眼帯、ねぎ、クラスメート
「やめろ、そのネギをしまえ」
「何故だ」
深夜、腐れ縁の幼なじみに、ネギを片手に迫られる。
呼気から甘いアルコールの匂いが漂ってくるので、確実に飲み会からの帰りだろう。
そして何故か眼帯もしている。
「まず一つずつ整理していってもいいか」
「断るので、その尻にネギを突っ込んでもいいか」
「いいわけあるか」
ペシんと軽い音がした。
「あおくさっ!ネギで叩き返してくるなー!」
「尻にネギを突っ込もうとするな」
努めて冷静であろうと心がけるが、体調不良も相まってそろそろブチ切れそうである。
「何故しりにネギを?」
「ア○ルに打ち込むと治ると聞いて」
「治るわけあるか。訓練もしてない尻に異物をぶち込んだらそれこそ救急車呼ばなあかんくなるわ」
怒りのあまり、無言のネック・ハンギング・ツリー。
熟れたトマトみたいな顔色になったあたりで解放する。
「………なんで入ってきてんだよ」
「ファッキン!おんなのこになんてことするの!?危うく処女膜から血が吹き出るところだったじゃない!責任とってよ!」
「今まさに賠償請求したいのはこっちなんだが。どうせなくなるんならてめーの下の口にこそネギぶち込むぞ」
「ごめんなああい」
上の口にネギ突っ込んだあたりでようやく静かになった。
だめだ頭がフラフラする。
もがもが言ってる不審者を傍目に、力を振り絞って布団へと倒れ込む。
ああ、だめだ。床に体温持ってかれてた。寒気がひかねえ。震えが止まんねえ。
「………なんで入ってきてんだよ」
「寂しいのよ。寂しかったのよ。察しなさいよ」
「わーったからせめて体調がマシなときにしてくれ。辛い」
「何よ、冷たいわね。元クラスメート、今彼女でしょ。あったかい対応しなさいよ」
「あったかいな、あったかいよ。お前はほんとにあったかい」
朦朧としてきた。
意識と言葉が迷子になる。
「しばらく抱き枕になって。辛い。寂しい、泣きそう」
「………狙ってたとは言え、すげー火力。よーしゃよしゃ、あっためてやろう」
ぬくい。温い。人肌の、暖かさ。
冷たい熱い頭が飛んでる。
「大好き。。。」
「素面で行ってくれないかしらね、これ。今夜のおかず一直線なんだけど」
深夜に叫び声がこだまする。
「弱ってなけりゃ襲ってたちくしょーーーーーーーーーーーー!」
後日、びっくりするほど体調は良くなり、そして隣で寝ていたバカは風邪をひいた。
「介抱して♡」
「………雑炊ぐらいは作ったらぁ」