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山の調査と懐かしい妖精

いつもよりはみんなに多めのポーションを持たせて出発だ。

町の北門には揃いの鎧を着た兵士達が物々しい雰囲気で警戒に当たっている。

私も鎧姿だからか、昨日みたいに首を傾げられる事もない。


まあ、大きなグリーンアナコンダに私がサクッととどめを刺したら驚いていたけど。

血抜きは後回しにして収納庫に仕舞ったら更に驚いていたけど、ギルドにも明かしている事だし、少ないとはいえ時空属性を使える人はいるし、別にいい。


それにしても、人は見かけじゃないな。私が言うのも何だけど、ゴツくてザ、筋肉みたいな人がソルジャーオークに苦戦してたり、見た目は小さな小人族の人が振り返ったら大人の顔だったり…それは偏見か。


平地から山の麓に着く頃にはそれなりに強い魔物がいた。ヘルハウンドなんて、絶対平地にはいない。というか、この程度の魔素の濃さだと、南とそう変わらない。

山の麓は割と魔素が濃い。元からなのかは分からないけど、急に濃くなったりとかはないだろう。

上に昇るにつれ、魔素も濃くなっていく。まあ、この程度ならコーベットの東の山と変わらない位かな?

「おいあんたら!子連れで行くのは危険だ!」

「これでも一人前の冒険者だ。心配は不要だ」

猫耳お姉さんは怪我をしているみたいだ。

「本当に大丈夫だよ?」

言いながら、キュアをかけてやる。

「ああ、済まない。回復魔法の使い手がいるなら何とかなるものなのか?」


首を傾げて考えてるけど、戻るなら今のうちだと思う。

「今、ギルドにはポーションも売ってますよ?」

「本当か!有難い」

回復手段がないのは辛いよね。


富士山、とまではいかないけど、それなりに高い山だと思う。休みなく登ったつもりだけど、頂上はまだ先だというのに、暗くなり始めた。

「ふむ…何やら大物が居そうな気配だな」

「分かるの?じゃあそれが原因?」

「ユーリ、透明になる魔法をかけてくれるか?俺が飛んで行って見てこよう」

「私が超感覚で見るよ。夜は魔物も活性化するから危険だし」


ベッドに横たわり、軽く目を閉じる。ムーンのいう大物というのは分からなかったけど、むしろ見た感じ、魔物が見えない。

ただ見ただけだと分からないんだな。超感覚は視界だけを拡張するものだから。


「見つからないけど、明日にしよう?」

「そうだな。睡眠は大切だ」

私にとってはって事だろうけど、せめて成長期が終わるまでは夜はしっかり寝たい。例え睡眠耐性があったとしてもね。


翌朝、ご飯を食べて蜂蜜入りホットミルクを飲んでまったりしていたら、懐かしい声が聞こえた。

(ユーリしゃん、フレイでしゅ。開けてくだしゃい)


(ええっ?!本当にフレイ?)

急いで亜空間を開けると、フレイが飛び込んできた。

「ユーリしゃん!ううっ…懐かしいでしゅ…ぐすん」

「ああ…泣かないで。また何かあったの?」

「こ、これは嬉し泣きなのでしゅ!」

「そっか…本当に久しぶりだね。一人前にはなれたの?」

フレイはそっと目を反らした。

不味い事聞いたかな?

「二度目の場合は、難しくなるみたいなのでしゅ…シャンドラ様は、とても厳しい方なのでしゅ」

「でも、だったらどうして来れたの?」


「今回は特別なのでしゅ。この地に現れた邪悪な魔物の回収でしゅ」

「フレイが倒すの?」

「お礼を預かっているので、お願いしましゅ!」

うーん?魔物は倒して欲しいけど、死体は回収するって事かな?

「でも、私達もギルドの仕事で来てて。証拠がいると思うんだけど?」

「代わりになりそうな魔物の死体は持って来てましゅ…だからお願いなのでしゅ!」


「分かったよ。どっちにせよ何か強そうなのがいるみたいだし、頑張るよ。みんな、そろそろ行こう!」


そういえば、フレイは誰に回収を頼まれたのかな?シャンドラ様?

まあいいや。やる事は一緒だ。


近づくにつれて異様な気配を感じた。本当に魔物?

狼のような魔物で、毛は漆黒。背には蝙蝠のような翼が生えている。どうやら食事中だったようで、食べていたのはキングボア。

ただ…おかしな事に、その魔物は看破出来なかった。

看破 @+g7m?-

正体不明?こんな事もあるのか。


眷属達は、魔物の姿に戻っている。確かに、少しも油断出来ない。


木々がなぎ倒されているので視界は良好。まあ、あの気配を間違える訳ないし、他の魔物の姿も何故かない。


(ユーリしゃん、他の人は近づかないようにしたので、安心して戦ってくだしゃい)

それはいいんだけど、硬くて素早い。まあ、背中の翼で飛ぶ様子はないので、そこは安心だけど。


うげ!ブレスまで吐くんだ!エメルがカバーしきれなかった左手が、焼け落ちた。

悲鳴は辛うじて飲み込んだ。ただ、その後に綺麗な手が生えてきて、驚いた。

欠損箇所を治せる魔法は覚えているけど、実際使った事はなくて、その光景は神秘的というより異様だ。

(ユーリ、大丈夫?)

(平気。生えてきた。だからエメルは気にしないで)


それでもエメルが凄く後悔している気持ちが伝わってくる。

自分でも気を付けなきゃだめだ。

お返しにムーンが吐いたブレスは、翼をはためかせると、進路を反らされた。

ムーンの爪攻撃、からの背後に回ったチャチャの神速の拳。

けど、見えない力に弾かれた。反対に飛ばされるチャチャ。ムーンは反撃に爪でざっくりとやられた。モコが素早く回復魔法をかける。


剣先から伸ばしたダークソードで、片翼を切り落とす事に成功したが、怒り狂った魔物が私に向かってくる!

エメルがカバーするけど、逆に甲羅を噛み砕かれた。

「エメル!」

(大丈夫だから!ユーリは奴に集中して!)

怒りで目の前がくらくらする。

攻撃魔法は弾かれたけど、ダークソードは辛うじて通じた。だけど闇に対する耐性が高いと感じた。

なら、ホーリーを打ち込むんじゃなくて、剣の先に…

「ホーリーソード!」

出来る気がしたので、やったら出来た!


くっ…奴がブレスを放つ方が速い!エメルが治り切らない甲羅でカバーする。

お陰で奴にとどめを刺す事は出来たけど…

「エメル!」

エクストラキュアに、蘇生の力も込める。生えてきた甲羅は、虹色に輝いた。

奴を回収する前に、フレイはイビルバイパーの死骸を出した。長さは10メートル超えで、太さも直径でユーリの身長を超えている。


看破 イビルバイパーの死骸 蛇系魔物の最上位種。その全てが素材になり、肉は至高の美味


脳を分断されたその死骸をユーリは収納庫にしまった。

「じゃあ、こっちは貰うのでしゅ」

(ユーリ…酷く怠いわ。影に入れて)

エメルは…ええっ?存在進化中って…甲羅が変になっちゃったから?魔法のかけ方が悪かったかな…どうしよう。

「エメル、大丈夫かな」

飛ばされたチャチャも自分で傷を治して戻ってきた。

影の中にいるエメルの様子を見る方法はないのかな?エメルのパスを通して…


エメルと、感覚の同調が出来る。良かった…大丈夫みたい。

「ユーリしゃん、眷属のみなしゃん、本当にありがとうございましゅ」

「それで、その魔物はどうするの?」

「シャンドラ様を通して、多分アリエール様の所に行くと思うのでしゅ。詳しい事は分からないでしゅ」

じゃあ、教会で…ああっ!思い出したよ。お礼を言いたかったんだっけ。


「ユーリ?どうして落ち込んでいるの?」

「ん…改めて私って…迂闊だなって」

「?良く分からんが、ユーリは食べ物が絡むと視野が狭くなるな」

「ボクはそんなユーリもいいと思うな。だってユーリが完璧過ぎたら、息が詰まりそう」

「ユーリの妄想癖は、見ていてほっこりする」

いやあぁ…!身も蓋もないよ…



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