ユーリのライバル?
ユーリは、やっと田植えを終わらせて、体を起こした。
モコは種まきは手伝ってくれても田植えは手伝ってくれなかった。
まあ、猫だから仕方ない。
(ユーリ、終わった?)
腰を伸ばして叩いている姿は、子供に見えない。
ユーリはリフレッシュをかけて疲れをとった。
(ピュアはボクがかけてあげるよ)
この手の汚れはクリーンで充分だけど、聖魔法使えるのに光魔法が使えないのは却って不便だな。
(お昼は乾めんでいい?)
リフレッシュで体の疲れはとれても精神的な疲れはとれない。
転んで苗をだめにしないように頑張っていたのだ。
(何でもいいよ)
つゆも簡単にアジタケとアオナを入れて煮た。そこに煮出しておいた出汁を入れる。
一々取るのが面倒だからだけど、収納庫があればこそだ。
早く昆布も欲しいな。
お昼ができる頃、ムーンとチャチャが戻ってきた。
(うわ…ムーン、大物だね)
虎のような熊のような…。
鑑定 タイガーベアー 肉質は硬く、食用向きではないが、皮は高級品
うん。社長が部屋に敷いてそうだね。
(ムーン、皮は売っていい?)
(もふもふしてたから持ってきただけだ。主の好きにするといい)
(手触りは確かにいいけど、高級品みたいだから。人の世界はお金が必要だから)
(役に立つならそれでいい)
(それにもふもふならムーンとモコがいるからね!)
ムーンのもふもふは、太陽の香りだ。
(チャチャもありがとう。キノコは助かるよ。これだけあればまたピザが焼けるね!)
(やった!ピザ!)
昼食後、ユーリは川に罠を仕掛けに行く事にした。
タイガーベアーの肉は、餌に丁度いい。
どうせまた奴に切られているだろうけど、今回は秘策を用意したのさ。
ふっふっふ。蜘蛛の糸で作った罠だ!勿論ドロップアイテムの強いやつだ。
強いし細いから簡単には切れないだろう。そして絡まる。
もう奴は罠の場所が分かっているから、絶対に引っかかる。そしたらお仕置きしてやる!
(ユーリ…何か怖いよ)
(今度こそ奴を仕留めるの!見てよこの繊細な罠!)
(………ユーリはあの虫に随分執念を燃やしてるね)
何かすごい間。モコにはこの悔しさが分からないのかな。
川にかけられた罠は全て切られている。まあ予想通りだ。
ユーリは同じ場所に糸の罠を仕掛けて、離れた所に通常の罠を張る。
ふっふっふ。ザリビーめ。今日こそ年貢の納め時だよ!
そのまま海岸に行く。
(じゃあモコ、アサリの方はお願いね!)
ユーリはテングサを採る。
できればゼラチンも欲しいけど、作り方知らないしな。
確かゼラチンは動物性なんだよね。
作り方を知らないといえば生クリームもだ。乳製品だから、牛乳をどうにかするのだと思うけど、バターとフレッシュチーズの作り方位しか知らない。
スマホがあればな…まあ、電波届かないだろうし、充電もできないだろうけど。
落ちた時に流石にスマホはなくなっていた。スマホの代わりがステータスボードなのかな。買い物できるし。
みんな持ってるんだから違うか。
「?!うわっ!」
岩場から足を滑らせて落ちた。まだ春だから厚手の上着を着ている。
これじゃ泳げない!脱がないと…その前に酸素!
『補助魔法 呼吸補助を覚えました』
ええっ?…とにかく呼吸!
魔法を使うと、自分からオーラみたいのが伸びて、海の外に出た感じだ。
とにかく助かった。初の補助魔法がこんな形で手に入るとは思わなかったけど。
とにかく薄着になって、海から出る。
(ユーリ!大丈夫?)
「げほっ…平気。何か呼吸補助って魔法覚えたから」
(ボクは泳げないからどうしようもなくて)
とにかく寒いから、自分と収納庫に仕舞った上着にもクリーンとドライをかけて、着替えた。
(うう…ボクはユーリの護衛だったのに何も出来なくてごめんなさい)
(大丈夫だよ。私がドジやったせいだから)
それじゃなくても子供は頭が重いから、重心バランスが悪い。
次からは充分に気をつけよう。
モコの集めてくれたアサリを手に入れて、戻りがてら罠をチェックする。
何と!糸の罠は引きちぎられていた。奴にそんな力があるとは思えないから、別の何かかもしれない。
罠はまた作り直そう。残念ながら他の罠にはまだ何もかかっていなかったので、また後日見に来よう。
糸の罠は複数作るべきかな。




