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山へ

テッドには、しばらくこの町を離れる話をした。

「なんだよ!裏切り者!ユーリなら色々手伝ってくれると思ってたのに!」

「テッド、冒険者は一つ所に留まる場合の方が少ないのよ。無茶言わないの」

シーナさんが窘めてくれるけど、テッドはそっぽを向いたままだ。

「そんなに遠くには行かないよ。冬はどこで過ごすかまだ決めてないし。この町に戻るかもしれないよ?」


「ふんっだ。ユーリなんてどこでも行っちゃえ!ばーか」

「バカって言う方がバカなんだからね!」


「ユーリちゃんも…悪い影響与えちゃったかしらね?」

「この位の子供は普通だろう。逆に大人びた対応ばかりされると心配になってしまうからね。昔のテッドみたいに」

「本当に。天才も、一皮剥けば只の子供ね」


「ほら。両親はちゃんとテッドが変だって分かってる」

「変とか言うな。バカ」

「もう…私が出発するまでに魔法訓練のコツを教えてあげようと思ったのに」

「それはやる!」

あー。はいはい。とはいえ、加護持ちのテッドに教えられる事はあんまりないけど。


訓練所まで来て、とりあえずテッドにはモコ愛用の星晶の杖を貸してやる。

「どう?」

試し撃ちをしていたテッドに聞いてみる。

「凄いな。魔法が上手くなったって勘違いしそうだ。…でもこのデザインはないな」

「まあ。ダンジョン産だから変でも仕方ないけど、モコは気に入ってるんだ」


「どこのダンジョンだ?…って、似た効果のある杖が出るとは限らないか」

「そうだね。隠し部屋から出たし」

「ユーリの武器ってブレードディアの角だよな?もしかしてそれも?」

「まあ。ドロップアイテムだね。魔力を流すとかなり切れ味が良くなるから重宝してるよ」

「けどその反りは、使い辛くないか?」

「慣れだよ。それまでは短剣とか槍とか色々使っていたし」


「魔力操作向上の付与さえついていれば武器は何でもいいと思ってたけど、魔力伝導を考えるとやっぱり杖だよな」

「私は却って杖持つと細かい操作ができなくなるタイプだから、要らないけど」

「まあ、この杖はモコみたいな美少女が持ってこそだよな」

「似合わなくて悪かったね」

「いや、ユーリも充分可愛いと思うけど、タイプが違うっていうか…って、何言わせるんだよ!違うぞ!モコの可愛いさはレベルが違うから」


本当に。クイーンキャットだからかな?…あれ。もしまた進化する事があっても顔は変わらないよね?あの可愛いさは消えないよね?身長とかは変わりそうな気がするけど。

そう考えると、エメルは却って小さくなる?身長的には私より小さいけど。

チャチャの例もあるし、大きくなるだけが進化じゃないよね?


あとは、きっかけがあれば魔法を覚える事も話した。黒いアレの事は黙ってたけど。

「これ、空間固定した場所には登れるんだよ?でも力をかけすぎると踏み抜くから気をつけて」

「こんなの何の役に立つんだよ」

「高い所の物を取ったりとか、水の上も歩ける。空も」

「おお!格好いいな。それ!けど目立つだろ」

「それの次が収納庫だから頑張って」

「おお!ついに来るかアイテムボックス!」

「収納庫だってば」


「ユーリは亜空間移動使えるのか?」

「まだだよ」

「覚えても、それだけは知られるなよ?ここは辺境だけど、たまに中央の奴も来る。今の所戦争にはなっていないけど、便利な道具扱いされるのは嫌だからな」

「やっぱりそんな扱いなんだ。だからかな?落ち人が狙われるのは」

「そりゃあそうだろう。一瞬で敵の真後ろに出られたら、戦局は一気に翻る。それか、兵が出払った後の本拠地を狙ったり」


確かに怖いな。でも今の私のステータスは偽装してあるから、鑑定が進化した看破のスキルじゃないと見破れないと思う。


私達は、町を後にした。全員ギルドランクはFからEに上がった。私がランク上がるのが一番遅かったんだけど。

ワンランク位ならすぐに上がる。私みたいに薬草採取が主でも半年かからなかったんだから。


エメルはまっすぐ海へ。私達は山越えだ。

久しぶりに思いっきり体を動かせる!

麓の魔物はそんなに強いのはいない。ロックリザードもこちら側にはいない。

剣を振るいつつ、食用魔物だけ首から下を拾っていく。

倒木だって、ひとっ飛びだ。レベルって凄いな。でも、目一杯走っても、ムーン達が本気で走ったら追いつけないだろうな。

まあ、人が狼と同じスピードで走れる訳ないのさ。


(ちょっと休憩ね)

疲れたからではなく、ある程度貯まった時を狙って解体しないと、後が大変だから。

(ユーリ、ボアがいるから狩ってくる)

ムーンと一緒にモコも走って行った。助かる。モコの収納庫も結構広いけど、感じ的に私のより狭い気がする。

チャチャに手伝ってもらいながら、売れる所は残しておく。


そうだ。川に仕掛ける罠用の肉も取っておかないと。

皮を持ち込んでみんなの防具を作ってもらったんだけど、その時に作るのを見学させてもらった。

本当はだめなんだろうけど、三人分作ってもらったのと、私がまだ子供だから見学させてもらえた。

チャチャ用のは勿論大きめに作ってもらって、後でサイズ自動調節の付与をつけた。

あれ。でもモコはこれから成長期?…まあ。その時は作り直してもいいし。


頂上付近でミノタウロス狩りをして、ボアとその他魔物が入っているモコの収納庫がいっぱいになった。

大物のミノタウロスとボアだけ移して、暗くなるまで狩る。


結界石を置いて、私が夕ごはんを作る間にみんなには解体をしてもらう。

ミノタウロスの角が薬の原料になると知って、今回からは集める事にする。

ギルドに、使える魔物の部位が載っている本があって、私も色々勉強したのだ。


町に行った事は結果的にプラスになったし、学べる所はまだまだある。

ただ冬は、ギルドの仕事が減るから森にいてもいいかもしれない。

宿代がどうのという訳ではなくて、いくら雪が積もっているからといって、部屋に籠りきりもおかしいし、だったら森に帰って素材を集めた方がのびのびとやれる。

今ならまだ大根とか白菜は間に合うかもしれない。あと葱も。


うん。春になったらまた町に行こう。その頃にはみんな人化にも慣れると思うし。


解体の腕前はみんなまだまだだな。人の姿で出来る事を増やすのを今年の冬の目標にしようかな?


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