新しい力とメロン
オレンジを食べながら、先程手に入れた力を試してみる。
魔力のみで造り出した肉串。この程度なら、中級魔法一回分かな?
味は普通の肉串だ。
「ど、どうしたの?みんな」
大した物を食べている訳じゃないのに、眷属のみんなが凄い勢いで見てる。
「そ…それは」
「みんなも食べる?」
凄い勢いで頷くので、みんなにもオーク肉の串焼きを創造で作る。
(これ、只のオークじゃないわよね?収納庫から出してないし!)
(幸せの味)
(ユーリの魔力の味だよー!)
(うむ…串まで旨い)
いや、串は捨ててよムーン。みんな凄い喜びようだな…私の魔力は美味しいって事か。
私が落とした串もダンジョンに呑み込まれてしまった。
それにしても、凄いスキルだ。こんな物が簡単に出るはずがない。
神様…かな?でもお礼は貰ったし。
「ユーリ、階段を見付けた。どうする?」
「うん。行こうか」
一応明日、教会に行ってみよう。まだ忙しいかもしれないけどね。
18階層、出てきた魔物はサンダーウルフ…は、いいんだけど、問題はこの階層。
フロアー全体に微弱?な電流が流れていて、金属の武器も防具も使えない。
勿論魔物も雷魔法を使う。どうもダンジョンには途中、人の侵入を拒むフロアーがある気がする。
通れない事はない。動きは阻害されても結界を張って無理やり行く事も出来る。でも折角だから権限て物を使ってみよう。
権限はソイズダンジョンだけじゃなくて、他のダンジョンでも使える。
まあ、罠を停止するだけだ。そして、その間にフロアーを抜ける。他の冒険者が入ってきたら終了だ。
だから魔物を倒しながら一気に階段まで走る!スピードが求められるから、結界も邪魔だ。雷魔法は、発動させる前にマジックブレイクで打ち消す。
ちょっと卑怯なやり方だけど、階段までの最短距離も探してしまう。冒険してる気がしなくなるから今回だけだ。
額に生えてる角がそのままドロップアイテムになる。混ぜ込めば雷耐性の付いた防具が作れるだろう。
19階層に着いた!魔物はストーンパペット。ゴーレムではないらしい。
ミスリルの刃なら欠けずに攻撃できる。硬いから倒すのが大変だけど、桃を落とした!こんな硬い魔物から柔らかい桃が出てくるなんて驚きだけど、これは店頭には並ばないだろう。
動きが奇妙な所がパペットだと思うけど、予見を持っているから、惑わされない。
本能で動いているムーン達も大丈夫みたいだ。まあ、私が大丈夫なんだから全然平気だと思うけどね。
明日はボス戦だ。こんなに沢山のフルーツが採れるダンジョンは貴重だな。
亜空間に戻って、ふとアオさんに借りた物を思い出した。
一応外で使った方がいいだろう。モチには辛いかもしれないし。
握ってお祈りしてみた。
(結果はまだ出ないんだけど、ごめんねー?無事にお礼は渡ったようね?時空妖精のフレイに渡したんだけど、忘れていたみたいで)
(え?お礼は蛇君じゃなくて?)
(やあねー!そんな訳ないじゃない。野良でもミルドラ所属の女神として認めたのよ?今はゴタゴタしてるから時間がある時にちゃんと説明してあげるわ。それまでは好きにしてて。いい子でいてね?)
いや、まあ好きに生きてますけど。このスキルがお礼だったんだ。
フレイがお礼を忘れたのはある意味お約束だ。相変わらずだな。
魔力さえあれば何でも作り出せる。食べ物だけじゃなくてミスリルなんかの金属も。想像で創造する訳だ。ちゃんと想像できないとだめみたいだから、難しい物は無理。
野良女神になって、知る事も出来る事も増えた。
界を越えるのは人のままでは無理みたいだ。でも眷属のみんなとか、他の人を連れて行く事は出来る。
ただ、上の世界では魔力の回復がされない。魔晶石を沢山作るか、いい機会だから魔宝石に挑戦してみるのもいいかな。
でも、生活パターンを大きく変える事はないと思う。
たまに眷属達に料理を創造しても、ダンジョンには行くし、料理もする。
自分で造り出した物を食べるって、気分的にかなり微妙。
亜空間に戻って、用意してくれたぶた玉を食べて、デザートに桃を食べる。懐かしい味だ。
モチにいつもあげてる水を、水魔法じゃなくて創造スキルで出してみた。
凄く喜んで、あっという間に器が空になった。
「ボクもユーリが作った水、欲しいよ」
「水でいいの?ジュースとかも出せるよ?」
「水でいいよ!ユーリが大変になったら嫌だもん」
そんなに大変でもないけどね。みんなも欲しそうだったから、それぞれのコップに出したらやっぱり凄く喜んでいた。
試しに自分のコップにも出して飲んでみたけど、味は変わらない。水魔法と同じ味だ。
魔石を魔晶石に加工していく。前よりも確実に魔晶石を作れるようになった。
今度は魔晶石同士を合わせる…慎重に。
やった!…初めての成功だ。
輝きは本物の宝石みたいだ。大きさはかなり小さくなった。理屈は分からないけど、こういう物なのだろう。
どれ位の魔力を貯められるか、早速実験だ。
す…凄い。倍どころじゃない。うっかり魔力切れを起こす所だった。
トレントの実を食べながら、のんびりと魔力の回復を待つ。
魔宝石を使えば魔術具と呼ばれる凄い物を作る事も可能だけど、燃料面だけじゃなくて、本体を作る技術もないとね。
今の所作りたい物もないし、もっと高度な魔道具の勉強もしないと。
まずはこの魔宝石を量産する所からかな。界を越えても魔法を使えるように。
その前に時空魔法を極める所からかな。…地道に頑張ろう。
次の日、ボスはオーガとハイオーガだ。エメルが一人で戦いたいと言ったので、任せてみたら圧勝してた。
宝箱だ。中身は…包丁?何故かミスリル製だ。普段使ってる包丁もミスリルで作った物だけど、こっちのはナイフに近い。果物ナイフだね。
凄いな。ここまで拘るなんて。
21階層は、グランドトータス。そのドロップアイテムは…メロンだ!しかも皮に網目の入った高級なやつ!
たまに違う種類のメロンも落とす。果肉が青いやつだ。
「えへへ…」
(今日はここで止まるわね)
(うむ…少し肉の在庫が心許ないから狩りにも行きたい所だが)
そうだっけ?…ああ。蛇君はまだ残ってるけど、普段使いする分がちょっと少ないかな。
あの変な奴の討伐の時に何匹か狩ったけど、モチ以外はみんな体が大きくなったから、量も増えた。かくいう私も最近はちょっと増えてるけど、微々たるものだ。
流石にみんながお腹いっぱいになる料理は毎回は無理だ。焼き肉なら別だけど、いつの間にか私の料理がおかずになっている。
みんなにはお腹いっぱい食べてもらいたい。ダンジョンだとどうしても一部になってしまうから、これから暫くは狩りにしようかな。




