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ミスリルとアオ

 コウモリの羽は、単体では使えないけど麻痺毒からも回復させるポーションの材料になるみたいだ。

 蜂の羽は装飾品に加工されるらしい。確かにキラキラして綺麗だ。

 

 残念ながらホットケーキミックスは買えなかった。まあ、ただ小麦粉と蜜を混ぜた物に蜂蜜をかけても美味しいけど。

 

 15階層は戦闘に忙しい階層だから、狙って狩るのも難しい。一人では無理だろうな。

 

 従魔達には肉じゃなかったのが微妙に不満ぽい。

 まあそれは、17階層あたりに期待するしかない。


 畑の方は順調だ。水田の方も。考えて、二期作に挑戦してみる事にした。

 理由は勿論小麦粉の方が圧倒的に安いからだ。

 パスタは来年でもいいかな。これ以上田んぼや畑を増やしても面倒見切れないっていうのもある。

 もうすぐ4歳児と、人化に慣れないモコの微妙な手伝いでは賄いきれない。

 それでも畝の上部以外の草を食べてくれるスライム達のお陰で、ものすごく楽していられる。感謝だ。

 モコはちょっと飽きっぽいし。


 今日は、アオさんの所に行こうと思う。お留守番のみんなの食事も用意したし、お土産用のご飯も色々と作ってみた。

 

 ムーンに麓まで送ってもらい、ダメージを受けているムーンにもふもふする。

(無茶はしないでって言ったのに)

(本当は、最後まで付いて行きたいんだけどな)

 魔法による治癒よりも、これがムーン的には一番らしい。

(ちゃんと離れてて。私の気配がしても歩けるんだから、本当に無理しちゃだめだよ?)

(分かった)


 離れて行くムーンを見送り、私とフレイは聖域の澄んだ空気の中を歩く。

 外では見られない花々を見たり、ハイポーション用の薬草も採る。

 

 空間魔法の精度も上がったから、採掘も前より効率良くできる。


 午前中いっぱい採掘して、草の上でお弁当を広げると、やっぱりアオさんが来た。

「久しぶり。ユーリ、フレイ」

「また銀の採掘に来ちゃいました。どうぞ」

 アオさんは、遠慮なく私の隣に座る。

「へえ。海の物があるね」

「エメルに協力してもらってるんです。本当は昆布狙いなんですけど、なかなか見つからなくて海草サラダにしたんです」


「コンブ…コンブー?だったら海にはないよ?」

「ええっ!…でもコンブー?がどこかにあるって事ですか?」

「湖だね。あれは海水の中では育たないから」

「えええ…」

「まあ、上の世界とは違う所も色々とあるからね」

「それは分かってますけど…」

 私の常識、ここでは非常識なのか。

「森の湖にはあると思うよ?あの中なら安心だから、探してみたら?」

 そっか。魔物が近寄れないって事は、中に魔物もいないって事だもんね。呼吸補助の魔法も覚えたし、じきに暑くなるから行ってみよう。


「上の世界では虫も食べるんだね」

「カニとかエビは虫じゃないです!」

「確かに、美味しいよ」

 アオさんは苦笑しながらも茶碗蒸しを食べた。


「蜂蜜…随分深くまで潜れるようになったんだね」

「あれ?ダンジョンの事知ってるんですか?」

「まあ…ね。けど、いくら従魔達が強くても、無理はしないで」

「それ程無理はしてませんよ」

「してるよ。ユーリ位の子供は、ダンジョンに潜って戦ったりしないから」

「私はその…食料確保の為に」


「そうだろうけど。…まあ、止めても無駄か」

「そうですね」

 俗に言う、味を占めたというやつだ。

「ならせめて、その防具を貸して」

 皮のベストを脱いで渡すと、アオさんは細かくチェックしているみたいだ。

「その膝当てもね」

 うーん?素人が作った物だから出来は悪いけど、アーマードボアの皮だからそこそこいいもののはずだ。

 少なくとも転んで膝を擦り剥く事がなくなった。


「ついでに武器も」

 …?まあ、いいけど。アオさんは物作り系の神様みたいなものだし。

 双剣と、槍を出す。ダメ出ししてくれるのかな?とはいえ、私の鍛冶のレベルでは精一杯な物だけど。

「ブレードディアの角か…こんなに反ってて使い辛くはない?」

「結構慣れましたね。本当はもう少し反りを無くしたいですけど、魔鉄と違って加工が難しいんです」

「槍の先も、変わった形をしているね。でも切る事もできそうだから、これはこれで」


 アオさんは収納庫からインゴットを取り出して、鍛冶のスキルを使っているみたいだけど…えええっ!


 ミスリルと思われるそれがユーリが作った武器、防具一式に変わり、それが見かけ上は元の皮製に変わったのだ。

 ううん…違う。偽装の付与が付いただけだ。


「着けてみて。元のより大きめには作ったけど、ちゃんと自動調節されるか見たいから」

 

 凄い。私が作った物よりもしっかりフィットしてる。これが素人と玄人の違いか。

 ミスリルには全く見えないけど、ミスリルなんだよね。

「ユーリ以外には見抜けない。それはただの皮製の鎧にしか見えないよ。それを着て、死なないで」

「私…こんなにしてもらっても何も返せませんよ?」

「私はただ、気に入った隣人に死んで欲しくないだけだよ」


 双剣も、反りが少し矯正されている。そして重さは変わらないけどミスリル製だ。

「勿論数年もすれば体は大きくなると思うけど、その頃にはユーリも自分で作れるようになると思うし」

 そうだろうか?第一ミスリルがない。

「ミスリルはね、銀に魔力を浸透させれば変化するよ。過去の落ち人はそれを売って儲けすぎた人もいたけど」

 そうなのか。確かにミスリルは、漢字で書くと神銀だから。

「最初は豆粒位から試してみるといいよ。ただし、魔力切れには充分に気をつけて?ユーリはまだ小さいからね」


 体と心のギャップが埋まるのは20年以上も先だ。気が遠くなるな。

「変に記憶がしっかりしてると辛いなぁ…ちょっと最近、幼児退行している所もあるけど」

「まあ、それは落ち人共通の悩みだね」

「でも、子供だったからアオさんに会えたなら、それはそれで嬉しいかな」

 アオさんは、となりのト○ロみたいな存在なのかも?

「大人になったらアオさんは、見えなくなっちゃったり?」

「何それ?…まあ、ユーリ次第としか言えないけどね」


 それがどんな事を指すのか分からないけど、会えなくなるのは淋しいから、綺麗な魔力ではあるように心がけようと思う。

 

「ああそうだ。これはお土産ね」

 渡してくれた袋の中には、苺がたくさん入っていた。

「えっ…早くないですか?」

「まあ私は、リリアナ様の加護を得ているからね」

 そうか…同じ育成系だから。


「じゃあ、お土産のお返しです。後で食べて下さい」

 ユーリは、クッキーの入った袋を渡した。…考えてみれば時空魔法位使えるよね。日持ちとか考えないで、もっと持ってくれば良かったな。

「ありがとう。でもそんなに気を使わなくてもいいよ」

「美味しいって言ってもらえるのは嬉しいですから」

「そう。ならありがたく貰うよ。…うん香りだけで美味しそうだね」

「普通ですよ。私位の料理の腕前の人なんてそれこそたくさんいるし。珍しい料理ではあるかもしれませんけど」

「まあ。そうだね。とりあえずご馳走様。また銀が足りなくなったらおいで。ベリーを摘みに来てもいいし」

「ありがとうございます。じゃあ、また」


 きっとムーンが首を長くして待っているはずだから。





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