テッドの強化
ロッカの町に、テッドも来てもらった。
「いない」
「まあ、そうそういないよね」
「でもこの景色はちょっと感動物だな」
一面に広がる茶畑。各所にある茶職人の家からはなんともいえない香りが漂ってくる。
「今日はどうしたいの?」
「青龍様の近くのダンジョン15階層で、タケノコにリベンジしたい。出来れば一人で」
「…うーん。もしかしてお兄ちゃんになるから焦ってる?」
「そんなんじゃない。いつまでも守られてばかりのお荷物は嫌なんだ」
私も、いつも守られてる。でもお荷物とは感じてない。
テッドは進んで米を採取してくれるし、中距離からの攻撃はテッドしか出来ない。そんなに考え込むような物でもないと思うけどな。
「お荷物だなんて思ってないよ?見切りもまだ覚えてそんなに経ってないし、あそこには複数の魔物が出るから一人はだめ」
「そうだな…足下ばかりに気を取られてたらジャイアントビーにやられるか」
「私…一緒に行こうか?守る方は慣れてないけど、タケノコには手を出さない」
二人だけで行く事にみんな反対したけど、最後には納得してくれた。
「我が儘言ってごめん!けどあれからもレベルは上がっているし、自分に自信を付けたい」
「死なせないし、私は15階層でもやって行けてる。心配はないよ」
「他の冒険者にも、会うかもしれない」
「それは、気をつけなきゃだね」
「俺を影に入れておいた方がいい」
うん。それならいいかな?ムーンは暇になるけど。
15階層。ユーリはタケノコを無視してトレントの実を落とし、そのまま剣に炎を纏って切り倒す。
テッドは地面だけに集中している。本当はそれじゃだめなんだけどね。
タケノコは魔力視を使っても見えないから、些細な変化も見落とさずに動く事が重要。
前よりは良くなってる。けど、真下からの攻撃に弱い。
痛いなんて感じさせる暇もないままに回復してあげる。
ブーツの素材はそんなに特別な物じゃないのも痛いかな。
「…っしゃ!予見覚えたぜ!」
おおー。でも覚えてばかりの頃は通常の視界とダブるから、慣れるまで結構大変なんだよね。
テッドの狙いが定まらない。私が覚えた時はそんなに苦労した覚えはないんだけどな。
「テッド?慣らす時は弱い魔物が相手の方がいいよ?」
「う…ユーリはどれ位で慣れたんだ?」
「右目のお陰であんまり苦労しなかったな。シーナさんとかレイシアさんに聞いてみたら?私じゃ参考にならないよ」
「くっ…もう少しだけ!」
結局その日にテッドが慣れる事はなかった。案外不器用なのかも?
私はスキルがありすぎてどれが有用になってるか分からない。常に発動していても問題ないスキルは発動しっ放しだし。
あとは多重思考かな?
高ランクの魔物を従えるのも、スキルをたくさん取れるのも、アリエール様の加護のお陰。魂に余裕がないと無理な物らしい。私はその加護が二つ付いてるから、スキルもたくさん持ててるし、眷属のみんなが進化しても負担にはならないのだろう。
この先、これ以上の進化があるのかは分からないけど、ちゃんとみんなを支えられるようになりたい。
タケノコのあく抜きもピュアで出来ちゃうから、今日はタケノコご飯にした。
モコとチャチャは山菜を採りに行ってくれてたみたいだ。ちゃんと栗もある。
「そういえば、モコ達は予見のスキルは持っているのか?」
「ないけど、ボク達は魔物だから、そういう感覚は鋭いんだ」
「参考にならなくてごめんなさいね?」
じゃないと、エメルのカバーのスキルは役に立たないよね。
「とりあえずさ、スキルを鍛える所から始めたら?明日はレッドコークにしよう!」
「そうね。変則的な飛び方もするから、見えれば武器が当てられるかも?」
今までテッドは魔法で仕留めていたのだ。
私みたいな短い剣だと空を飛ぶ魔物には物理ダメージを与えるのが難しい。明日はハリネズミの針で仕留めてみようかな?
「まあ…あの鶏肉は美味しいからな」
別に、鶏肉だけが目当てじゃないよ?予見のスキルを安全に鍛えられる所を考えたんだもん。
それに19階層にも進んでみたい。
シタールダンジョン18階層。襲いかかるレッドコークにテッドは苦戦していた。
「無理そうなら魔法使ったら?」
流石に針一本では仕留められない。だから私も魔法を使っている。
…あ、スキルが進化した。命中から、必中になった。確かエーファさんが持ってたスキルだよね…二の矢いらず、だっけ?
高ランクの冒険者は、二つ名が付く事がある。シーナさんは確か、呪い姫…うん。逆らっちゃだめな人だから、ぴったりだね!
魔物を弱体化させるのには便利な魔法だ。
相手の魔物の精神が低ければ、効果はかなり大きい。
てことは、サイクロプスにも効くかな?力押しだけであんまり頭は良くなさそうだ。
考えたら試してみたくなってきた。ホーリーの10本同時発動とかしなくてもやっつけられそうだ。
ムーンのホーリーブレスはホーリーの魔法よりも太いから効果が大きい。けどブレスには溜めが必要だ。
呪いで弱体化しておけば、チャチャやエメルにも手伝ってもらって、通常の戦い方でも行けそうな気がする。
「何だかさ、どっちが通常の視界か分からなくなってくるんだよな」
「そう…なんだ」
「ユーリには分かるのか?」
「うん…右目のお陰かな?多分」
「状況聞くと同情するけど、いい方に転がりまくってチート能力…いいな」
「テッドだって、加護持ちなんだからそういう言い方しないでよ」
「悪い…けど、レベルも全く上げられない人もいたのにな、と思ったら」
マイクさんの事か。会った落ち人の中では一番可哀想。
今はアルフレッドさんの所で元気に頑張っているみたいだけど、上の世界には奥さんも娘さんもいて。未練のない私とは大違いだ。
実の父は生きてるけど、血が繋がっているってだけの他人だ。でなければ、お母さんに少しでも悪いと思っていたなら、墓前に手を合わせてもいいはずだ。
もし何かあって上の世界に行ける事になったらお墓参り位はしたいな。
テッドは違う意味で上に行きたいだろうな。
下から上に行くのは難しいみたいだから、無理だろうけど。
肉も結構集まったな。テッドのスキルを鍛えるのにはもう少し弱い魔物の方がいいかな?
「あんまり根を詰めすぎるのも良くないし、魔法に切り替えたら?」
「うーん…そうだな。それに下の階層も行きたいし」
「私達が魔物を確認してからね?」
「ちぇっ…分かったよ。まだ追い付けないのは分かってるし」
おお。珍しく聞き分けがいい。
「じゃ、階段探そうか」
駄々をこねられる前に動こう。




