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経験値横取りにキレた俺は女装で無双する  作者: 白生荼汰
第一章 すみません甘えてました

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鼻の下が伸びている

「君、見ない顔だね。このギルドは初めて?」


 げ、イーサン。

 後ろから見ていたから、俺だとは気づかずに声を掛けてきたのか。


「そこの掲示を見ていたってことは、F級かな? よければ俺が色々とこのギルドや周辺のことを教えてあげるよ」


 親し気に肩へ手を掛けられた。

 顔を見られまいと伏せていたけど、ちらりと見ると、やけに得意げな表情をしている。

 え、まだわかってないのか?

 小鼻が膨らんで鼻息が荒くて気持ち悪い。


「ね、君。名前は?」


 この距離で見ても分からないのか……。

 スザンナの化粧は凄いな。


「俺はイーサン。18歳だよ。D級冒険者なんだ。といっても、D級には上がったばかりだけどね。だから、F級だからと言って遠慮することはないよ。まずは名前を教えてよ」

「あ……アディ」


 押しの強さに負けて思わず名乗ってしまったけど、さすがにこれで気づいただろ?

 どんな罵声、嘲笑が飛んでくるか……。

 下を向いて体を固くしていると、イーサンは朗らかな声を上げた。


「そっか。アディか。親しみやすくていい名前だね」


 ……ん? まだ気がつかない?


「ねえアディ、依頼を探していたところかな? どの依頼を受けようとしてたんだい? 良ければ、()が力になるよ!」


 うえっ。僕とか言って気取ってるよ、気持ち悪い。

 そうか、アディは男でも女でもよくつかわれる名前だから、同名の別人だと思いこんでるのか。

 ここまでバレてないなら、揶揄ってやれ!


「フェザーラビットのぉ依頼を受けようかと……でもぉ、ひとりでは難しそうだからぁ……」


 裏声、変じゃない?

 アリスの喋り方と発声を真似てみたけど、我ながら気持ち悪いなコレ。

 精神的なものもそうだけど、眉間から鼻筋に変な振動が伝わってくる。

 やめよう。


「フェザーラビットの!? え、でも、フェザーラビットはF級にはちょっと難しいよ。今レベルは?」

「あ、E級……レベルは一応……22……?」


 さすがにランクとレベルでバレるかなー、と思いながら答えると、イーサンは嬉々としてフェザーラビットの依頼書を剥がした。


「それなら大丈夫かな? じゃあ、ふたりで受注しよう! 俺今レベル32だけど、ちょうどいいよね。決まり! さ、受付に行こうか」


 手を差し出されたけど、気が付かなかった振りをする。

 手なんか繋いでたまるか。

 ほんとアホだな、こいつ。

 全然気がつく様子もないよ。

 受付でネタばらしするかー……。


「それでは、ギルドカードをお預かりします」


 イーサンが選んだ受付窓口はメルロさんだ。

 むしろ兎系魔獣だから狙ってメルロさんを選んだ節がある。

 そう言うところが、本当にゲスだ。

 メルロさんが格好のことで突っ込んできたら、イーサンを笑ってやって、一緒に依頼なんて受けないと断ろう。

 メルロさんは、依頼書を見ても、受け取ったギルドカードを確認しても、まったく眉ひとつ動かさず……え?


「フェザーラビット3匹討伐。D級冒険者イーサン、E級冒険者アディ、連名での受注で間違いないですね?」

「あぁ、間違いない!!」


 メルロさんは冒険者来歴を確認しているわけだから、気がついていない、なんてことはないよね?


「受注完了! 頑張ろうね、アディちゃん!」


 馴れ馴れしく頭に触るな。

 さりげないスキンシップのつもりなのか、ことあるごとにぺったぺった触ってくるのは何なんだ。

 前に組んだ時もやたらに肩を組んだりして来てたけど、頻度はその時以上で、しかも妙な目つきをしているから、不快さが以前肩を組まれた時の比じゃない。


 そして、俺はネタばらしをするタイミングを掴み損ねたまま、フェザーラビット討伐に向かうことになったのだった。

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