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テッドの気持ち

テッド視点です

あれから半年後。妹も無事に生まれ、俺も地獄のような特訓の末に身に付けたダンス諸々を実践で使う時が来た。

正式な物ではない。プレデビューって感じだ。けど上の世界と違って、特に貴族の結婚年齢は早い。

だから二十歳過ぎてから結婚したライアン兄さんは遅い方だ。


久しぶりの長距離馬車移動。ユーリがいれば亜空間移動で一瞬だけど、俺は亜空間を覚えるので精一杯だった。

その生活に慣れていたから、馬車での移動が酷くもどかしい。

「どうされましたか?」

「暇」

「成る程。でしたらマナーの…」

「や、やっぱり暇じゃない!ほら、魔物を探知していないとな!」

慌ててキースの言葉を遮ったけど、護衛もいるし、メイドの中にレイシアもいる。

俺の活躍の場はないな。


本来なら父さんも来るはずだったけど、ライアン兄さんの婚礼も迫っているし、母さんは動けない。


この園遊会で婚約が決まったりする事もあるけど、俺はもう冒険者として生きると決めている。


やっと王都か…亜空間で眠れたからゆっくりはできたけど、身体の節々が痛い。

この反応は、あいつか…。今回は、会うつもりはない。

ユーリの使えるあの透明になる補助魔法。俺も使えれば何とか…いや、亜空間移動も使えないと意味ないな。


あちこち連れて行って貰ったお陰で俺もかなり実力が付いた。とはいえ、どう足掻いてもあいつには敵わないんだよな。

この園遊会が終わったら迎えに…来てくれるのかな?


あのパーティーは強すぎだ。俺が入っても助けになる所か、足手まといにしかなれないだろうな。

でもきっとユーリは迎えに来るだろう。あいつはそういう奴だ。

だからって全てにおいてお荷物になるつもりはない。


宿に入った所で懐かしい顔を見つけた。

「お久し振りです、テッド様」

「ああ。ボルドか」

こいつは俺と違って長男だからな。いずれはライアン兄さんの下でリロルを任される事になるんだろう。

だから中等学校にも行って、槍の鍛練にも力を入れていると聞いた。領主代行となる者が全く戦えないのは問題があるからな。


ていうか、身長伸びたな。

「ライアン様が戻って来られたそうですね」

「まあ、じゃないとライアン兄さんの事だからズルズルと騎士を続けてそうだからな」

むしろ良かったと思う。父さんがずっと領主でいる訳にはいかない。例えそれだけの寿命があって、いつまでも現役でいられるとしても。


初日はまず、お茶会からだ。こういう服は、肩が凝るな。女子はもっと大変だろう。

日焼けなど全く無縁の白い肌。必要以上に細く見せてる様は具合でも悪いんじゃないかと心配になる位。

努力は認めるけど、魅力は全く感じない。どんなに華やかに飾り立てても、張り付けたような笑顔が怖い。

ユーリがたまに見せる食欲に走った笑顔の方が不気味だけどましだな。


お菓子も凝ってるなー?ん。旨い。ユーリが作る庶民的なお菓子も旨いけど。王都に売ってるのかな?土産に買ってやろうかな。お洒落なアクセサリーより、食べ物の方が絶対喜ぶし。


って、さっきからあいつの事ばかり。ミスしないように集中しないと。


でもなー。みんな同じに見えるっていうか、似たような話ばかり。

「お久し振りです、テッド様」

誰だっけ…ああ。セリカだ。あのぶっ飛んだ性格は直したみたいだ。

魔眼が封じられたから、男子にちやほやされる事もなくなって、流石に現実を見たか。

「どうか、あの頃の事はご内密に」

「言うつもりはない」

小声で言い合って、セリカはほっと息をつく。


下手に前世の記憶があると厄介だよな。俺も忘れられなくて、未だに苦労してる。

20年は経っている訳だし、色々変わっただろう。その変わった世界を見てみたいな。

見られる訳ないか。


日を変えての園遊会。この日は国王の挨拶もある。主役は俺達10歳の子供だけど、家族の参加もある。

挨拶をするように言われていた人をさっさと見つけて回ると、あとは自由…って訳にも行かないんだよな。逆もあるから。

兄さん達の母さんだった人の親族とも少し話したら、あとは終わりかな…


兄さん達と違って血は繋がってないけど、従兄弟に当たる女の子がいたのでダンスに誘う。

自分から誘ったのはその子位で、あとは適当に相手した。

勿論同じ相手とは踊らない。俺の方に気があると思われても困るからな。


義務は果たせたんじゃないかと思う。何かの間違いで気に入られてその手の話が来ても父さんに断ってもらうつもりだし。


別に女の子が嫌いって訳じゃない。高校、大学と彼女がいた事もあったし。

けれど勤めだしてからは…。システム開発の仕事ははっきり言ってブラックだ。山場になれば家に帰れない事もザラだから、精々が商売のお姉さんを相手にするのが関の山。

たった一秒を削る為に胃潰瘍になった事もあった。

そして大概の休みはツーリングに消えてしまう。


単に縁がなかった。まあ、特に不自由を感じた事もなかったし。


お金という形でしか親孝行はできなかったから、今の両親には出来る限り親孝行はしたい。まあ、父さんは俺よりきっと長生きだし、出来る事は少なそうだけど。


果実水を飲みながらぼんやり考えていたら、いつの間にか目の前に女の子が立っていた。

誘われるままに一曲踊り、ホールの壁際へ移動したら、何故かついてきた。

「ええと…?」

「お忘れですの?三度目ですのに。ハリエッタ ラングルですわ」

あー…見分け付かなくなってたから失念してたな。

ラングル…子爵令嬢だな。そこの長女で…婿狙いか?


「申し訳ない。地方に住んでいるから社交界には疎くて」

「いいえ。テッド様はまだ決まった方はいらっしゃらないようですので、こうしてお声掛けさせて頂きましたの」

一瞬だけ別の顔が浮かんだのは何かの間違いだろう。

「申し訳ないのだが、お…私は冒険者として身を立てて行こうと思っているので」

「悪い話ではないと思いますのよ?伯爵様の領地に比べたら全然ですが、狭いとはいえ領地には鉱山もありますの」


使命は生き方を制限される物ではないと、転生の時に言われてはいるけど、婿入りなんてしたら、旅は出来なくなる。

それに、俺は…

いやいや、何考えてんだ、俺。

「イグニタス伯爵様に、文は送らさせて頂きます。では、わたくしはこれで」


父さんも母さんも確かに貴族にならないならとユーリを薦められた事もあったし、特にユーリは母さんのお気に入りだけど…


今まではそういう対象として見た事はなかったと思う。多分。

いや…こんな風に考える時点で意識してるのか?俺は。


うーん。あいつは嫌がるかな?もふもふの方がいいと言われかねないな…

まだ10歳な訳だし、そんなの考えるのは早いよな!



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