失ったものと得たもの
「アディさん!」
「アディ」
ギルドを出てすぐにリズとモイラに声を掛けられる。
どうやら俺が出てくるのを待っていたらしい。
「もう一度お願いします。私たちとパーティを組んでくれませんか?」
頭を下げて頼まれたけど……うーん。
パーティを組んだら俺が女装してることをはいずれ確実にバレるだろう。
そういつまでも隠せるとは思えない。
ほんと、素の俺が求められてるんなら一も二もなく飛びつくところなんだけど。
「……ごめんね」
ここは涙を飲んでお断りする。
いや、正直に話して、それで受け入れてもらえるって展開は想像してみなくもなかったよ?
でも、何で女装してたかとか、ガリオンとの確執とか、知られたら……軽蔑されるだろうからバラしたくはないよな。
趣味で女装してるとか思われたくないし、まかり間違って『女として姿を偽ってでも一緒にいたかった』とでも勘違いされたら憤死するわ。
「そうですか……」
リズがしょんぼりと肩を落とし、モイラが物言いたげに俺を見る。
「多分だけど、リズと私ではレベル差があるんじゃないかな。だから、お互いのためにならないんじゃないかしら」
くぉおおおおおお!
これ! 俺が『暁の星』を抜けたときに言われた言葉の焼き直し!
まさか自分の方から似たようなセリフを吐いて、パーティをお断りすることになろうとは!
まだ癒えない傷口に爪を立てて塩と酢を塗りこめてる気分でぐったりする。
「そうですよね……でも、私! 諦めませんから!」
そのセリフは『俺』に言ってほしかったな……。
「私も……アディと、一緒に……いたい……」
モイラが俺の袖をそっと掴んで見上げてくる。
だからさー! それは『俺』の時に聴きたかった!
「……だけど、リズに不遇を強いてたのは、私も、同じ。その分くらいは、返さなきゃ」
「モイラさん……」
リズとモイラが微笑み合っている。
俺の時にもこういうことを言ってくれる相手がいたら、女装して復讐しようとか、あほなことを考えなかったかもな。
可愛い女子同士が微笑み合っているのは非常に眼福なんだけれど、少しだけ胸がチクチクもする。
この綺麗な空間に、俺みたいな不純物が混ざり込むのはよろしくない。
「……そうだ。新生パーティ結成祝いにプレゼントします」
俺はインベントリから寄生蜂の翅を取り出して、ふたりに渡した。
見た目にはただの蜂種魔獣の翅に見えるだろうけど、買取に出したら驚くはずだ。
蜂種素材で一番高いのは針なんだけどね……さすがにそれは俺が貰っちゃってもいいだろ……さすがに。
「いいんですか?」
「ありがとう」
「……って言っても、ただの拾いモノなんだけどね」
ふふ、と笑って誤魔化しておく。
俺にとっては拾いモノ感覚なのは間違いないしな。
ふたりと別れて宿に戻った俺は、女装を解いてごろりと寝転がった。
もう、俺は女装しない。
絶対しない。
二度とするもんか……女装さえしていなければ、今頃リズとモイラとキャッキャウフフな、楽しいパーティ生活が始まっていたはずだったのに……!
性格が悪くなく可愛い女の子と、両手に花のパーティなんて、誰もが夢見ながらけして得られないものじゃないか。
そんな夢のようなパーティを、自ら自身の古傷を抉ってまで断ることになるとは……。
やっぱり他人を騙して何かをしよう、ってよくないんだな。
いや、わかってるよ?
女装をしていなければ、彼女たちの信頼を得ることはもちろん、再び『暁の星』に参加することはなかったし、そもそも出会ってすらいなかっただろう、ってことは。
だけどさ。夢を見るのは自由じゃないか。
俺は偽っていたせいで得られなかったものの大きさを噛み締めつつ、自分のステータスを確認した。
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【名前】アディ
【年齢】16歳
【種族】ヒューマン
【職業】冒険者・魔法剣士
【レベル】38
【状態】疲労
《HP》1326/6300
《MP》1401/4700
《STR》56
《VIT》71
《DEX》48
《AGI》55
《INT》60
《LUK》51
《HIT》34
【スキル】
無限収納Lv5
採取Lv3
剣術Lv6
火魔法Lv4
水魔法Lv3
聖魔法Lv1
料理Lv2
【祝福】剣士
【称号】超越せしもの
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今回の依頼を受けるまではレベル34で、そろそろ35になるかな、ってところだったから、一気に4つもレベルが上がったことになる。
ステータスも全体的にかなり上がっている。
けれど、そんなものが霞んでしまうくらいに特出しているのが、聖魔法を得たことと、称号を得たことだ。
【称号】超越せしもの
なんだこの称号……。
称号っていうのは、何故つくのかは解明されていない。
【竜殺し】みたいに特定の種族を倒したら付くのがわかっているものもあるんだけど、倒さなくても上位竜種にやたらに気に入られたヤツにも付いたらしい、って話もあって、本当に意味が分からない。
ただ称号によっては何らかの効果もあるようで、称号持ちは羨ましがられたりもするし、自慢するやつも多い。
ついて嬉しいものであるのは間違いないけど……一体何で付いたんだろう。




