採掘と不思議な青年
畑仕事はスラ達にお願いして、銀鉱石を探しに行く事にした。
ムーンがかなりぎりぎりまで送ってくれたので、かなり距離が稼げた。
(ありがとう、ムーン。戻ったら美味しいご飯とブラッシングするね)
(期待している。魔物の心配はないと思うが、聖域だけは気をつけるんだぞ)
(大丈夫。フレイがついてるから)
しっかりもふもふして、ムーンと別れた。ムーンは家には戻らずに居てくれるらしいから、さっさと用事を終わらせないと。
霊山の近くにいるだけで、清浄な空気が流れているのを感じる。
魔物に荒らされないためか、質の良い薬草や魔力の籠もった山菜があちこちに見られる。
根付くかは分からないけど、ハイポーション用の薬草は、根が付いたままコップに移して収納庫に仕舞う。
「フレイ、銀鉱石が採れる所はここから遠いの?」
「そうでもないでしゅよ。ムーンしゃんが頑張ってくれたので」
最後の方は苦しそうだった。結界石とは全く違う感じ。
私にとっては居心地良く感じても、従魔達には辛いんだろな。
フレイについて行くと、岩肌が剥き出しになっていて、抉れた場所があった。
誰かが採掘した後なのかも。ツルハシを使って掘ると、それらしき鉱石が出てきた。
試しに練成してみると、ちゃんと銀を含んでいた。
「ユーリしゃん、ここを掘って下しゃい」
フレイが指し示した場所を掘ると、明らかにさっきとは違う鉱石が出てきた。練成するとやはり適当に掘った物よりも銀の含有量が違う。
「凄い。フレイには分かるんだね」
「ユーリしゃんも空間把握を使って下しゃい。違うと思いましゅよ」
むう。範囲が広いと難しいのさ。でも時空魔法は最近収納庫位しか使ってないから、練習の為にも頑張ろう。
それにしても、3歳の子供に採掘は厳しいのよ。幼稚園児が砂場遊びしてるんじゃないんだから、いくらレベルで力が上がっているとはいえ、辛い。
あれ。もしかしたらブレードディアの角をツルハシに加工したら、サクサク行くかも?
うーん。材料が足りないな。シャベルで先端だけブレードディアの角を使って…。
うん。力もそんなに要らないし、サクサク掘れる。
傍から見たら土遊びしてる子供だな。フレイしかいないけど。
練成は後回しにして、ひたすら掘っている。もういいかな?
ていうかお腹空いた。ひと休みしよう。
フレイはご飯が食べられないから、一人で食べる。ちょっと寂しい。
突然、後ろの茂みがガサガサと揺れ、青い髪の青年が現れた。
「やあ、可愛いお客人達」
「…へ?」
とても綺麗な人だ。
「あ…こんにちは。良かったら食べます?」
「本当?嬉しいな。うん。やはり落ち人の作る料理は美味しいな」
「ぐ…ゴホゴホ!え、ちょっと待って下さいよ!私は別に…」
「ああ。心配しないで。別に誰にも言い触らしたりしない。ここは忘れられた地だからね」
「はぁ…そんな所であなたは何を?」
「何をって…僕はここに住んでいるからね。君とはご近所かな?」
「あ…私はユーリです」
「僕は…そうだね。アオでいい。後ろの小さい子は?」
「見えるんですか…?フレイが」
「フレイと言うんだね?怖がらなくていい」
「あ…あのあの!私達聖域は侵してましぇんよね?」
「うん。大丈夫だよ。人を見るのも随分久しぶりでね。だから興味が湧いた」
「人?…アオさんは人じゃないんですか?」
「ふふふっ。ユーリには僕が人に見えるんだね?」
「あ、あの!ユーリしゃんは常識に疎くて、素直だから…」
それって褒めてないよね?常識はフレイが入れ間違えたからだし。
「それにしても、銀をそんなにたくさん。何に使うんだい?」
「魔道具を作りたいんです。エアコンとか…えっと、空気を冷やす物とか」
「なるほど。けど亜空間なら涼しいんじゃないかな?」
そう言ってアオは、フレイを見る。
「あー。フレイに頼りすぎも良くないと思って…フレイは事情があってしばらくの間一緒に居るだけなので」
「ふうん?とりあえず、ユーリが色々作ってくれるなら、それはこの世界にもあることになるからね。長い目で見れば発展に繋がる。それを分かっていない人々は、落ち人をただ便利な存在として使い潰す。本当に愚かだ」
この綺麗な人は、人じゃないらしい。でも人の姿で言葉を喋り、第三者の視線で世界を見ている。
不思議な人。
ご飯が終わったら、アオがたくさんのベリーをくれた。
「美味しい!これってこの辺に生えてるんですか?」
「そうだね。鳥系魔物に荒らされないからたくさんあるよ。ね、また遊びにおいでよ。今度はベリーを摘みにおいで。案内するから」
「本当?嬉しい!ならこれでベリーのケーキを焼いてきますね!」
「それは楽しみだ」
アオは、ふっと消えた。空を見上げると、青い筋が山に昇っていくのが見えた。
「ね、フレイ。アオさんはもしかしたら四神獣の青龍なの?」
「もしかしなくてもそうでしゅよ!ユーリしゃんは分かっててあんな風に普通に話してたんでしゅか?」
「ううん。途中でもしかしたらとは思ったけど、話に聞いてたより怖い存在じゃないみたいだったから」
「うう…野心を持って近づく者には怖い存在でしゅけど、ユーリしゃんは…気に入られたみたいでしゅね」
「誰も来なくて寂しかったとか?」
「…ユーリしゃんは色んな意味で大物なのか、何も考えていないのか分かりましぇんね」
「失敬な!色々考えているよ!バランスのいい食事とか、魔道具でどんな物が作れるかとか!」
エアコンは欲しいよね。あとはフードプロセッサー的な物が作れれば楽だなとか。
現状私しか料理を作れる人がいないのに、みんなよく食べるから大変なのさ。




