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色々と上手く行かない

 あれからひと休みして、草の上に寝転がったユーリは、そのまま寝てしまった。


 ユーリしゃんは、疲れているんでしゅね…。

 聖域に近い居心地良い場所で、緊張の糸が切れてしまったのかもしれない。

 ユーリを亜空間に入れて、フレイはため息をつく。


 ユーリしゃんは、頑張り過ぎなんでしゅよ。

 でも頑張らせ過ぎている責任の一端は自分にもある。

 ていうかほとんどフレイのせいだ。

 こんな僻地に落としさえしなければ、孤児として教会に引き取られていたかもしれない。

 一度落とした地から移動させることはできない。

 もっと責めてもいいはずなのに、こうして側に置いてくれている。

 甘えすぎ。自分が担当した落ち人で生きているのは、ユーリしかいない。

 再生が下手、というより、慌ててしまってこの前のあの人は、生かす事ができなかった。

 

 蘇らせる事は不可能なので、呆然としていたら、時空妖精の地位を剥奪されて、野良妖精になってしまった。

 ユーリも損傷が酷かったけど、上手くやれば大人の一歩手前位の年齢に抑えられたはずだったけど、失敗した。


 一度失敗すると余計に慌てて次々とミスを犯す。自分の悪い癖だ。


 フレイは、アオからもらったベリーを一つ食べた。

 実は全く食べられない訳じゃない。ただ、こんな風に聖なる力が宿った物しか食べられないから、ユーリには言わなかった。

 全く食べなくてもユーリの魔力があれば存在を維持できるし、こんな事を言ったら優しいユーリはここから離れなくなるかもしれない。


 時空妖精だった自分が、担当した落ち人の自由を奪っちゃいけない。


「う…ん?」

「皮しか敷いてましぇんけど、体は痛くないでしゅか?」

「あ…寝ちゃったんだね。私」

「もう朝になりましゅ」

「あ、どうりでお腹空いたと思った」

 ユーリは、フレイに亜空間の扉を開いてもらい、外に出た。

(ごめんね、ムーン。寝ちゃってた)

(銀は充分集まったのか?)

(うん、多分。また何回か来るかもしれないけど、一旦戻るよ)

(そうか。無事で何よりだ)

 

 ユーリは少しベリーをつまむ。凄く美味しい。加工するのが勿体ない位。

 ベリーのケーキは焼くけど、あとはみんなで分けっこしよう。

 

 清流の流れる小川で顔を洗って水を飲んだ。ミネラルウォーターみたいで美味しい。水魔法の水は、なんというか味気ない。

 私の魔力の味がするからみんな美味しいって言うけど、自分じゃ分からないものなのかもしれない。


 帰りがてら採取して、ムーンの所に戻った。

 いっぱい舐められた。心配だったらしい。

(少し、魔力の質が変わったか?)

(え?そうなの?中では水を飲んでベリーをちょっと食べたから?)

(いい香りがする。主の香りが変わった)

(ベリーの香りじゃない?はい、これ)

(…む!これは…そのままでは食えぬな)

(料理しなきゃだめって事?)

(そうだな。魔物には辛い)

 そっか。残念だな。ジャムにでもしようかな?


 ムーンの背中に乗って戻ると、みんな揃ってた。エメルまでいる。

(聖域に行ったと聞いて驚いたわ。大丈夫みたいね)

(銀を採りに行っただけだって)

 アオの事は言わない方がいいかな?余計に心配させそうだ。

(大丈夫だよ。フレイもいたし)

(だから余計に心配なんじゃない)

 あ、そんなはっきりと。

(妖精は神聖な物を好むから、放っておいたら聖域を侵しそうだわ)

 なるほど。


 ベリーのケーキは生クリームなしのパウンドケーキだ。

 何がどう変わったのか分からないけど、みんな喜んで食べた。

 山菜も生で食べる物はないので、問題なしだけど、この辺に生えていた方が美味しいらしい。

 私は全く味の違いは分からない。


「ねえ、人化のスキルは簡単には覚えられないの?」

 人の姿なら、収穫も手伝ってもらえる。

「無理でしゅよ。ユーリしゃん。進化して格が上がれば将来的には可能かもしれましぇんが、そう簡単には無理でしゅよ」

 だよね。この先町に行って、人だと思ってたら魔物だったとか怖いし、覚える条件も良く分からないもんね。

(それに、人化したら多分弱くなる。それを望む魔物は少ないと思う)

 そうか。爪攻撃とか出来なくなるよね。


 魔道具作りは、冬の間、何も出来なくなるから、その時に作る事にする。秋の今は、やる事が多すぎる。

(チャチャ、栗の場所は教えて貰えないの?)

(ユーリには危険。私が採ってくる)

 チャチャには危険じゃないのかな?

(チャチャなりの考えがあるんだろうさ。俺は狩りに出掛ける)

(ボクも連れてって)

(なら私達は、川の方に行きましょう?罠の確認もしなきゃ。ね?)

 そうだった。また奴に罠を壊されていなきゃいいけど。

 

 罠にかかっているのはウナギ?やった!

(ユーリ待ちなさい!ちゃんと鑑定して!)


 鑑定 ブラックイール 噛みつき、相手の血を吸い尽くす。肉は美味


 怖!ダークアローを当てて罠ごと破壊した。

 見た目に騙された。ウナギそっくりなんだもん。

 あれ。でも美味しいってあった。ちょっと失敗した。

 

 もう一度罠を作り直す。…!奴だ!


 鑑定 ザリビー 鋭いハサミに注意。可食部は殆どない


 ああ。鑑定している間に、また罠を切られた。けど今度は逃がさない!何度も罠を壊された恨み、晴らしてやる!

 ユーリは槍で突き刺す。が、するりと抜けられた。濁った水に紛れて逃げられた。


 いつかこの恨み、晴らす!


(魚なら、私がいっぱい採ってきたから機嫌なおして。こんな時もあるわよ)

 まあ、自分の運の悪さを思えば仕方ない事なんだよね。


 特に男運は最悪だし。…はあ。フレイには運を良くしてもらえば良かった。

 運なんて良くなるかどうかは分からないけどね。




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