003 挑発された都合の良い展開
「この星の生存者を君しか見つけれてない。大勢が避難している場所があると思うんだが、心当たりはないか?」
「それなら、この森を抜けた先の孤児院です。大きい建物で設備も整っていますから、緊急時は避難場所として利用できるんです」
俺が宇宙船でこの星に降りた時は、孤児院らしい建物は見つけれていない。
おそらく俺は、避難所の孤児院とブルーナがいた城の間の位置に着陸したのだろう。
「その孤児院は国が経営する施設なので、わたしも何度か行ったことがあります。親はいなくても子ども達は笑顔で可愛くて……わたしをお姉ちゃんと呼んで慕ってくれて……みんな、生きてて欲しいです……」
「ブルーナは、その子ども達が好きなんだな」
「はい、とても……」
ブルーナの表情は曇っている。
慰めの言葉でもかけるべきだろうか?と考えながら、バイクを運転している時だった――
うあああああああああああああん
森のどこからか、子どもの泣き声が響き渡った。
「この声ッ‼」
「知り合いの声か?」
「聞き覚えがあります。おそらく、孤児院の子です」
ぞわっと身の毛がよだつ。
都合が良過ぎる展開だ。
避難所の孤児院の話題をしている時に孤児院の子どもの泣き声だと?
話が繋がっていないか?
まるで誰かに仕組まれ、手のひらの上で踊らされているかのような――
「娯楽のような展開だ……」
「ご、娯楽……?」
嫌な予感がする。
予感が的中した場合、ブルーナを守り切れる保証がない。
『この星にアイツが来てるみたい』
通信でリーンが言っていた言葉が脳内をよぎる。
アイツは、今まで数えきれないほどのレンジャーを殺している。
しかし、迷う必要はない。俺のやることは一つだけだ。
何があろうと俺は、レンジャーの役目を全うする。
「心配するな。孤児院の子どもは助けに行く」
「あ、ありがとうございますッ‼」
「ただ、さっきの子どもの叫び声には違和感しか感じなかった。子どもの叫び声を利用した罠の可能性がある。レンジャーをおびき寄せてる匂い袋ってことだ」
「そ、そんな…」
事実、今まであったことだ。それで多くのレンジャーが命を落としている。
俺の故郷だった星でも戦争で、子どもを道具として扱っていたことを教科書が書き記していた。
「罠の可能性がある場所に君を連れていくことはできない。まずは君を宇宙船まで連れていく。1人になって心細いかもしれないが、宇宙船に乗ったら、すぐにこの星を出発しろ」
「あ、あの……わたし、うちゅーせんの操縦はわかりません」
「宇宙船は全自動――わかりやすく言い直そう。乗れば自動で出発して、君を安全なところまで送ってくれる」
俺の説明をブルーナは理解してくれたが、頷かず、戸惑っていた。
「そ、そんな……わたしだけが、うちゅーせんを使ってしまったら、貴方は……」
「あと数分もすれば、増援が来る。そいつらの宇宙船に乗せてもらう」
一刻も早く、ブルーナを非難させて、子ども達も探そう――と思い立った矢先だ。
俺はブレーキを踏み込んだ。
「どうしたんですか、いきなり止まって」
「最悪だ……ッ‼」
宇宙船までの距離は50m程度。
草木で視界に捉えるのは難しかったが、アイツがそこにいたのだ。
組織オメガルドの統治者――名前はヴィラ。
この星を地獄に変えた張本人である。
「そろそろ、わたくしの仕込んだ娯楽が熟す頃でしょう。レンジャーの到着が待ち遠しいですね。ふふふ……」
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