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ふるさと

ちょっと失敗したかな。トイレのタイミングが分からなくて、我慢させてしまった。

森に着いたら、真っ先にトイレを作ろう。


というか、衝立かな。エメル達には寝室にいる時だけ戻ってもらうようにして。私しか開けられないのも不便だな。まあ、私の魔法空間なんだから仕方ないけど。


「ユーリちゃん、グリーントータスの方は出してあげないの?スライムは出してあげてるのに。私達に気を使う必要はないわよ?」


「実は、シールドトータスに進化したんです。だから怖がられたら嫌だなと思って」

「凄いわ。随分一気に進化したのね。でも、ユーリちゃんの言うことはちゃんと聞いているんでしょう?なら、問題ないわ」


「ユーリ、お母さんは寝室を片付けてくるわ」

「分かった。今開けるね」

寝室を開けるふりして影に入ってもらった。


そうしておいてエメルを出すと、みんな興味津々なのか、寄ってきて眺める。

「本当にシールドトータスなのね」

「町ではギルドの人に、外ではあんまり出さない方がいいって言われたんですよ」

「そうね。白金貨まではいかなくても、大金貨数枚の価値はあると思うから、その方が賢明ね」

「しっかり魔力を通せばドラゴンのブレスさえ弾き返すと言われているからね」


そうなんだ。グリーントータスの頃から凄かったけど、さらに硬くなったんだね。まあ、ドラゴンと戦う気はないけど。

(さすがにブレスを弾くのは無理よ?そもそもドラゴンのブレスだって何種類もあるんだから)

へえ。

龍と竜、どっちもいるのかな?


朝食を食べたら今度は下り道だ。

厄介なのは、山を降りた所にいるロックリザードだ。

そんな話をしたら、任せて!とシーナさんに言われた。

オーク程度の魔物は手間取らない。エーファさんも、矢を高速で三本同時に射て、そのどれもが目等に当たっている。

相当な数の矢を使っているけど、リサイクルしながらだ。

それでも折れてしまったり、曲がったりと廃棄する矢は多い。


「消耗品の武器って大変じゃないですか?」

「うーん。でも僕は、接近戦が苦手なんだよ。小さい頃は頑張ってたけど、道場の師範にどんくさいとか言われたからね」

「向き不向きは誰にでもあるわよ。だからテッドも、色々試してみた方がいいと思うんだけどな」


「少なくとも弓と槍は向かないな。ユーリは双剣以外も試してみたのか?」

「一応槍も扱えるよ?あとは鍬とか」

「…いや、鍬は武器じゃないだろ」

「そんな事ないよ?二階層に出るビッグアントは、鍬を振り下ろすと丁度首を狩れるんだよ」


下まで来た。ロックリザードがゴロゴロ転がっている。シーナさんは畳返しの魔法?で、次々とロックリザードを裏返す。

ひっくり返る前に、みんなで向かっていく。

「今の魔法は土魔法ですか?」

「そうよ。片側だけに振動を思い切り与える感じかしら」

なるほど。今度やってみよう。


しばらく進んで川の手前位で陽が沈んだ。

「ここまで来たらもうすぐですよ」

「じゃあ、川だけ越えちゃいましょう!」

「ええー?濡れるし嫌だな」

「ドライで乾かせばすむんだから」


モコだけはちゃっかり亜空間に入っている。

「このまま風呂に入りたい!」

「いいよ?夕ご飯作ってるから」


今日の夕ご飯は、しゃぶしゃぶだ。牛肉でも豚肉でも、好きな方を食べられる。

タレもなんちゃってポン酢と、ゴマだれの両方を用意して、大根おろしも添えた。


コンロの魔道具をテーブルの真ん中に持ってきて、鍋の中にはコンブーも入れる。

「あ!しゃぶしゃぶじゃん!」

「みんなで食べるのにはこういうのがいいよね」

ひたすら薄く切るのは、レイシアさんやチャチャにも手伝ってもらった。


「何だこれ、超うめぇ。A5ランクの和牛かよ」

「ミノタウロスは美味しいんだよ。その代わり、高ランク冒険者でもなかなか狩れないから、そう口にはできないけど」

「それをあっさり狩るなんて、ユーリちゃんの家族も凄いわね。試験を受ければ一気に高ランクになれるわよ?私が推薦してあげましょうか?」


「いえ、いずれは娘と冒険者をしていくつもりなので、あまりランク差が開くのは望んでいません」

「なるほど。でもユーリちゃんも強いから、10歳を越えたらあっというまにランクも上がりそうね」

「まあ、程々に」

「俺もそのパーティーに入れてくれ!」

「その前にさ、テッドは学校に行くでしょう?」

「え?ユーリも行くんじゃ…」

「まあ。行った方がいいと思うけど」


「そうだな。我々が無知な分、ユーリには色々と知ってもらわないと」

「あら…ムーンさんの世代はともかく、モコちゃんも?」

「ボクも行ってないよ」

「ならユーリちゃん達と一緒に行ったら?10歳越えてても、夫の紹介があれば姉妹で通えると思うわよ?」

「それ言うなら兄妹だから!ボクは本当に男の子なんだってば!」

「それはどっちでもいいわ。考えておいて」


モコと一緒に行けたら嬉しいけど、モコ達はステータスボードも持っていない。大丈夫なのかな?

「牛肉おかわり!」

「こらテッド、少しは遠慮しなさい。ムーンさん達が狩ったんだから」

「まだまだあるから気にしないで下さい。山を越えると、大概出てくるので」

「…まさか今日以外のも…容量を聞くのが怖いな」

エーファさんの収納庫も、容量は大きそうだけどな。矢が無限に出てくる感じだし。


夕ご飯を食べたら、シーナさん達は、青龍の住む山に向かって祈っていた。

私も一応それに倣って祈る。

(お帰り、ユーリ。お客さん達がいたら会いにはこられそうもないね)


!うわ…アオさんの念話は、随分届くんだな。

(ただいま。しばらくは慌ただしくなりそうです。テッドはアオさんに会えたりしますか?)

届くかは分からないけど、念話を送ってみた。


(会えるけど、必要はなさそうだね)

テッドは、不自由なく暮らしているもんね。それに物づくりとはあんまり関係なさそうだし。

ああ。でも馬車の改造とか、バイクを作ろうとしてるんだっけ。

でも、考えてみたらガソリンがないんだから、動くはずないよね。せめて自転車にすればいいのにね。


ユーリの田んぼの稲は、まだ青い。畑の方は、キュウリやナス等が育っている。

「これ、ユーリの田んぼか?」

「そうだよ。放っておいたのに案外育つね」

その代わり雑草は生え放題だ。

「モチ?手入れしてくれるの?」

モチはじっとユーリを見上げる。

「分かった。なら、結界石を置いておくね」

モチは喜んで雑草を食べた。こういう所はすあまみたいだな。


「ユーリちゃんの家はどこなの?」

「もうないです。丁度ここに、洞穴を掘った家があったんですけど、亜空間があるから要らないと思って埋めました。放っておいて魔物の巣になるのも嫌ですし」

「残念だけど、仕方ないわね」

「この場所は好きなので、帰る場所はここですけど」


上に戻れない以上、ここが私のふるさとだ。


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