趣味に走る
やっぱり下の世界に帰る方が魔力も少なくて済むみたいだ。
でも…疲れた。魔力が回復しない環境というのは思ったよりも疲れる物みたいだ。
モチにマッサージチェアーになってもらい、首周りに超音波をかけてもらうと凄く気持ちいい。
眷属達は元気だ。そして、買い物以外では殆ど亜空間から出なかったテッドにも、疲れはあまり見られない。
魔晶石だけじゃ足りなかっただろう。魔宝石、作れて良かった。
均一ショップのケンゴさんは、行きたがらなかった。
何十年も過ごしていて、家庭も持っていたら未練もなくなるのかもしれない。
リナさんはどこにいるか分からない。会えたらでいいと思う。
マイクさんは是非にと言われたので、雇い主であるアルフレッドさんに許可を貰った。
魔法を使わなくても魔素が周囲にない環境になるから、マイクさんにも魔晶石を渡した。
今回はそんなに魔力を使わないと思うけど、私も魔力の準備は怠らない。
それに今回は実験したい事がある。だからテッドにはここに残って欲しかったんだけど、明確な理由を提示出来ないままでそれをする事は出来ない。
そしてまた、変な所で勘がいいんだよね…別行動、取ればいいかな?
界を越える時には強いイメージ力が必要だから、出る先はどうしてもアパート前になる。ただそこからは亜空間移動を普通に使えるから、東京で換金してマイクさんに滞在費を渡した。
「お前…円で渡してどうするんだよ?」
「…あ!」
うっかりしていた。下の世界は金貨、銀貨、銅貨に模様も何もないから各国共通だった。
あれ?とすると私はムーンに乗ってだけど普通に外国旅行してたのか。
街道に国境はあるけどムーンに乗って移動する時は街道なんて通らないから実感なかった。
銀行でドルに換金して、テッドと、モコを護衛に置いて別れた。
夜には合流するつもりだけど、数日なら離れていても問題はない。
迷子札の魔道具は使えなかったから、誰かに付いていてもらうしかない。
そうして、マイクさんにもチャチャに付いていてもらう事にした。
私にも用事がある。叔父さんが管理していてくれたと思うけど、お母さんのお墓参りと、おばあちゃんの安否確認。
お母さんに見えたらどこかの知らない子供がお墓参りに来たと思うのかな?おじいちゃんも。
手作りのぼた餅を置いて手を合わせた。
墓石に新しい名前は刻まれていない。
「お母さん、また来るね」
おばあちゃんの家と田んぼ、畑も更地になっていた、
引っ越したのかな?叔父さんが面倒見てるのかな?
それならそれでいい。見知らぬ私が訪ねて行く訳にもいかないけど、元気で生きてるなら…それでいい。
感傷に浸る時間は終わりだ。近所のスーパーで買い物をして、亜空間に戻る。
野良女神になってから、眷属の能力を使う事が出来るようになった。
モチの成分解析の能力と、私の看破の能力を合わせてカレールーを解析する。
エメルの叡知の力も併せて、私の物質創造でカレールーを作った。
これじゃ駄目だ。私が覚えていられないと。エメルの叡知の力に、私の力を併せ持つ事が出来たら…!
そう。検索が出来たら。
『スキル 森羅万象を得ました』
うわ…マジっすか。
OK〇〇とか言わなくても知識を引き出せる。そして、このスキルは他の様々なスキルと相性がいい。
多重思考や創造魔法。私の知識も森羅万象に統合出来る。
統合した事によって私の思考は超速になった。予見とあわせれば戦いでも今までの比じゃない位の動きが出来るだろう。
あれ…私、こんなにチートキャラだった?
てか、カレールーを作る為にこんな凄いスキルを得るなんて前代未聞?
まあ、私らしいかも。だって納豆を集める為に聖魔法を極めちゃった位だし。
「玄武様から頂いた加護の力が役に立ったのかしら?」
「え…!どうして分かったの?」
「だって私は、ユーリの眷属よ?それに実際に加護を得たのは私だし」
固有能力に森羅万象が増えた。私の妄想とも非常に相性がいいし、森羅万象があるなら妄想も悪くはない?
カレールーを作るので随分魔力を使ってしまった。
まあ、今回だけだ。後から既存の物を作るのにはそんなに魔力は使わない。
後の解析は下の世界に行ってからでもいいかな。
もう一つやりたかった事は、面白そうなビデオを見まくる事。一度見てしまえば補助魔法でいつでも再生出来るので、レンタルだ。
ここからは完全に趣味の時間だ。なので眷属達が暇になってしまうからモチ以外は自由にしててもらっても良かったんだけど、私の側にいてくれた。
ムーンにもたれながら、大画面テレビで再生する。
えへへ…ときめきが止まらない。勿論全て森羅万象に記憶した。
能力の無駄遣い?そんなの人によって価値はそれぞれじゃん?
「うは…神作品だ。原作も欲しいな」
「それはいいけど、そろそろモコとチャチャの近くに移動して、どうするか聞いてみたら?」
「ユーリ…凄く嬉しそう?」
「えへへ。後で説明するね?」
「娘は成人して、結婚していました…時が経つのは速いですね。妻は再婚したようで、明日、一目だけでも姿を見られたらと思っています」
マイクさんが落ちて、どれだけの時間が経ったかは分からない。でも大切な人の無事が確認出来ただけでも良かった。
モコ達は今夜はホテルに泊まるようだ。子供だけでも泊まれるか心配だったけど、顔を見せなくても泊まれる所…モコと二人で!
何もないよね!私が妄想するような事は!本人達に…特にテッドに知られたら激怒されそうだ。
マイクさんにも部屋は仕切ってある。ここは客室にしようかと思っている。
テッドのスペースとはまた別で、いい感じの家具を揃えてある。
リナさんが上の世界に行きたいって言ったら客室に泊まってもらえるからね。
冒険者だし、亜空間移動も使えるリナさんを見つけるのは、ギルドの掲示板を利用させてもらおうかな。
次の日は、マイクさんの護衛はエメルに代わってもらった。
チャチャにはカレーを作ってもらう。中辛のカレールーなので、辛みを増量出来るパウダーも分析して、造り出した。
野菜も下の世界の物だし、肉はオーク肉だ。
私の分には味見して、少しだけすりおろしたリンゴを入れた。
チャチャは辛くして、満足そうに食べた。
夜にはみんな集まるからまたカレーだけど、続けて食べても美味しい。
私は当然、また趣味時間だ。
「ユーリ…テレビなんか買っても電力はどうしてたんだ?」
「魔法で代用した」
「本当に器用だよな…」
「まあ、ビデオ見てただけだし。さすがに家電は持ち込めないから自重するよ」
「なあ…亜空間から出さなければ下にも持って行けるんだよな?」
「大丈夫だけど、自重してよ?」
「お前が言うか?」
「これはコレクションを増やす為に必要なんだよ」
「コレクションて…何だ?」
「内緒」
これは私だけの宝物。妄想は私にとって活力になるものだ。
ああ…またオタクに走れるなんて、思ってもみなかった。
ここはもう私の生きる世界じゃないから異世界になるのか…でも異世界最高!




