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008 理不尽な解雇通告

「そういえばアラトくん。レンジャー防衛政策局のお偉いさんが呼んでたよ。アルファスタに帰還したらすぐに会議室に来るようにって」

「防衛政策局のお偉いさんってことは……ゲルブか……」


 面倒な呼び出しに落胆する。

 防衛政策局には良い噂がない。特に資金横領の噂が絶えない。


「実は俺、防衛政策局に嫌われてるんですよね」

「やっぱりそうだったんだね。アラトくんは一般戦闘員だけど、強すぎるから発言力あるもん。防衛政策局の案を没にしたでしょ? さすがに凄いよ」

「防衛政策局が、俺達(レンジャー)の経費を削ろうとするからです。命に係わるお金は削っていいものではないですよ」


 設備が整わなければ、戦場でレンジャーは死ぬ。俺も例外ではない。

 そしてなにより――助けれない。


「まあ、早く行っておいで。今日は帰還祝いのパーティーだよ‼」

「ありがとうございます。けれど、そのパーティーは任務が終わるたび、毎回してますよ」

「息子が無事に帰ってきたんだ。それはお祭りだよ。何度でもお祝いするさっ」


 リーンは、にこっと笑う。

 何度この人に支えられたか……わからないな。


 ◆ ◆ ◆


「貴殿にはレンジャーを辞めてもらう」


 会議室に来て、そうそうに解雇通告を言い渡される。

 本来は取り乱すべきだろうけど……この時の俺は冷静だった。


「そうですか……」

「上層部が決定したことだ。貴殿が何を言おうが、覆らん決定事項である」


 防衛政策局の局長――ゲルブが長いひげを撫でながら下品に笑う。


「レンジャーの予算削減案を没にした腹いせですか?」

「そんなことはない。防衛政策局は私情を挟まんよ、ふっふっふ……」


 即答か。どうやら先日の件で、相当怒りを買ったようだ。


「はっはっは。無様だな、アラト。最強のレンジャーと言われ、天狗になった罰が当たったのだろう」


 ゲルブが俺に一枚の紙を投げつける。


「解雇通知書……本物か……。上層部連中の署名もされてやがる……」


 どうやら上層部は、俺を本気で解雇しにきたらしい。

 ゲルブは、喉奥が見えるほど下品に笑う。


「貴殿の態度が気に入られんかったのだろう。もうここに貴殿の居場所はない。さっさと出ていくのだな、わっはっは!」

「……汚い笑いだ」


 下品な笑い声に、俺の呟きはかき消される。


「それと――余計な詮索は推奨せんぞ。アルファスタで居場所をなくすかもしれんからな、ぐっふっふ」

「……失礼する」


 ◆ ◆ ◆


 わずか数分の出来事だった。

 そのわずか数分で、人生のすべてを費やしたレンジャーを解雇されたのだ。

 詳しい事情も教えられず、理不尽に。


「……どうしたもんかな」


 レンジャー基地から出た俺は、住宅エリアのベンチに腰を降ろした。

 会議質では平然とした態度を取れたが、想像以上に心を抉られている。


「くそ……」


 今まで多くの人を助けてきた。

 がむしゃらに危機に瀕してる者を助けてきた。

 取りこぼした命も多くあるが、それでも助けてきた。


「その仕打ちがこれか……。さすがに堪えるな……」


 今までの努力を理不尽に否定されたのだ。

 そしてレンジャーを解任されることで、何よりも恐ろしかったのは――誰かを助けることが出来なくなることだった。


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