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経験値横取りにキレた俺は女装で無双する  作者: 白生荼汰
第一章 すみません甘えてました

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都合よく使われた経験

 依頼主と受注側では扱いが違うから、臨時パーティを解散し、『惑う深紅』とはいったんギルドで別れた。

 最後に打ち上げをしよう、という話になっている。

 その酒場も、とても俺じゃ足を踏み入れないようなお高い店だから、緊張半分、楽しみ半分だ。


 やっぱり高い酒って美味いのかな?

 俺、あんまり酒が美味いって思ったことないんだよ。

 まだまだガキの証拠で、大人になればこの味がわかる、なんて言われても、正直果実水の方が好きだ。

 特に水に果汁を入れたやつじゃなくて、すりおろしたり潰した果実をぎゅっと絞ったやつ。

 高いからあんまり飲んだことないけど。


 あと、肉。

 肉喰いたいな。ガツンと塩の効いた味の濃いやつ。


 『惑う深紅』は金持ちみたいだし、契約中も色々喰わせてくれたけど、打ち上げとなればもっと美味いものを食わせてくれるかもしれない。


 こんなに美味いものばっかり食って、明日っから食事が寂しくなったらどうしよう。

 ……変な連中だったけど、長い間一緒に過ごすっていうのは『暁の星』にいた頃以来で、また一人で飯を食うのも寂しくなるかもしれないな。


「あれ、お前アディ……か?」

「イーサン?」


 依頼達成報告の順番を待っていると、ソロになってから何度か臨時パーティを組んだ相手が話しかけてきた。


「アディ、お前見違えたな。ずいぶん痩せちまって……食えてないんじゃないのか?」

「いって……そう強く叩くなよ」


 バンバン肩を叩かれてむっとする。


 確かにこのひと月で俺は痩せた。

 しっかり食わせてもらっていたから、やつれたのではなくて引き締まったというのが正しいだろう。

 太りやすい奴は筋肉も付きやすいはずなんだけどな、とアリスは不思議がっていたが、筋肉は残念ながらあまりつかなかった。

 ただでさえさほど特徴のない顔立ちだったのが、痩せたら余計に凡庸な顔になり、我ながら地味になった。

 エリーさんからは間諜向きだと慰められたけど、それって目立たない、記憶に残らないってことで、正直嬉しくない。


「しばらく顔を見なかったけど、何してたんだよ。何度か手伝ってもらいたい依頼もあったってのによ」

「……長期の依頼を受けてたんだ」

「その依頼終わったのか。なら、また俺の依頼を手伝えるな」

「しばらくは休むつもりだから」

「なんだ、余裕だな」


 イーサンとのパーティは割が良くない。

 言ってしまえば『暁の星』と同じか、それより悪い。

 イーサンも剣士なんだけど、俺のことをある程度動けるからカバーする必要のないポーターとしてしか見ていなくて、そのくせ扱いはポーターだから、平気で分け前は少なくていいだろう、みたいなことを言ってくる。

 押しの強さに負けて何度かは手伝わされたけど、進んで組みたい相手じゃない。


「なんだよ、食えてないんだろ。俺と正規でパーティ組もうぜ」

「前にも言っただろう。俺はしばらくはソロでやっていくつもりだって」


 遠回しに断ってるんだから、気が付いてくれよ。

 いや、気が付いていて押せばいいように使えると思われてるのか。


「そうはいうけど、ソロよりはパーティの方が受けられる依頼の幅は広がるぜ? ひとりよりふたりだって。俺もそろそろソロは飽きてんだよ」

「だったら、他にメンバーを探せばいいじゃないか。剣士同士で組むより、後衛ができるやつと組んだ方がいい」

「アディはポーターだろ」

「俺は剣士だ」


 またまた、だなんてニヤついているのがタチ悪い。


「前に組んでたガリオンだって剣士だったじゃないか」

「もう剣士同士で組むのはこりごりなんだよ」

「剣士同士じゃなくて剣士とポーターじゃないか」


 ……しつこい。


「とにかく、後のことは休んでから考える」

「なんだよ、そんなに稼いだのか? なら、俺にも奢れよな。今晩いいとこに連れて言ってやるから……」

「あら、アディには今夜先約があってよ。それともあなたもご一緒なさる?」


 にっこりとエリーさんが微笑んでいるけど、その隣にはフリフリキングロックエイプと枯れ木(仮)の姿がある。


「マジですか? それなら、お言葉に……ひっ」


 浮かれて返事をしたイーサンが固まった。


「あなた、アディと仲良しさんなのぉ~?」


 アリスが笑うと歯茎がむき出しになる。

 初めて見るとインパクト強いよな。

 俺はだいぶ慣れたつもりだけど、気を抜いてる時に顔見ちゃうと飛び上がるもん。


「あ、俺の順番がきたから」


 ちょうどよく受付が空いたから、この場はエリーさんたちに任せることにして、俺は依頼達成報告と討伐素材の買取のため窓口に向かった。

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