分前の配分
ギルドに戻ると、歓声に出迎えられた。
「生きてたか!」
「連れている魔獣に積まれている木材が寄生樹か!」
「よく倒せたな!」
町に入った時点で、何らかの伝令でも走ったのだろう。
ギルドで俺たちに掛けられる祝福の声は、ちょっとした英雄気分だ。
こういう褒められ方するの、ガキの時に初めて村に獲物を持ち帰って以来だな。
「あぁ、おかえりなさい! まさか生きてまた会えるなんて……!」
ヨナがガリオンの胸に飛び込んだ。
ガリオンが誤魔化してるつもりで迷惑そうな顔をしているのは……付き合ってる相手に目の前で見捨てられたのに、生きて帰った途端に掌返されたら、そういう表情になるのもわかる。
こればっかりはガリオンが気の毒になった。
ヨナ、調子いいなぁ。
ギルドに依頼結果を報告するときには、ヨナは『苦渋を飲んで仲間たちの願いで』現場を離脱し、ギルドに危機を知らせたことになっていた。
その方が残されたメンバーにも都合が良かったから話を合わせることになったけど、皆の視線が冷たいのは致し方ないことだろう。
ギルド併設の酒場で受け取った報奨金を分ける段になって、ヨナは皆を見捨てて逃げたから取り分はなしとガリオンが言いだして、言い争いになった。
「大体、リズがもっとちゃんと索敵していれば……」
「リズは止めてたよ」
ヨナが責任転嫁しようとしたから、そこはきっちり口を出させてもらう。
リズが泣き出しそうな顔で俺を見た。
あー。もうこれ、本当に女装してなければ惚れられてたとこじゃないの!?
「だけど、俺たちの力で倒せたじゃないか。ヨナは逃げ出したけどな」
俺たちの力、ねー。
「それに戦闘においてリズが役に立たなかったのは事実よ」
冷たいぐらいにきっぱりとジョーイが言う。
報奨金は思ったよりも少なかった。というのも、もう少しで別パーティに寄生樹討伐に切り替えた依頼が出されるところだったから、それに対する礼金も支払わなければならなかったからだ。
だから余計に分け方に関してシビアになっているのだろうけど。
「わかりました。寄生樹の素材分、討伐分に関してはいりません」
「わかってくれればいいんだ」
結局、寄生樹の分は、リズとヨナを除き、等分にすることになった。
リズが断ったために、ヨナも受け取るわけにはいかなかったようだ。
「それじゃ、私は今回で『暁の星』を抜けます」
「なっ!?」
リズの宣言にガリオンが驚くけど、何を驚くことがあるんだろうな。
こんな扱いされてて在籍してた方にびっくりだよ。
「私も、抜ける」
「な、なんで……」
モイラが続くと、ジョーイも愕然とした顔をした。
「C級魔獣まで倒して、俺たちはこれからってところだろ!?」
立ち上がるガリオンに、リズとモイラは顔を見合わせて白けた顔で肩を竦める。
「初めからそのつもりだったので」
「それじゃ」
分け前の入った革袋を手にした二人が立ち去ると、ガリオンは頭を抱えた。
どーすんだ、この空気。
「あ、私もこれで……」
いたたまれない気持ちになって、そーっと退席しようとしたら、革袋を掴んだ手をガリオンに取られた。
「アディまで辞めるっていうのか」
「辞めるっていうか、私あくまで臨時加入で正規加入じゃないし」
ほんと、何言ってんだこいつ。
「あ、そ、そうか……その……正規加入は……」
「考えさせて」
手を引っこ抜きつつ、やんわりとお断りする。
「もう! 辞めるっていうものは仕方がないでしょ。あとはどうやってメンバーの募集を掛けるかとか、今後の依頼受注の方針とか、考えることは山積みでしょうに」
呆れた顔でジョーイがガリオンに言った。
うっわ、めちゃくちゃ他人事。
この人もこの人でなんだかなー。
別に何かされたわけでもないけど、あんまり背中を預けたい感じじゃない。
何かまた言い争いが始まった3人を背に、俺はその場を後にした。




