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経験値横取りにキレた俺は女装で無双する  作者: 白生荼汰
プロローグ 勝手な奴は自覚がない
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追い打ちかけて善人面

「ごめんね、アディ。今は多少収入を犠牲にしてでも、『暁の星』はレベルを上げていく時期に来ていると思うのよ。だから……」


 もう話はついたというのに、申し訳なさそうにノーマが言った。


「今の『暁の星』に必要なのは、戦闘をサポートしてくれる支援職なんだ。回復役か、バッファーか、そのどちらもきみには望めないからな」


 リディの言葉はもっともだ。

 剣士のガリオンは言わずもがな、騎士のリディは突進力に特化した前衛職、ノーマは攻撃主体の魔術師で、踊り子のカスハもまた鼓舞などの特殊スキルではなく肉体戦闘に特化した近接戦を得意としている。素早い暗殺者のロージィへ適切にポーションを持たせることができれば、ある程度の支援も可能ではあるけれど、そのためには大量のポーションを保持できるだけのマジックバックかインベントリが必要だ。

 今の『暁の星』はほぼ戦闘職で構成されていると言ってもいい。

 上を目指すなら、どうしたって支援職が必要となる。


「いいよ、わかってる」

「気を落とすなよ。アディ程度のインベントリでも、E級程度のパーティなら、充分重宝するんだからさ」

「そうそう、アディならポーターでやっていけるって」


 悪気なく励ますみたいにガリオンが言い、カスハが同調する。


「は、はは……そうだな」


 俺は、ポーターじゃなくて剣士だ。

 どんくさくて、レベルもなかなか上がらないけど、それでも剣士なんだよ。

 血を吐くような叫びはぐっとこらえる。

 今の俺にはそれを言えるだけの自信がない。


「せっかくだから、解体の講習を受けたらどう? アディは不器用だから、素材の状態が悪くて稼げないでしょ。解体でインベントリに入れる部位を選別できるようにしたら、ぐっと付加価値を上げられるわよ」


 親切そうなロージィの助言は、一応一考の価値はある。

 これからどこかのパーティに加入するにせよ、ソロでやっていくにせよ、増収は大きな課題になるからだ。


 俺が『暁の星』脱退を受け入れたことで会議は終わり、それから俺が預かっていたパーティの共有資産や、個人資産の管理について話し合い、ギルドでパーティ脱退届を出して解散となった。


 テントや鍋、毛布などの大型のものはいったんガリオンが預かり、魔石や素材は売り払ってこの場で山分け、食器、売るには惜しいと判断していた装備品、衣服や宝飾品などは個人所有として、それぞれに管理するため、一人づつの宿を巡って置いていく。

 ポーションなんかの消耗品は、これからも冒険者を続けるなら必要になるだろうということで、餞別に譲ってもらえた。

 その代わり剣士向きのレア装備品はすべてガリオンに譲った。

 ガリオンのモノに関してはガキの頃から預かりっぱなしだったガラクタもあって、引き渡すときには少しばかりしんみりとした気分になった。


 ついでもあって、俺は自分自身の持ち物も少しばかり整理した。

 捨てられずにとっておいた、冒険者になったばかりの頃に買った剣、ボロボロになってしまったマント、初めて見つけた宝箱、売れるようなものはほとんどなかった。

 冒険者になってからの思い出を売った金は、全部合わせても酒二杯分にも満たない。

 だけど、インベントリに入れてあったものをあらかた出してみると、オークの一匹や二匹くらいは格納できそうな余裕ができた。

 たかが2年、されど2年。

 2年の間『暁の星』としてやってきた経緯は、レベルとしての形にも金にもならないけど、俺の中を一杯にしていたんだな。


 俺はいらないものを全部売り払った後、酒場に足を運んで、その金は飲み干してしまうことにした。


 インベントリの中はスカスカになってしまったし、明日からの予定もないけど、実はすっきりした気分でもある。

 もう、他人の余計なものを抱え込む必要はないんだ。

 明日からは、自分のインベントリの中には自分の好きなものを詰め込んでいけばいい。

 まずは地道にレベルを上げて、もうしばらく冒険者としてやっていこう。

 俺は一人、祝杯を挙げた。

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