海遊び
サロモスのダンジョンに入った。冒険者の他にも、どう見ても一般人も混じっている。
そうして、一階層の魔物は魔化したワカメ。鎌を手に、巻き付くワカメを狩っている。
ワカメが安い訳だ。海よりも簡単に手に入るだろう。
広場のあちこちでワカメ狩りをするみんなを避けながら、向かってきたワカメだけを倒した。採ってもいいけど、安く売られているし。
この町の人達は、日常的にワカメを食べているんだろうな。
夕べの宿の夕食にワカメスープが出てきたし、美味しかった。
今朝のワカメサラダも。
階段は割とすぐに見つかった。
2階層はウルフだ。食べ物じゃなくて残念。皮は売れるけど、供給過多だろうな。
皮自体は何にでも利用されるけど、ウルフ自体珍しい魔物じゃない。
ちょっと手間取ったけど、階段を見つけた。
フロアーが広いから、階段を探すのも大変だ。ギルドに行けば多分マップも売られているだろうけど、それもまたつまらない。
3階層は、槍イカ。先が槍の穂先のように鋭い。
このフロアーは海水が壁の代わりに広がっていて、その中に足場がある感じだ。
うっかり落ちると槍の串刺しになる。
「ここは雷魔法じゃないか?」
「そうだね…たまに出てくるのを仕留めてるより、効率がいいね」
フロアーを見渡して、水に入っている人がいないか確認する。
そうして、雷魔法。浮いてくるイカを網で掬い、収納庫に入れていく。
中には私達が魔法を使って仕留めたのにちゃっかりバッグに詰めている人もいるけど、気にしていてもしょうがない。早い者勝ちなのだ。
まあ、かなりの数が手に入ったので良しとしよう。
時にはジャンプで通路を渡り、次の階段を見付ける。
4階層の魔物は、巨大カマキリだ。ここは聖域近くのダンジョンと同じで、食べられる物とそうでない物が交互に出てくるのかな?
ドロップアイテムは鎌の先の部分だ。武器として加工出来そうだな。私達は要らないけど。
それにしても広いな。階層をクリアすれば魔法石で転移出来るとはいえ、これでは攻略が進まない。
「5階層は見たかったけど、もう時間的に厳しいな。無理は禁物だ」
「だね。お腹空いた」
「階段だけ見つけましょう?ここから戻るのも大変だし」
そうなんだよね。もう確実に半分以上は進んでいるはずだ。
かなりの急ぎ足で、魔物をなぎ倒しつつ進み、やっと階段を見付けた。
「はあ…もう夜だね」
「まあ、仕方ないな」
「ボクお腹空いたよー」
暗いと、街灯などはないので、誰も出歩かない。
「テッド、夜目は持ってる?」
「ああ。さすがにそれ位は」
なら問題ないか。途中、狙われた気がしたけど、ムーンの側にいたから、何事もなかった。
てか、私なんて狙ってどうするんだか。テッドは冒険者の格好をしているから貴族には見えないかもしれないけど、近くには絶世の美少女のモコがいるのに。
「命知らずだよな?お前を狙うなんて」
「か弱い少女に見えたのかな?」
「相手の強さも測れない人なんて、たかが知れてるわね」
「家族の中では弱い方だよ」
神話級の魔物もいたりするけど。
「その弱い方の奴がワイバーンを倒して喜んでいるんだから、見かけによらないな」
そう言うテッドだって、充分強くなってると思うな。
「会って最初の頃はミズトカゲも怖がってたよね?」
「し、仕方ないだろ!実戦は殆どさせてもらえてなかったんだから」
それが普通なのかな。コレットとか多少強い子はいたけど、冒険者としてそれなりに稼いでいたイリーナもそこそこだ。
まあ、コーベットの周囲は強い魔物がいなかったのもあるよね。
港があるからか、魚料理が多い。ソードフィッシュの塩焼きは、ご飯が欲しくなる。
野菜スープの中に入ったうどんもまあ美味しいけど。
やっぱり塩焼きと言えばご飯だもんね。ご飯だけ買いたくなるのも分かる。
まあ、亜空間移動出来るんだから、これからは米をコーベットで買う事も出来る。ただ、パーティーメンバーにも内緒にしているから、そこは大変だろうな…てか私も、もっと慎重になるべきかな?…今更か。
リナさんは慎重な人だし、冒険者活動もして、立派に自立している。
それなのに、なんで…。ううん、もう考えるのは止めたんだ。アイツは私の事を覚えてないし、関係修復もする気はなかった。単なる元彼だ。それにもう、そういう関係にはなりようもない。
もし私が大きくなって誰かと付き合う事になっても、同じ失敗はしない。
ううん、私には眷属っていう家族がいるんだから、必要ない。離れるなんて考えられないし、できないと思う。
もう、寝よう。明日もダンジョンだ。
気を取り直して5階層。
「うわあ…綺麗!」
フロアー全体が海だけど、そう深くはなさそうだ。そうして海藻や珊瑚、中を泳ぐ魚も見える。ソードフィッシュの姿もある。
赤や青、色とりどりの熱帯魚みたいなのも魔物なのだろうか?
水深は私の膝位。でも深い所もありそうだ。
珊瑚を採っている冒険者もいる。あとは海藻…あ!テングサもある。ゼリーや羊羮作りには欠かせない。
テングサの方に向かう途中、イソギンチャクに足を取られた。毒持ちだ。私には効かないけど、みんなには注意するように言った。
濡れるのが嫌いなモコは、人の目がない所で影に入れた。
反対にエメルは喜んでいる。そして、私が鑑定する前に色々教えてくれる。
エメルお勧めの美味しい魚にとどめを刺しても残るのは一部。これは仕方ない。
途中、テッドが転んで深みに連れ去られかけたけど、イソギンチャクを倒して事無きを得た。
イソギンチャクを倒しても、毒の小瓶がたまに拾える位。
ブーツ越しに挟まれた感触を感じて確認したら、岩に擬態しているブラウンガザミを見つけた。
「やった!蟹もいるよ!」
小型の蟹だけど、身は美味しい。残念ながらダンジョン内の為、残るのは脚やハサミの一部だ。それでも充分に嬉しい。
テッドはクリという名のウニを見つけて喜んでいる。
「俺、ウニ大好きなんだよ」
しかし、とどめを刺して項垂れた。硬い棘しか残らない。
でも、岩に張り付いたカキを見つけてあっという間に機嫌が直った。倒して残ったのは中身だったから。そのまま食べようとしたので、慌ててピュアをかけた。
「旨い!」
考えてみれば仮に毒があったとしてもテッドが毒状態になる事はないんだよね。
拾い食いもOK!
ウニは海で見付ければいいのだ。エメルのお土産に期待してもいい。
珊瑚はアクセサリーに加工できる。でも採取に夢中になってると、ソードフィッシュの角で突かれる。
「ユーリ達、とても楽しそう」
「そうだな。ユーリは子供なんだから、もっと遊べばいいと思う」
そんなムーン達の会話も耳を素通りしている。
今日1日、ダンジョンの事も忘れて楽しんでしまった。
海の幸もかなり手に入ったし、私は満足だ。




