けた『暁の星』の名がなくなっちまうんだから……さ」


 なんだ、その溜めは。


「別に未練とかはないから、いらない報告だったよ」

「そうか、わかってくれるか。さすがは友だな」


 友じゃねーよ。

 お前との友情は、お前が一方的に俺を利用するのが当然って顔をし始めた時点で壊れてんだよ。

 ……ん? そう考えると、村を出る前から壊れてたのか。

 ずるずる惰性で付き合いを続けていた俺も悪かったのかな。

 俺が受け入れてたからお前を増長させてたとこもあるんだろうか。


「でさぁ、新しいパーティ名なんだけど『真実の愛は永遠にトゥルーラブ・エターナル』ってのはどうよ? 『愛の褥(ビトインザシーツ)』ってのも考えたんだけど、それだと俺のアディを変な目で見るやつが出そうでさ」


 うん、変な目で見られるだろうね!

 主に、正気かよ! って方向でね!


「やっぱり、愛ってのは入れたいんだよな。シンプルに『愛羅武勇(アイラブユー)』ってのもいいけど、愛ってのは一方的にじゃなく、相互に成り立つものだろ? だから『愛羅武勇(アイラブユー)』ってのも違うかなって……」


 ひいぃ、こいつの話を聞いていたら、俺は鳥肌を通り越して鳥になる!

 美味しくオーブンでこんがり焼かれてしまう!

 座ったまま遠のいていく意識に、覚えたばかりの【回復(ヒール)】は効きそうにもなかった。

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