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006 守護者(マスターセンチネル)

 響く爆音――ガラスの破片が飛び散り、ブルーナに刺さる。

 しかし、ブルーナは痛みも忘れ、茫然としていた。


「素晴らしいッ‼ これこそ娯楽です‼」

「悪趣味過ぎるぞ、ヴィラ‼」


 爆発にのまれ、飛び散った子ども達の肢体。

 視界に入れることすら拒みたくなるほどの悲劇であった。


「素晴らしい娯楽を拝めました。感謝しますよ、小娘」


 悲劇を受け入れることが出来なかったブルーナが足元から崩れ落ちる。


「子どもを皆殺しにして楽しいかッ⁉」

「命を散らした娯楽は、星にも勝る輝きを放ちます」

「理解できない……ッ‼」

 

 俺は怒り任せに長剣をヴィラに向けて振るった。

 

「――ヴィラ様に手出しはさせません」


 突如、眼前に大盾を持った男が現れ、俺の攻撃を受け止める。


守護者(マスターセンチネル)までいるか」

「ヴィラ様はオメガルドの統治者です。我々、守護者(マスターセンチネル)は、如何なる時でもヴィラ様を影からお守りしている」


 冷静に考えれば、そうだ。

 統治者が1人で森でいるなんてこと、許されるはずがない。


「この男――"シアン"は、わたくしを護衛してくれる5人の守護者(マスターセンチネル)の1人です。最強のレンジャーと言われている貴方でも、多少は手こずると思いますよ」


 ヴィラと守護者(マスターセンチネル)の2人が相手か。

 ……状況は不利だ。何より、ブルーナを守り切れない。

 けど――


「さあ、虚勢を張る最強のレンジャーよ。わたくしを満足させる娯楽を提供して散ってくださいね」

「断る。この場は俺の勝ちだ、ヴィラ」

「――ッ⁉」


 晴天の空が陰り、ヴィラが忌々し気に顔を歪めた。


「レンジャー部隊を乗せた大型宇宙船ですか」

「増援だ。ゲスな娯楽に時間を浪費し過ぎたな」

 

 ピー、ピーと耳元で音が鳴る。

 通信だ。


『アラトくん、生きてるかーい? まずはヴィラめがけて派手にぶっ放すよー。3、2…』


 通信してきたリーンの合図と共に、俺はブルーナの元に駆け寄って抱きかかえた。

 魂が抜けたかのように、ブルーナの身体は軽い。


「距離は取った。派手にやってくれ、リーンさん」

『…1、0。どどどどっ‼ どっかーんっ‼』


 宇宙船に搭載された大型砲台から白い光線が放たれる。

 

 どぉぉぉぉぉぉん


 森一帯に爆風が吹き荒れ、俺は吹き飛ばされそうになったが、なんとか踏みとどまった。


『やった?』


 もくもくと上がる黒煙が晴れていく。


「ご無事ですか、ヴィラ様」

「おかげ様で服が汚れませんでしたよ。感謝します」


 高威力の光線を喰らったというのにヴィラとシアンは平然としていた。

 シアンが大盾で光線を受け止めたようだ。


守護者(マスターセンチネル)め。鬱陶しいなぁ……。でも大丈夫♪ 数の暴力で押し切っちゃおう‼』


 楽観的なリーンを他所にヴィラは大きくため息をついた。


「まったく……。せっかくの娯楽で心が満たされていたというのに……。大勢で騒がれると興ざめします」

「撤退されますか、ヴィラ様?」

「そうしましょう。もっと娯楽を嗜みたかったのですが……、まあ良いでしょう」


 ヴィラはつまらなそうに空を見上げ、俺の方を向く。

 

「また会いましょう、最強のレンジャー」

「次、会うときは、必ず殺す」

「ふふ、頑張ってください。健闘を祈りますよ」


 そう言って、ヴィラはニヤリと笑うと光のように姿を消した。

 

『アラトくん。さすがの君でも疲れたでしょ? その腕に抱えている子と一緒に帰還しておいで。あとは他のレンジャーがなんとかしてくれるよ』

「助かります。俺もクタクタです」


 空から、すぅーと小型宇宙船が降りてくる。


「助かるぞ、ブルーナ。おい、ブルーナ、大丈夫か?」


 前髪で目を伏せるブルーナが、俺の腕を強くつかむ。


「助けられませんでした……。子ども達……わたしなんかと仲良くしてくれた、とっても良い子だったのに……誰一人として……助けられませんでした……ッ‼」


 ブルーナの瞳から、大粒の涙がボロボロと落ちる。


「お父様もお母様も殺されたのにッ‼ わたし、何もできなかったッ‼ わたし……強くなりたいです……ッ‼ 貴方くらい強ければ、きっとお父様もお母様も……みんな救えたはずなのに……ッ‼」


 どんな言葉をかければいいのか、わからない。

 ただ俺は、元姫の頭を撫でてあげることしかできなかった。


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