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テッドとの一時的な別れ?

夕飯の時にその話をしたら、何故か生暖かく笑われた。

「さすがは我が主」

「ユーリは欲がないね」

「私なら、蜂蜜酒がずっと出てもいいわ」

「…まあ、普通は宝石とか財宝だよな…発想がユーリらしくていいけど」

まあ、テッドの言う事にも一理ある。だけどいざという時、食べられる物の方が絶対役に立つよね?


「でも米もいいじゃん?」

「今はユーリのお陰で米がいつでも食べられるからな…ユーリが米を持って来る前だったら喉から手が出る程欲しいけど」


だけど実際ここにあるのは無限緑豆箱だ。米じゃない。

「売れ…ないよね?」

「どうせならそこから研究して、せめて米が出る物じゃないとな」

ぐぬぬ…悔しい。


こぼした緑豆だけでかなりの量がある。当分は緑豆もやしになりそうだ。

「よし!これなら分解してだめになっても惜しくない!解明して米が出る宝箱を作る!」

「…まあ、ユーリならそれでいいんだろうな」


基盤は多分底だろうな…ちょっと勿体ないけど、分解したい。…あああ…分解する為に逆さまにしたら緑豆がまたこぼれた…モチ?食べてもいいけどそれは種だからね?


てか、基盤が見当たらない。燃料の魔石もないし…辛うじて時空魔法の力は感じる…種は出るのにタネはない。マジカルでミラクルだ。


研究スペースにしたその一角には、意味のない物から高価な物まで無造作に置かれている。

ここに近寄るのはモチ位だ。下手に片付けると、ユーリが困るので。

がっかりしながら緑豆箱について白い紙に書きつけて、自分が分かる位置に置く。そこは研究不可な物を置くスペースだ。


「モチ~、癒して」

柔らかいモチの身体にもたれて目を閉じると、夜も遅い事もあってすぐに眠くなる。

モチはユーリを落とさないように器用にベッドまで進んだ。

(ありがとう、モチ)

モコはモチからユーリを受け取り、自分の横に寝かせる。

寝ながらもふるユーリに毛布をかけて、眠りについた。


「まさか何も仕掛けがないとはな…」

「本当に、魔法にかけられた気分。一夜の儚い夢だったね」

ダンジョン産のマジックアイテムは人の手で再現出来ない物も多いという。

そんな凄い技術が緑豆が出てくるだけの宝箱にあった訳だ。


フレッシュバター塗ってトースターでカリッと焼いたパンと、蜂蜜を垂らしたホットミルク。今日の朝食だ。

「今日はどうする?」

「俺は一度家に戻ってみようと思う。母さんが心配だし」

順調なら、そろそろ産み月のはずだ。


コーベットの主要街道にも熱量交換のレンガを敷いたみたいで、雪は解けている。

「お帰りなさい、テッド。ユーリちゃんも久しぶりね!」

シーナさんのお腹はかなり大きい。順調そうで何よりだ。

「おー!テッド、逞しくなったな」

「ライアン兄さん!…て事は家を継ぐのか?」

「数年先だな。今は父さんやキースにしごかれてる所だな…騎士に戻りたい…」

「ライアン様?何か言われましたか?お二人共どうぞ中に」

キースさん、目が笑ってないです。


応接間に移動して、ユーリは手土産に羊羮を出した。

「んんー!これも凄く美味しいわね!」

「小豆を甘く煮てゼリーみたいに固めたお菓子です。良かったらレシピは置いていきます」

「そうだね…問題なかったら、テッドも置いてって欲しいな」

「?!父さん…そりゃ、今年の誕生日は早めに戻るように言われてたけど」


今年10歳になる貴族の子供は、王宮で行われる秋の園遊会に招かれる。毎年の恒例行事で、義務だそうだ。

「恥ずかしい所は見せられないからね。マナーやダンス。騎馬訓練も受けてもらうよ?」

「えー!どうせ俺なんて、成人したら爵位返上して平民だろ?!それでもかよ!」

「義務だからね。エーファだって行ったんだから、テッドもね?」

「ぐぬぬ…でもまだ誕生日まで期間はあるから」

「あら?テッドは生まれてくる妹か弟が気にならないの?」


「一通りマナーは教えてきたつもりだけど、そんな言葉使いがボロッと出たら不味い。父さんだけじゃなくて、ライアンにも迷惑がかかるし、ダンスは全くやってこなかったからね」

「け…けど!それが終わったら冒険者に戻ってもいいんだよな?」

「そうだね…どこのお嬢様とも縁が繋がらなかったらね」


どこかの家に婿入りって可能性もある訳だ。

「そんなのはない!俺は冒険者になりたいんだから!」

「じゃあ、ちょっと早いけど契約終了って事ですね?」

「ムーン殿達にも直接お礼が言いたいな」

「お礼だなんて…私達もそれなりに楽しかったですから」

「待てよ!ユーリ…その園遊会とやらが終わったら冒険者に戻るから迎えに来てくれよ!絶対だからな!」


…まあ、どうなってるかは分からないけど、会いには来るようにしよう。

「秋の園遊会って、いつ頃ですか?」

「丁度稲刈りが終わる頃だね。けれどテッド、守ってもらってばかりでは一人前の冒険者とは言えない。特にムーン殿はAランクなんだから、足手纏いは要らないと言われたらおしまいだ」

「そうなのよねー?ギルドは種族関係なしに依頼を持ってくるし」


「…こんな事なら、せめて春まではいたかったな…」

「春までほんの数ヶ月じゃん?あ、荷物も出さないとね」

「大丈夫よ?冒険者用の荷物なんて却って持たせられないもの」

「ベッドとかもありますけど」

「そちらで使ってくれて構わないよ…本当に普段着と私物だけで」


そうか…私の亜空間に入っちゃったら、移動されちゃうかも?って思ってるんだね。

テッドが我が儘言ってもそれはしないけど。


亜空間に入ってテッドの事を話したら、モコはちゃんとお別れを言いたいみたいで、ついてきた。

「テッド…残念だね」

何だかんだでこの二人は仲良しだったからな。まあ…私も少し淋しい。


「秋になったら戻るよ。義務だっていうなら仕方ないさ」

「モコちゃん、凄く大きくなったのね!けれど相変わらず美人ね!」

「男の子は急に大きくなったりするからね…ちょっと成長は早い気がするけど、人族とは少し違うんだろうね。シーナの買った服はもう着られないね?」


「ボクはもう…ひらひらは卒業したいです」

「「そんな淋しい事言わないで!」」

うを、シーナさんとハモってしまった。

「まだ行けるわ!ライアン君みたいに筋肉質じゃないし、冒険に行く時は仕方ないけど、普段着はユーリちゃんとお揃いでいて欲しいわ!折角美人三姉妹なのに!」

「シーナさん!」

「ええ!ユーリちゃん!」


がっしりと両手で握手する私達を見て、テッドは深いため息をついた。

ユーリは…通常運転だな。園遊会の話は初めて聞いた訳じゃないけど、どこか他人事だと思っていた。

エーファ兄さんはエルフだから、参加はしたけどほぼ蚊帳の外だったと聞いた。

俺は中学校にも行く気はないし、早々に独立するつもりだったから、ユーリの存在は渡りに船だった。

ライバルで、目標。…ただ、追い付くのは難しいと感じている。


それなりの身分の家に産まれたのは落ち人だと間違われないようにアリエール様が対策してくれた結果だと思うけど…有難いけど、今は伯爵家の三男だもんな…面倒くさい。



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