オンナノコのキモチ
ジョーイのバフを受けて加速する。
なるほど、支援魔法を受けるとこうなるのか。
……スザンナからはデバフばっかり受けてたからな。
「たぁあああああ!」
切り込みが浅い。
いくらバフを受けても、やっぱり一度じゃ両断できなかったか。
「右に回って、真ん中と左はしばらく引き付けておくから!」
「ヨナさん、援護します!」
素早い動きでヨナが敵の注意を引き、リズが召喚したフロックスパロ達がヨナを攻撃させないように邪魔をする。
動きはいいんだよな。
ただ、決定的に攻撃力が足りてない。
「ふんっ!」
ガリオンが剣を振るう。
あれでもまだ足りないか。
あと一押し、それなら……。
「ジョーイさん、右に聖なる光を!」
ガリオンがさらに一太刀振るった直後、ジョーイにとどめを刺させる。
「……あ」
「ガリオンさん! 左は請け負います、あなたは中央へ!」
何かを言いかけたのを、強引に指示して文句を封じ込め、俺は左側のロックバイパーに切りかかった。
……お、これなら本当にあと少しの攻撃で削り切るな。
「リズさん、左の攻撃を任せました。モイラさん、私に続けて攻撃魔法下さい!」
「はい!」
「え、あ、うん……」
リズが無事に左へとどめを刺し、中央の他より硬かったロックバイパーは俺の直後に刺さったファイアアローで絶命した。
「えっ!? あ……」
思ったより早く倒しきってしまったからか、ガリオンがひとりおたおたしている。
「あ、やったぁ! 今レベル上がった!」
リズが飛び上がって喜ぶ。
……はっきりそうだと分かったわけじゃないけど、前の『暁の星』より、全体にレベルは低くなってるんじゃないだろうか。
どうもガリオンが一番レベルが高いような気がするんだよな。
「よ、よかったな、リズ」
自分が刺すはずだったとどめを刺せなかったのが不服なのか、ムスッとした顔でガリオンがリズを祝福する。
「……私も」
モイラもロックバイパーのリーダーにとどめを刺したことでレベルが上がったようだ。
ふふん。
俺だって、姫プかましてた間、ただ漫然と守られてたわけじゃないからな。
どの程度まで戦えばとどめを刺すチャンスになるか、やり過ぎずに安全にとどめだけを差し出せるか、そういう気づかいはしっかり学ばせてもらっている。
とどめを貰う方だったけど!
俺がとどめを横取りしてもよかったけど、別にこの子たちに何かされたわけでもないし、それならガリオン以外のパーティメンバーにとどめを刺させて経験値を献上しておこうかな、と。
あと、指示出す側に回るのやってみたかった。
俺に貢いできた奴らがさ、指示出して俺にとどめ刺させた後、ドヤるじゃん?
惚れたろ? 俺の気遣いどうよ? って言いたげにドヤるじゃん。
あれはあれで、クッソむかついたんだよな。
手柄は譲ってあげてるんだよ、って無言で言われてる感じ。
お情けで、お前のレベルも上げてやってるんだ、と言わんばかりの視線。
下心しかないくせに、親切ぶった言動も、腹が立って仕方がなかった。
……でも、自分で指示出してみてわかる。
気持ちいいな、これ。
自分の指示で、他の人を動かせるこの感じ。
あまつさえ、レベルが上がった、と喜んでいる姿を見ると『うんうん、俺のおかげだね』と、まるで俺が育てたかのような達成感がある。
惜しむらくは、今女装してなければな。
かっこよく指示を出した俺に、感謝なんかしちゃって、その感謝から恋に……みたいな?
そういうのが期待出来ちゃったりなんかしちゃったり?
みたいな妄想が頭をよぎったけど、残念ながら、今の俺はオンナノコ……。
くっそ……なんで俺は女装なんかしてるんだ……。




