004 狂人の娯楽
俺がヴィラと呼んだ女は、艶美に笑う。
ガラス張りの球体に座り、手の甲に顎を置く。
「ふふ……。待ち遠しい……」
外見は二十歳ほど。肩まで伸びた白髪。雪のように真っ白な肌。
まるで聖女のような外見であるが――その瞳は嘘を吐かない。
「こ、怖いです……。あの人の瞳、一体、どうなっているんですか……?」
「アイツは――ヴィラは、人間じゃない。心も肉体も人間を辞めている」
ブルーナが恐怖したヴィラの瞳の瞳孔は鮮血のように紅い。
そしてウネウネと意思を持つように動いていた。
「1人は退屈ですね。まったく、娯楽に欠ける……」
ヴィラは溜息を吐くと座っていたガラス張りの球体を軽く蹴った。
「ふふ……わたくしの娯楽に付き合ってくださいね」
ヴィラが見下ろしたガラス張りの球体――そこには何人もの子どもが入れられている。
森に響いてきた子どもの泣き声は、ここから発せられたのだ。
「あそこにいるのは孤児院の子か?」
「……間違いありません。あの子達……助けられます……よね?」
「ああ、助ける。君にとって大切な子達なんだろ? 見捨てたりはしない」
しかし、あの子達は、人質とも言える。
俺がヴィラを奇襲して救出に行くか?
「いや、やめておいた方が賢明だな」
ヴィラを刺激したら、人質を殺しかねない。
あと何分か待機すれば、仲間のレンジャーの増援が来るはずだ。
一刻も早く助けてあげたいが、ヴィラもすぐに子ども達を殺したりはしない。
それまで待機して――
「そろそろ出てきては如何ですか? わたくしは、あなたとの対面を心待ちにしているのですよ」
――ッ‼
気付かれていたか。でも、ここで姿を現してもいいものか。
「ふぅ……。わたくしは、せっかちなのです。早くしないのなら――殺しますよ」
ヴィラが不気味な笑みを浮かべると同時――
ガラス張りの球体にバリバリと電気が流れ始めた。
あああああああああああッ‼
子ども達の苦しそうな悲鳴が森中を駆け巡った。
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