新しい仲間
ユーリがこの世界に落ちてきて、一ヶ月余りが過ぎた。
住み家の穴も、ずいぶん大きくなった。具体的には四畳半位。
木で作ったベッドの上には、ウルフの皮を敷いて、その上にショッピングで買った布団を敷いてある。
あとはテーブルと椅子。部屋の隅ではもやしを水耕栽培している。
スキルも幾つか覚えた。気配隠蔽と忍び足と回避だ。
魔法の練習はちゃんとしてるけど、やっぱり部屋作りで使っていた土魔法が一番伸びた。
時空魔法は、空間固定を覚えた。これは空間指定で範囲を定めて使うと、仮の足場として使える。
新たな発見としては、魔石を見つけた。三匹目のウルフを解体していた時に偶然、小さな魔石を心臓の近くで発見した。
魚にも魔石はあった。これは本当に小さくて、見つけるのが大変だった。付与魔法で使うのが魔石だからあるだろうとは思っていたけど。
服には付与が付けられなかった。辛うじて皮のブーツに一つだけ。クリーンの付与を付けた。
ミスリルのナイフには、流石に高いだけあってか幾つも付けられそうだけど、今の私には斬撃強化しか付けられない。
素人だから仕方ない。それに付与一つで、魔石一つ使うから、数を集めるのは大変だ。
屑野菜セットの種類が微妙に違ってきている。季節によって採れる野菜が違うのは当たり前だから、それを知ってからは少しずつ多めに買っている。
それと、森でも作れないか実験している。お金はまだ残っているけど有限だし、欲しくなった時に買えなくなるのは嫌だ。
マジックバッグの中に入れておけば腐らないから、多めにあっても問題ない。
3wayタイプのバッグだから、専ら背中に背負っている。
レベルアップもしたけど、鍬の重さにやっと対応できるレベルだ。
まあ、2歳の子供が鍬を振るえるんだから凄い事だろう。
魔法で畑に水をまいて、川の仕掛けを見に行く。
今日は…川エビか。
川エビと言ってもザリガニ位の大きさはある。仕掛けを壊される前で良かった。
殻が硬いので、甲殻の継ぎ目にナイフを入れて、とどめを刺す。
そのまま海の方に行くと、見覚えない大きな何かが落ちている。
あれ…もしかして亀?
魔物の可能性もあるので慎重に近づく。
何故か疲労困憊しているみたい?害はなさそう。殺気が感じられない。
回復魔法と、水魔法をかけてやる。
(ありがとう…まさか人族に助けられるなんて)
え?念話?…モコでさえまだ使えないのに。
(魔力が充分でない時に産卵したから、体が怠かったのよ)
(なら、気が付けて良かった)
(念話…いや、テイマーなら、こんなに小さくても使えるものなのかしら?)
(テイマー…一応そうなるのか。うちの子はまだ喋れないけど)
(あなたの水魔法は美味しかったわ。良かったら契約しない?)
(いいの?…なら、エメルはどう?)
綺麗な緑色の甲羅から取ってみた。
(エメル、いい名前ね)
エメル(12)
グリーントータス
レベル 48
水魔法 風魔法 突進 カバー 産卵
ダイビング 爪攻撃 噛みつき 浮遊
「浮遊って、飛べるの?」
(飛べるわよ?亀だもの)
エメルはふわっと浮き上がる。
そういえば、怪獣映画では亀も飛んでいたっけなー。
そして産卵もスキルなんだ。面白い。
(陸にいられないこともないけど、私は海が好き。まずはユーリの家を教えて)
家という程の物ではないけど。
エメルはふわりと浮きあがる。くるくる回ったりはしないらしい。
エメルをモコ達に紹介した。エメルはスラ達用の水を貯めた大きな深皿に入り、水を飲む。
そういえばスラ達も、川の水より私の水魔法の水を好むんだよね。
(いい所ね。海もいいけどここも素敵。ね、魚は好き?エビや蟹も探してあげる)
(う、うん。急にどうしたの?)
(負けていられないもの!私が一番役に立つ所を見せてあげるわ!)
「うにゃ、にゃー!」
モコも負けたくないみたいだけど、私はどっちも大好きだよ?
スラ達にはそういう対抗心みたいな物はないようだ。
新しい仲間が増えた。私も頑張って強くなろう。