モチの進化とテッドの告白
モチが縮んだー!
巨大サイズのモチが、抱える位になっている。
モチ(ー)
レベル 107
メタルエンジェルスライム
スキル
水魔法 聖魔法 重力魔法 ジャンプ 飛翔
体当たり 分体 成分分析 薬液精製 変形
擬態 結界 超音波 暴食 悪食 森羅万象
見習い神ユーリの加護
ぷにぷにな羽根…えっと、これで飛べるって事?どう見ても体の一部だよね?
「因みに擬態って?」
モチの体が大きさもそっくりに私になった!ちょっと待って!
慌ててワンピースを出してモチに被せる。
私そっくりの体とか勘弁して欲しい。
「主の姿!嬉しい!」
そりゃ、モチには嬉しいかな?
「…っ!何だよ…モチのステータス、俺も見たかったのに」
「駄目だよ?ステータスは冒険者の生命線なんだから」
「モチは冒険者じゃないだろう…まあ、いいけど、従魔のステータスまで弾けるのか」
「眷属だからかな?」
多分、従魔の頃なら気がつかなかった。まあ…今は特に見られたくない。
ていうか、加護が森羅万象になっている。調べてみると、妄想も含まれているみたいだけど。
「うーん。でもちょっと残念。モチベッド、気持ち良かったのに」
「変形!」
おお!メタルキングスライムの姿になったよ。モチは次々と姿を変える。メタルスライム、ノーマルスライム、スラミーやすあまの姿にもなれるみたいだ。懐かしい。
「あとモチ、飛べるの?」
げ、あの小さな羽根で飛んでるよ。エンジェルスライムはそれなりにずっしり重いのに。
まあ、亀が飛ぶ時点で色々な法則は無視しまくっている。モチには一応羽根もあるし、変ではないかな?
「あれって一応羽根なのか?体が一部変形しただけに見えるけど」
「エンジェルっていう位だし、羽根で飛んでもいいんじゃないの?」
気になるのは年齢表示も無くなっていた事。エメルみたいに不死って訳じゃないみたいだけど。
天使の輪はない。メタル色だし、天使って感じじゃないけど、それはそれで格好いい。というか、この大きさだと枕に見えてくる。
モチの羽根は収納可能なようだ。この辺は変形のスキルかな?
「変形で他に何か出来る?」
モチはテーブルの上にあったコップを体の一部を伸ばして取ってみせた。
「おー。ロングハンドみたいだな」
ちょっとだけ触手みたいだと思ってしまったのは内緒だ。
仕方ないじゃん?私の補助魔法は触手なんだから。
それにロングハンドは1本しか出せないみたいだけど、触手は何本も出せる。開き直ってもう、便利だからいいじやん?と思うようにしたし。
「戦いたい」
うーん。まあ、いいか。殆ど戦闘経験がないのにレベルだけは100を超えてしまった。
モチは伸ばした触手を鞭のようにしならせてビッグコッコを仕留める。以前とは戦い方が変わっている。モチも色々試したいのだろう。飛んで潰したり、刃物に変形して刺したり、バリエーション豊かだ。
酸や毒を飛ばしたりもしている。多分、魔力量も随分増えたんじゃないかな?
この前もここには来てたから、鶏肉が随分増えたな。
エメルがイカも沢山採って来たから、合わせて唐揚げを沢山作ろう。
冬の間はここには冒険者は全く来ない。だからこそモチにも好きに冒険させてあげられるんだけど、たまには例外もある。
ダンジョンから出て来た冒険者を見て、お互いにあっと声を上げる。
「ユーリちゃん」
「リナさん、会えて良かった。実は話したい事があって」
「そういえばテッド君もそんな事言ってたわね?もう一人の彼は新しいメンバー?」
「いえ。あの時もいましたよ?まあ…成長期ですからね」
さすがに進化したとは言えない。
亜空間で上の世界に行ける事を教えたら、物凄く行きたがった。
今回は眷属達は連れて行かないけど、テッドは行きたがった。
上の世界で窮屈な思いしてるよりも、ここでのんびりしてた方が絶対いい。モコが亜空間移動も使えるから、どこにでも行けるし。
「でも私、時空魔法極めたのに界を越える魔法は覚えられなかったわ?」
「加護とかも関係してるんですかね?」
「ユーリ、何焦ってるんだ?」
「べ、別に?」
ユーリの奴、絶対に何か重要な秘密隠してるな?…言いたくないみたいだから追及はしないけど、嘘が下手だな。
リナさんにはエメルの服を貸した。胸が若干きつそうだけど、ほぼ問題ない。
換金と移動で1日。テッドは本屋に行ったし、私は折角だから趣味の時間にしよう。
スナック菓子と炭酸ジュースを買って、ひたすら見て森羅万象に記憶させる。
ああ…これも原作買わなきゃだね。
(ユーリ?おい、ユーリ!開けてくれよ!)
いけない!時間をすっかり忘れてたよ。
亜空間を開けると、テッドしかいない。やばい。リナさんは?
「テッド、リナさんの居場所分かる?」
「えええ…こんなに人が多い所で無理言うなよ。お前の田舎じゃないんだぞ?」
「一言多いってば。時間を忘れてた私も悪いんだけどね」
今の私なら探せない事もない。テッドみたいな受信機はなくても、リナさんはこの世界には殆どない魔力を持ってるからね。
「テッド、こっち」
「は?分かるのか?」
「魔力感知だってば。…え」
一軒の家の中から強い魔力を感じる。
「どう…する?」
「親とか血縁者、親しい人なら思い出す可能性があるけど…駄目って言ったのに」
とにかく、呼び戻さないと!
(リナさん!出て来て下さい!)
しばらく待っていると、リナさんが出て来た。
「ユーリちゃん…あのね、両親が私の事を思い出してくれて…このままここにいたら、だめ…かな?」
「それは、駄目です。初めに言いましたよね?姿を見るだけって」
「でも…!私は一人娘で、このままだと、両親が年老いた時に、誰も面倒を見る人もいないし、私も親孝行したい…」
「それでも、駄目なんです。私が連れて来た事で変に期待持たせちゃったのは申し訳ないと思いますけど…」
「でも!ユーリちゃんもご両親に」
「いません。お母さんはそもそも落ちる前に亡くなってますし、父は…小さい頃に離婚してから会ってませんし」
「なら、テッド君は」
「俺は転生だから、今の両親が本当の親だし」
「ええと…それなら諦めもつくでしょうけど、私は」
「それでも駄目なんです。リナさんの魂は既にミルドラに所属しているんです。ご両親の記憶は…リナさんが戻ればまた消えます」
「そんな…あの、でもまた来れば?」
「思い出さないのが普通なんです。…ごめんなさい。ぬか喜びさせてしまって」
「ううん!凄く嬉しくて…そこは本当に感謝してるの!あの…一晩だけ。明日には戻る…じゃ、駄目かしら?」
「明日には綺麗さっぱり忘れたとしてもですか?」
「そう…よね。自己満足にしかならない…」
「ごめんなさい…でも、違う世界の人に必要以上に関わるのも、魔法やスキルの技を見せるのも、罪になるから」
「謝らないで、悪いのは私。戻るわ」
亜空間に戻ってリナさんが眠ったのを見て、ほっと一息つく。
「下に戻らないのか?」
「テッド…まだ起きてたの?本なら私の亜空間から出さない限り大丈夫だよ?」
「うん…まあ。…お前はちゃんと言ったんだし、関わってしまったのはユーリのせいじゃない。だろ?」
「ううん…もっと慎重を期すべきだった。私の魔法で連れて来た以上、私の責任だよ」
シャンドラ様に怒られちゃうかなー?…じゃなくて、アリエール様か。良かれと思ってした事だったけど、監督責任を果たしていなかった。テッドやマイクさんが何もしなかったから油断してたのかも。
「ユーリ、最近本当に、おかしいよ。何があったんだ?」
「まあ…個人的に色々とね」
「俺は何も手伝えないのか?困ってる事があるなら本当に言って欲しい」
「私には眷属達もいるから大丈夫だよ?」
「俺は!…俺には何も出来ないってのか?」
「テッドには関係ない事だよ。友達として心配してくれるのは嬉しいけどさ」
「違う!俺は力になりたいんだ!」
「…ありが、とう?でも」
「でもって言うなよ!好きだから、大切に思ってるから!」
…は?
「は?とか思ってるだろ。嘘じゃないぞ!」
「え?いつの間にそんな恋愛イベントが?てか、私はライバルじゃなかったの?」
聞いてないよー!いや、言ってないだろうけど。まさに青天の霹靂。
「それは昔の話だろ?もうすぐ出会って七年。気持ちだって変わるよ」
「一応聞くけど、貴族のお嬢さんに相手にされなかったから近場で手を打とうとか考えている訳じゃなくて?」
「そんな訳ないだろ」
…ですか。本気なんだろうな。それ位は恋愛経験値がそんなにない私にも分かる。
お子様だと思っていたテッドにまさかの不意打ちを食らうとは思っても見なかった。
でも本気なら、私も誠実に答えないと。




