002 姫を連れて
「改めて自己紹介をしよう。俺の名はアラト。君は?」
「わたしはブルーナです。その……一応、この国の姫をしています」
綺麗に着こなされたドレス、風にたなびく長く美しい髪。
容姿を見て、ある程度は予想出来ていたが、本当に姫様だったらしい。
「あの……これからどこへ向かうんですか?」
バイクの後部座席座るブルーナは、小さく震えながら俺の背中を強くつかむ。
「この星に安全な場所はない。君は俺達の船で保護する」
「船?海に向かうんですか?」
ブルーナは首を傾げる。
俺とブルーナの価値観は大きく異なる。伝わるようにしっかりと説明していく必要がありそうだ。
「わかりにくかったな。船と言っても海にある物じゃない。この森を抜けた先に、俺が乗ってきた宇宙船がある。それで星から脱出する」
「うちゅーせんというのが、どういう物かわかりませんが、この森の先が目的地なんですね」
とりあえず納得してくれたらしく、ブルーナはうなずく。
追手がいないか確認しながら、バイクで森をかけていると耳に装着していたイヤリングが音を鳴らす。
「通信か。誰だ?」
『やっと繋がったよ‼ 元気かい、アラト君‼』
「リーンさんか。どうしたんですか?」
耳元から聞こえる幼い声。
俺がリーンと呼んだ人物は、俺の声を聴くと安心したように安堵の溜息を吐く。
『もー、心配したんだからね。君の生体反応も確認できないし、通信も繋がらないしさ!』
「おそらく妨害電波ですね。アイツらも俺達が邪魔してくることを想定していたんでしょう」
『相変わらず君は頭が良いね。全部正解だよ。それで生存者は見つけたかい?』
リーンの質問に、俺は現状を伝える。
『生存者は1人だけか……。今回のオメガルドは随分と派手にハンティングをするね。さすが侵略者だ』
「リーンさん。本題に入ってくれ。あなたは、雑談をするために連絡する人ではない」
『可愛いアラト君ともっと話したかったけどなー。まあ、君が帰ってきてからでいいね。心して聞いて。この星にアイツが来てるみたい』
思わぬ訃報に俺は舌打ちした。
「遭遇する前に何とかした方が良さそうだな」
『5分もすれば増援が――』
――ッ‼
ザザッと木々が揺れた。
リーンが最後まで話し終える前に俺は通信を切った。
「敵襲だ。俺にしっかり捕まってろ、ブルーナ!」
「えっ」
ブルーナの両腕の力がギュッと強くなる。
『レンジャーを発見。攻撃します』
ブルーナを襲っていたのと同じタイプの機械が木陰から俺達の目の前に出現する。
「一体だけか、敵じゃない。起動‼CODE:310」
俺の言葉に反応するように右手が光ると、どこからともなく長剣が現れ――
「くらえ――ッ」
剣を振り下ろすと同時に機械は真っ二つに割れる。
「弱いな」
バイクを加速させ、縦に切断された機械の間を駆け抜け――機械が盛大に爆発する。
「す、凄い……」
「確かに凄い爆発だよな。距離を取らないと、大火傷を負いかねない」
「凄いのは貴方ですよ……」
「そんな凄いことしたか、俺?」
「無自覚なんですね……」
何を凄いと言われたのかわからず、俺は首を傾げたかったが、今はそれどころではない。
運転に集中するために前を向いて、ハンドルを強く握りなおした。
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