彼らは前衛を探している
冒険者ランクが上がったことで少しだけウキウキしながら依頼書を見ることにする。
ガリオンの奴はまだうろうろしてるけど、無視だ、無視。
安全マージンを取るなら、まだEランクの依頼を受けた方がいいだろうけど、今の俺はCランクの依頼だって受けられる。
ここで依頼を受けるつもりはないから見るだけだけど、どんな依頼があるのかくらいは見ておきたい。
あぁ、やっぱり魔獣のランクが高くなると、向こうもパーティみたいなの組みだしたりするんだな。
異種混合だと、俺の場合どうやって戦ったらいいんだろう。
ゴブリンメイジか……まだ見たことないな。魔法攻撃耐性付与のアクセサリーももらったけど、アレ付けたら対抗できるかな。
魔獣もD級になると魔法をひとつふたつ使ったりするやつが出てくるけど、火属性って書かれているってことは、何種類も火系の魔法なら使えるってことだろうか。
「ねえ、君」
うん?
「君、剣士かい?」
ギギっとぎこちない動きになっているのを自覚しながら、声を掛けてきたバカの方を見る。
ガリオン……!
無視してこの町を去るつもりでいたのに、なんで話しかけてきやがった!?
本当に復讐するぞ。
そのうちエゲツナイ目に合わせてやるからな、マジで。
「あ、ごめん。突然。なんだか、君話しかけやすくて……」
何も答えずに首だけ傾げて「何の御用かしら?」と仕草で問いかけてやるけど、内心は冷や汗でダラダラだ。
話しかけやすいだ?
そーでしょうとも。地味で平凡で、なのにちょっとだけ目を引く可愛い女の子、それが今の俺だ!
スターカの町では下心まみれの男どもにしょっちゅう声を掛けられていたとも。
もれなく全員いいように転がして、レベルと懐の糧にしてやったけどな!
「あの、差し支えなければ、今の冒険者ランク聞いてもいいかな。今、うち前衛探してて……」
あれ、俺だって気付かれてない?
前衛を? なんで?
ひょっとしてさっきの喧嘩は、リディが脱退するところだったのか?
「冒険者ランクは、ついさっきD級に上がったところ。さっき、ギルド前の通りであなたが騎士の人と喧嘩してるのを見ちゃったんだけど……」
「あぁ、見られてたのか。恥ずかしいな」
ガリオンは苦笑いしながら頭を掻く。
あ、これ、全然俺だって気付いてないわ。
ちょっとだけほっとして、変に肩に入っていた力を抜く。
やっぱり、リディが抜けたのか。
いったい何があったんだろう。
「そういうこと。彼女、うちの前衛だったんだけど、最近パーティの方針について意見が合わないことが多くなって、さっきとうとう……あ、でも安心して。他の連中はいい奴ばっかりだから。うちのパーティ、俺以外は女の子だし、皆面倒見が良くて優しいからすぐ友達になれるよ」
……優しい、か。
確かにノーマは優しいお姉さんだったし、カスハも生活の面倒を見てくれた。ロージィだって皮肉っぽくはあったけど、色々と助言をくれたさ。
でも、彼女たちも散々俺のインベントリの恩恵を受けながら、経験値横取りを黙認し、あるいは自分たちがして、解体や野営の設営なんかの作業は俺任せで、それで当然って顔をしてたくせに、俺の脱退を促して切り捨てたんだよな。
それって、本当に面倒見が良くて優しいんだろうか。
「とりあえず、会って話をしてみてよ。パーティ加入は、何度か合同で依頼受注して試してみてからでいいからさ」
決まり、と言いたそうに、ぐいぐい肩を押される。
ここで肩を抱いたりするわけじゃないのが上手いな、と変なところで感心する。
ナンパをするような奴ってすぐに肩を抱いたりとか、やたらに距離感が近くてべたべた接触してくるんだけど、それってやられる方にすると警戒心を掻き立てられる。
特に自分が女の子で、相手が男なら余計に。
それが、ガリオンの場合、強引でこそあるけど下心を感じないぐらいで、誘われてる相手を巻き込んでいくんだ。
いいや、もう『暁の星』のメンバーに再会したら、お前ら信用できねえ、ってぶちまけてやろう。
そう思ってガリオンについて行ったんだけど……。
「彼女たちが俺がリーダーやってる『暁の星』のメンバー」
「剣士ですか、よろしくお願いします」
「どーもー」
「……よろしく」
「よろしくねっ」
……一人も知った顔がない。




