雪の日に
本格的に寒くなってきた。
けど、おかしいな?私は秋産まれだったはずなのに、年齢表示が変わらない。
一々日付は確認していなかったけど、もう誕生日は過ぎたはずだ。
思ったより1年の時間が短いのか、それとももしかしたら、この世界に落ちた日が私の誕生日になったのか。
そっちの方が可能性は高いかな?新しく生まれ変わったようなものだし。
ていうと…7月1日か。確か。うん。落ちた日はそうだけど、次の日にはなってる可能性もあるけど。
落ちた時には夜だったけど、目を覚ましたのは昼間だったから。
燃焼石はまだ見つけられていない。火魔法で充分に熱した石を鉢の中に入れている。金網があれば餅位焼けそうだ。
チャチャとモコは、私の湯たんぽ代わり。チャチャには毛布は要らないみたいだけど、背中にチャチャがいて、モコを抱きしめて寝れば全然寒くない。
なので私が寝ていたベッドはエメルに提供した。たまにしか泊まっていかないけど、来てくれれば嬉しいから、いいんだ。
あ、別に海産物が目当てじゃないよ?エメルも私の料理を目当てに来てる訳じゃないみたいだしね。
チャチャに、冬眠しなくていいのか聞いてみたら、冬眠自体が分からないっぽい。
熊ではなく、熊の魔物だからいいんだろうか?まあ、魔物がたくさんいる世界だから、気軽に冬眠してたら春までには死んじゃうかもしれないけどね。
早くチャチャともおしゃべりしたいな。
ドアは木で一応作ったけど、それだけだと隙間風が入りまくる。
土魔法で塞いだので、出入りする度に魔法で隙間を埋めている。
自然と不要不急の外出は避けるようになって、肉も減ってくる。
冬の間は、秋に伐採しておいた木を使って足りていなかった食器や、細々とした物を作る予定だし、できればお風呂も作りたい。
冬は魔物の数も減るそうなので、肉はダンジョン頼みだ。
冬にだけ見られる魔物もいるそうだけど、見ないでいい。
冬はなるべく動かないというのが常識のようだけど、たまにはダンジョンに行かないと食料的に困る。
エメルは冬に入る少し前に来て、今もずっといる。海の水も冷たいんだろうな。
いよいよ肉も残り僅かとなってきたので、今日はダンジョンに行く事にした。
皮の後ろにモコの毛を裏打ちしたコートも着たし、大丈夫!
扉を開けたら一面の銀世界でびっくりした。
しかもかなり積もっている。私一人じゃ埋もれそうだ。
チャチャが先頭に立って歩いてくれて、私はその後ろを歩く。
エメルはふよふよ浮いているし、モコはダンジョンに着くまで私の影の中だ。
先方で、真っ白い毛並みの狼と熊が争っている。始めは互角だった戦いも、狼がふらつきだしたので、熊の方が勝ちそうだけど、熊は私達に気がついた。
(エメル!チャチャ!襲ってくるよ!)
ユーリは槍を構えるが、まずは援護にまわる。
見るだけで相手が麻痺するのだから活用しない手はない。
腕が四本ある熊の動きがぎこちなくなる。チャチャよりも遙かに巨大で強そうな熊だけど、チャチャの爪攻撃で少しずつ傷を増やしている。
避けた所に、エメルの風魔法が肉を削る。ユーリも隙を見て風魔法を打ち込む。
(ユーリ!)
ユーリは、思い切り熊に槍を突き立てた。
一気にレベルが三つも上がった事から、相当強い魔物だったのだろう。
鑑定 キラーグリズリーの死骸 肉は硬く食用には向かないが、皮は高級品
私達の方が弱そうに見えたんだろうな。狼の方は、うずくまっている。
「グルル…」
抵抗する力はないようだ。もふもふでつややかな毛並みは血で汚れている。
ユーリは、最近覚えた聖魔法で、傷口を塞ぐ。
(お腹が空いているんだね)
ユーリは収納庫から鶏の照り焼きを出して、狼の前に置く。
訝しがっていた狼だが、本当にお腹が空いていたので、素直に肉を食べた。
「もしよかったら、私の従魔にならない?」
尻尾がゆっくりと揺れている。
「名前は、ムーン」
月のように怜悧な印象と、青いムーンライトの宝石のような瞳が印象的だった。
(あら、餌付けしたの?ユーリ)
餌付けって…。まあ、その通りかも。
改めてハイヒールで体力を回復してあげて、リカバリーで癒してあげる。
(あとはゆで卵位しかないんだよね)
一応出してあげると、時々雪を食べながら、美味しそうに食べていた。
(影の中で休んでる?中にはモコもいるけど、仲良くしてね)
ムーン(10)
雪狼
レベル 71
スキル
雷魔法 氷魔法 水魔法 噛みつき 爪攻撃
立体機動 ソニックウェーブ 夜目 咆哮
嗅覚強化 状態異常耐性
うわ。結構強い子だったんだ。まあ、あのキラーグリズリーと互角に戦っていたからね。
今は私の中で安心して眠っている。うん。新しいもふもふの為にも頑張ろう。




