うっかりユーリと、国の事
やっと戻し方分かりました。ご迷惑をお掛けしました。
苗がある程度伸びるまでする事もないので、炊飯器の魔道具を作った。
テッドのお願いじゃなくて、シーナさんにお願いされたら断れない。
魔道具の話をうっかり訊かれていたのは失敗だった。最初は鍋で炊く米の話をテッドとしていたのに、そこからこびりつかない付与の話になって、魔道具の話になった。
テッドに迂闊な奴とか散々言われたのが凄く悔しかった。
「ユーリしゃん、人の事言えないでしゅけど、もっと周りに気を配った方がいいでしゅね」
フレイにまで言われたくない…。
きっと気配隠蔽能力が素晴らしいんだよね!なんてったって元Bランクの冒険者だし!
うん。不可抗力だ。
「そんなに心配しなくても大丈夫よ?言いふらしたりしないし、報酬もちゃんと支払うわ」
いつものゆるふわ笑顔が黒く見えたのは私だけではないはずだ。
「うちのテッドも大概だけど、ユーリちゃんはそれ以上ね。山の向こう側は青龍様の領域だから、他に住んでる人はいなかったでしょうし、家族だけで苦労したのね」
「ええ…まあ。何でも自分たちだけでやらないといけなかったので、私が山を越えられるようになるまではみんなにも苦労をかけてしまいました」
「エメルさんは新しいお母さんなんでしょう?大丈夫なの?」
「大丈夫です」
「ユーリちゃんにとってはお友達のお母さんだけど、テッドと似たような立場でもあるんだから、頼っていいのよ?」
「ごめんなさい…色々黙っていて」
「疑心暗鬼になるのも仕方ないわ。でも、ユーリちゃんはまだ小さいんだから、大人を頼るべきだと思うの。ずっとテッドも言えない秘密を抱えて、辛い思いをさせてしまったわ。本当に、母親失格だわ」
「記憶がある分、私達は変な所は大人なんです。でも心は子供っぽい部分もあって。困っちゃいますよね」
「テッドにも言ったけど、そのままでいいと思うの。テッドにも聞いたけど、以前に経験した記憶なんかは薄れちゃうものなんでしょう?なら普通に、ただ女神様に愛された子でいいと思う。それを妬んだりする人もいるから全ての大人を信じてはいけないと思うけど」
シーナさんは、心の広い人なんだと思う。仮に落ち人だと知れても、態度を変えたりしないと思う。
そんな人の所だからこそ、テッドも転生してきたんだろうな。
炊飯器の魔道具で貰った金額は金貨21枚。しかも水田を作った金額や、案内する金額は別だ。
上の世界の高い炊飯器でもこの金額は貰いすぎかと思うけど、魔道具は高い物だ。
確かに工場とかないから全て手作りになるから、仕方ないのかもしれない。
アルフレッドさんの話によると、シラコメはどろどろに煮てスープのように食べられるか、家畜の餌だそうだ。
王都から南に下った国では栽培されているそうだ。
ここは地図でいうと、半島が伸びた形の端の方なので、隣の国に隣接している訳でもなく、山を隔てた所にある聖域を守るような形になっている。
大陸にはやはり東西南北に四神獣の聖域があって、そこはどこの国も領土を主張してはいけないそうだ。
だからここ、サンタルシア王国でも山向こうは国扱いをしていない。
個人で住むのは別に咎められないが、余計な事をすると天罰が下る。だから誰も住もうとしないのが実情のようだ。
昔々、治外法権なのをいいことに盗賊が住み着き、そこを根城に悪事を働こうとしたがあっさりと全滅したそうだ。
人が好きで寂しがりやなアオさんがそんな事をするとは思えないけど、余程の事があったんだろうな。




