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テッドの使命

翌朝、テッドがユーリの部屋を覗くともぬけの殻だった。

逃げたか…まあ。その方がいいけど。


テッドは静かに部屋を出た。

「うわ?!寝過ごした!」

「は?!」

テッドは慌てて今閉めた扉を開けると、ユーリがいた。

「お前…さっきいなかったよな?」

「え?見間違いだよ。へへへ」

「…どこで寝てたんだ?」

「その辺?」


「何故に疑問形?そして目が泳いでいるんだ?」

「テッド、ユーリちゃん起きてたなら呼んでって言ったじゃないの。朝ごはんにしましょう」

「あ、おはようございます」

「危機感ゼロかよ」

テッドはボソッと呟いた。

そういう訳じゃないんだけど、テッドがどこまで話すか気になった。


和やかに食事が済んで、テッドに視線が集まる。

「悪いけど、この三人にしてもらえる?」

「かしこまりました」

「母さんは、上の世界って分かるか?」

「ええと、そこにも人の住む世界があって、そこから落ちた人が落ち人と呼ばれているのよね?」

「俺は生まれる前、そこに住んでいたんだ。生まれ変わる前に、アリエール様からこの世界の事を聞いて、落ち人と呼ばれる人を助けて欲しいと頼まれた」

「じゃあ、テッドが誰も知らないような事を知っていたり、馬車を改造できたのも」


「前世の知識だ。…まさか疑われていたなんて思ってなかった」

「いや、普通気がつくと思うけど」

「もしかしたらユーリちゃんもそうなの?」

「ええと…まあ、似たようなものかな?」


「不思議な事もあるものね。生まれる前の事を覚えている人はいないのに」

「覚えてなかったら、助けられないさ」

「うーん。テッドが魔法の天才なのは、お母さんの息子だからと思っていたけど」

「だからとも言えるんじゃないかな。母さんも加護持ちだからこそ、俺も目立つ事もなくいられるわけで。だから俺、母さんの息子で良かったと思っているよ」


「どうして今までは黙っていたの?」

「なんとなくかな。神様に頼まれ事とか、前世は上の世界にいたとか知れるのが怖かった。父さんにも、ちゃんと話すよ」

「そうね。それがいいわ。でもうちはとりあえず子爵位だけど、ユーリちゃんは平民ですものね。テッドと同じなら、アリエール様もその辺考えて下さらなかったのかしら?」


「さあね。早速なんだけど母さん、王都で落ち人が捕まったらしいんだ」

「ライアン君が手紙でそんな事言ってたわね。テッドが助けなきゃいけないの?」

「そうなんだけど、まだディスペルを覚えてないから、無理なんだ」

「当たり前よ!聖魔法でも高位だし、母さんが知ってる冒険者にも使える人はいないんじゃないかしら?」

「エーファ兄さんは使えないかな?」

「たまにふらっと帰ってくるけど、ギルドも転々としてるから、連絡取るのは難しいわね」


「違法奴隷なんだから、訴えて解放できないのかな?」

「ごめんなさいね、ユーリちゃん。主人はエルフだから、王都の貴族からは嫌われているのよ。王様とは高等学生時代の同級生だから、仲はいいけど、だからこそ無理は言えないし」

確かに、利用したら友達じゃないよね。

「とりあえずさ、今は聖魔法を練習するしかないんじゃないかな?」

「お母さんとしては、テッドはもちろんだけどユーリちゃんにも無理はしてほしくないわ。お父さん達もそう言うと思うわよ?」


ムーン達は、私の意思は尊重してくれるけど、結構過保護だからな。私がまだ子供だからっていうのもあるけど。


「とりあえずライアン兄さんには、時々様子を伝えて欲しいって手紙で伝えた」

「そうよね。落ち人は色々魔法も使えたり、スキルもたくさん持っているって聞くけど、レベルは低いらしいし。だからいつ捕えられたかは知らないけど、まだ使えるような強さじゃないと思うから、焦る必要はないと思うわ」


うわ。結構正確に伝わっているんだ?私も弱いうちに町に来てたら危なかったかも?

そうなると、町から遠くに下ろしてもらえてフレイには感謝かな?


ご飯のあとはお買い物。髪も整えてもらった。子供のうちはそんなに長くしないでもいいらしい。却って髪質が変わらないと、ちゃんと長くならないとか。

肩より少し下に切り揃えてもらい、満足だ。


あとは戦闘をしない時に着るワンピースやスカートも買った。

大きいサイズの、モコ位の子が着るワンピースも買ってしまった。何気に私のとお揃いで、サイズ違いだ。顔は似てないけど姉妹のように見られたらいいな。

チャチャにも、髪留めを買って、エメルには髪を纏める道具一式を買って、ムーンには散々考えた挙げ句に新しいブラッシング用のブラシを買った。男の人用の物は難しい。


モチには何を買ったらいいか見当もつかない。性別すら不明だし。多分一番嬉しいのは、私の水魔法だろうな。


それと、やっぱり野菜だ。コーベットより高いのは仕方ないけど、見た事のない野菜も見られた。それと果物も。

鑑定はあとでゆっくりやろう。

「ユーリちゃん、冬はコーベットで過ごさないの?」

「一応前に住んでいた所に戻る予定です。でも雪が溶けたらコーベットにまた行きますね」


「雪が降るまではいるんだろ?」

「降る前に帰るよ」

(だからその前に、テッドが念話を覚えてくれると嬉しい)

「?!い…今のが」

(そう。念話。これからもたまに念話で話すから)

モコ達もそれで念話を覚えたんだから、テッドも覚えられるかもしれない。

ただ、距離が離れすぎていると念話は通じないから、森に戻ったら無理かもしれない。


(ユーリしゃん、テッド君とはパスが繋がってないので、スキルが取れても慣れないうちは遠距離は無理でしゅよ?)

あー。そういうのもあるのか。

(具体的にはどれ位?)

(ユーリしゃんからなら、同じ町にいるなら届くと思いましゅ)

うん。従魔達と同じようには行かないよね。でも、案外悪口なら届いたりして。テッドだし。


あとで実験してみよう、







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