目覚めた奇跡
ぶちん、と視界が白く灼けて、全身から何かが迸った。
女装のままで死んでたまるか。
俺は、俺は……死ぬなら男として死にたい!
あと、ちゃんと【男】になってから死にたい!
可愛い女の子相手にとか贅沢は言いませんから!
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
心の底からの咆哮に応えるように、すべての力が魔力へと変換される。
真っ白な光が俺を包んだ。
その光の中で、レベルがいくつも上がっていく【音】を聞いた。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
「……あれ?」
ぴく、と自分の指先が痙攣して起こされた。
がばっと起き上がると、そこにはトレントの抜け殻と、寄生蜂の死体が転がっている。
せっかく倒したけど、トレントの方はスッカスカで、素材はあまり取れそうにない。
寄生蜂の方は驚くほどキレイに倒されていて、こっちの素材は高値で売れそうだ。
さすがにこれはもったいないから、今までインベントリのことは隠していたけど、あきらめて全部持っていくか……。
周囲を見回すと、寄生蜂を倒したらしき冒険者はおらず、ガリオン、ジョーイ、モイラ、リズが倒れていた。
「……あれ?」
まずは自分のステータスを確認して驚いた。
----------
【名前】アディ
【年齢】16歳
【種族】ヒューマン
【職業】冒険者・魔法剣士
【レベル】38
【状態】疲労
《HP》1280/6300
《MP》1200/4700
《STR》56
《VIT》71
《DEX》48
《AGI》55
《INT》60
《LUK》51
《HIT》34
【スキル】
無限収納Lv5
採取Lv3
剣術Lv6
火魔法Lv4
水魔法Lv3
聖魔法Lv1
料理Lv2
【祝福】剣士
【称号】超越せしもの
----------
ステータスが爆上がりしているうえに、なんと聖魔法が使えるようになっていた。
あれ、これ、寄生蜂倒したの、ひょっとして俺?
格上倒したから経験値がめちゃくちゃ入った、みたいな?
何はともあれ、状態異常がないのなら、まずは仲間の安否確認だ。
「息がある……」
息がある、ってことは寄生蜂の奴、俺たちを養分でなく宿主にするつもりだったのか。
うぇっ、よくわからないけど倒せてよかった。
同じことをやれといわれても絶対に二度とできない。
「【回復】」
俺は倒れている【暁の星】の面々の息がまだあるのを確認すると、さっそく使えるようになったばかりの【回復】を試してみた。
インベントリの中に入ってるから、ポーションでもよかったんだけど、【回復】はMPだけで済むし、触れることの多い【回復】は、感覚的に使えた。
まぁ、初期【回復】だけじゃ、意識回復するとか、かすり傷治すのがせいぜいだけど。
「うーん、いててて……」
「……あれ、生きてる」
「助かったの……?」
「死んで、ない……」
ぼうっとした顔で皆が身を起こした。
よかった。
失敗しないで【回復】を掛けられたみたいだ。
「アディ……?」
信じられないものを見るような顔で、ジョーイが俺を見る。
「奇跡が起きたみたい」
「みんな死んだと思ったわ。本当に神のご加護みたいね」
てへ、と笑って首を傾げると、ジョーイがMPポーションをグビっと飲み、まずはリズを回復させる。
「状態異常はない?」
確認するジョーイは流石聖魔法が本職の神官だ。
「っなんで、リズを優先するんだよ」
腹立たしそうにガリオンが文句を言う。
……こいつだけ捨てて行ったらダメかなぁ。
まぁ、死んだ相手にはそれ以上復讐も出来ないし、死んでほしいとまでは思ってないからいいんだけど。
「リズが回復しないと、トレントは持っていけないでしょ。それともガリオンが担いで帰る?」
ジョーイは正論でばっさり切り捨てる。
……あれ、これ寄生蜂には気が付いてない感じ?
思い返して見ると、ロックウルフから虫が湧いたのは、寄生蜂の眷属だっただろうな、とかいろいろあるんだけど……気が付いていないようなら、寄生蜂の素材は俺がまるっともらっちゃってもいいかな。
スカスカの寄生樹からは、そんなに素材は取れなさそうだけど、インベントリの存在を考えなかったら充分、というか、持ち帰り切れないほどの素材だ。
「しかし、寄生樹なんてよく倒せたわね」
「それが……私も無我夢中だったから、どうやって倒せたか覚えていないの」
これは結構マジ。
いったい何がどうなって寄生蜂を倒せたんだ。
「でも、皆生きててよかった」
そう言いつつ、ガリオンに【回復】を掛けてやる。
「あれ、アディ【回復】なんて……」
「死にかけたら聖属性に目覚めたみたいなの」
回復してやるから、帰り道もしっかり働け。
俺は多分、今回誰よりも働いた。
その分、儲けは内緒でいただいていくけどな。
死ぬかと思ったけど、その分色々美味しくもあったなと思うと、顔がニヤけるのが止まらない。
いやあ、いいことがあると、ガリオンにだって優しくしてやろうって気にもなるね。
「へぇ、死にかけたら今までなかった属性に目覚める、なんて話は聞いたことがあるけど、本当に奇跡が起きたのね」
ジョーイが驚いた顔で言った。
「奇跡……」
戻った握力を確認しつつ、ガリオンが呟いた。




