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グリーントータス

今日も5階層。楽し過ぎてなかなか先に進めない。しかも季節は夏真っ盛り。ダンジョン内は外よりも涼しい。


ダンジョン帰り、リナさんに会った。パーティーメンバーが休みの日に地道に進んでいるそうだ。

米は土鍋で炊いているそうで、勿論コーベットでもたくさん買ったそうだ。

「ギルドの情報だと、17階層が難しいって。米はその下なんでしょう?」


「歩いては難しいですね。1メートル位水没してて、シャケの魔物に食べられます」

「そこはどうやって越えたの?」

「私、テイマーなんです。シールドトータスに乗せて貰えば越えられます」

「テイムのスキルは私も迷ったけど、結局取らなかったのよ。でも、シールドトータスなんてよく従えられたわね?」

「グリーントータスが進化したんです」


「でも魔物を養うって大変じゃない?」

「私の従魔は優秀なので、逆に養ってもらってます。それに私にとっては家族ですから」

「家族…そう聞くと、羨ましいわ。…そうよね。従魔なら従えられていれば裏切られる事もないものね…」

普通はそういう物なんだよね。家族って考える人は実は少ない。良くてもペットだ。


「でも、私には無理ね。魔物に愛着持てそうにないもの」

「スライムとかもだめですか?」

「スライムじゃ役に立たないじゃない」

確かに戦闘では役に立たないけど、皮のなめしとか、見ていて癒される。


まあ、獲物を持って行けば依頼は達成だから、自分で加工しないなら、なめす必要もない。

町の近くに落ちていたら、私にも必要は…ある!私にはもふもふが必要だもん!


「じゃあ、私はそろそろ行くわね。また会いましょう!」

リナさんはパーティーメンバーの方に行ってしまった。

私達も行こう。そろそろ6階層にも行きたい。


階段だけは見つけていたので6階層にすぐに進めた。

6階層はウォーターベア。水を弾くので、毛皮は人気がある。

ダンジョンの魔物が落とす毛皮って何故か四角い。加工しやすくて助かるけど、ダンジョンが人の都合のいいようにドロップアイテムを落とすのは不思議だ。

途中、銅鉱石の採掘場を見つけたけど、並んでまで欲しい物でもない。


「みんな真面目だよね。5階層でも採掘して、6階層でも採掘して」

「そりゃ…普通は生活がかかっているからな」

普通、ドロップアイテムは大体全部売る物だ。魔道具作りのお金が生活の基盤になっている私とは違う。

私も珊瑚は集めたけど売るつもりはない。


ウォーターベアはそんなに強くない。ブラックベアが水魔法も使える感じ。

「ウォーターベアの皮で作ったブーツは、水分を通さないから雨が降っても快適だって」

「でもさ…付与がないブーツだと、蒸れるよね。みんな足の痒みに苦労しているって聞いた」

私達のブーツには中敷きにドライの付与が付いている。

「兵士のほぼ全員が水虫らしいな」

「ピュアとキュアで治りそうだけど」


「大きな町の教会関係者は聖魔法が必須って話だな」

それならイリーナは、将来的にも教会で活躍出来そうだな。


痒み止め用の薬草は常設依頼だ。聖魔法が使える人は少ないからみんな苦労しているのだろう。


7階層はグリーントータスだ。エメルが戦うのを嫌がるかと思ったら、全くそんな事はなかった。

同士討ちは魔物では珍しくない。しかもダンジョンだから別物とも言える。

「エメル…甲羅は売るからいいとして、肉はどうなの?共食いとか考えない?」

「全然。本当に気にしないで?しかも今の私はシールドトータスだもの。ね?」

「人族は共食いしたりしないが、我々からすると無駄だな。仲間意識があるなら尚更食べるべきだと思う」


仲間が飢えるよりはいいって事かな?何となく食べたくないって思ってしまうのは、エメルの為というより、私自身の感傷のせいだ。


「ユーリが嫌なら肉も売りましょう?食べる物はまだたくさんあるし」

このダンジョンに来てから増えた物だってたくさんある。


そういえば、グリーントータスの甲羅を利用した盾が売られていた。名前はトータスシールド。思わず吹き出した。


ドロップアイテムは放っておいても時間が経てばダンジョンに吸収される。甲羅は売る為に何枚か拾ったけど、肉はいずれ吸収されてしまうだろう。


「それにしても、嫌になる位広いな。東京ドーム位あるかな?」

「そもそも東京ドームの広さが分からないんだけど?」

「そういえば、田舎出身だったか」

「そもそもスポーツにはあんまり興味なかったし。おばあちゃんが相撲が好きだったからたまに一緒に見てたけど」

そもそも体育自体、苦手だった。それが今ではオリンピックの選手だってびっくりの運動神経だ。レベルって凄い。


それでも何とか階段を見つけた。

「8階層は…時間的に無理か」

「軽く覗いて行く位しよう」

魔法石に触れて、そっと覗く。居たのはレッドキャタピラーだ。

形は芋虫で、お尻に棘がある。そして虫系魔物なのに火に耐性がある。

鑑定で知った事だけど、凄いと思う。火に弱い魔物は結構多い。人だってそうだ。

だから鎧等に火耐性を付与する冒険者は多い。

あくまでも耐性だから完璧じゃないし、ドラゴンのブレスみたいな強力な物は防げない。


「戻りましょう?ユーリ」

「うん…そうだね」

ここのダンジョンの攻略は時間がかかりそうだ。


宿の食事ばかりでは米が食べられない。今日は夕ご飯を作る事にした。

5階層でたくさん手に入れたカラフルな魚を煮つけにして、海藻サラダも添える。玉葱たっぷりのドレッシングもかけて、ムーン用にワイバーンのステーキも用意する。

それと、キムチを作ってみた。

「うーん…ちょっと甘いかな?」

浸かりが甘い。

「エイジング」

うん。こんなもんか。ちゃんと乳酸発酵している。

「どう?チャチャ」

「美味しい」


そんなに辛くはない。私もご飯の上にちょっとずつ乗せて食べる。

「本当に器用だよな?覚えてるもんか?」

「前に教えたでしょう?一度見聞きした物を思い出す補助魔法」

「ああ。ルーン様に作ってもらったっていう?…俺もその魔法、欲しいけど覚えられなくて」

「バイクの事は知識がないから思い出せないよ?」

「分かってる。…まあ、努力はする」


「そうだ、ユーリ。俺もやっとウエアを覚えたぞ」

ウエアで高速で脱いで、収納庫へ。そしてスコルに戻ってみせた。

(うっかり服を破く事もない。ユーリも恥ずかしくないだろう)

「頑張ったね!ムーン」

(…その。時間がかかって済まなかった)


人化してまたウエア。うん。殆ど裸は見えない。

「服の事を考えると私も欲しいわね、補助魔法…チャチャやモコが羨ましいわ」

「ムーンとエメルは元の姿になると体型が凄く変わるからね。服ならまた買えばいいし、その為に多めに買ってあるし、モコにも作ってもらってる。あんまり気にしないで」


「私だって最近大きくなってきたから、服も買いかえてるし」

「俺には敵わないけどな!」

「だって、アルフレッドさん身長高いじゃん…自分の遺伝子のままだとあんまり大きくならないんだよな…モコは抜かすと思うけど」

「えー!ああ…そうだよね。成長、するもんね」

「そうしたらモコは妹だね!」


「拠点は変えるようになるのか」

「仕方ないよ。モコ達の意思でこの姿になってる訳じゃないんだから」

「ユーリ…私も抜かす?」

「チャチャはどうかなー?私、上の世界でも小さい方だったんだよね」

「同じ位?」

「そうかも…って、嬉しいの?」

「ユーリと一緒、嬉しい」


何か複雑だけど、フレイが作り変えたからどうなるか分からない。

「嫌だー!妹は嫌だー!」

「モコ、弟じゃないか?それ言うなら」

「…あれ?あ、そっか!でも…ボクはお兄ちゃんがいいな!」

「まあ、あと数年は先の話だよ。また秘密が増えちゃうけど仕方ないよね」


進化する可能性もなきにしもあらずだけど、モコのサラサラ、ツヤツヤの毛が無くなるのは悲しい。…ムーンの例もあるから、見た目年齢が上がるとは限らないし、それなら今のままでいいと思う。


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