アオさんと、スキルの管理者
ブラッテイーウルフの皮を売ったら、骨竜を倒した冒険者として驚かれた。
「本当に凄いです…Aランクのパーティーでも数組しか倒せていないのに」
「聖魔法を使えるので」
「あ…あなたが?」
そっか…光魔法を極めないと聖魔法は使えないもんね。年齢的に不味かったかな?
「ボクが!才能あるって言われたんだ」
「それは…凄いわね。とにかくまた皮を集めたらよろしくお願いね?モコちゃん」
ギルドカードには年齢は書いてあるけど、性別は書いてない。お姉さん、グッジョブ!
ブラッテイーウルフの毛皮は、手触りがとてもいい。
付与も幾つかつけられそうだけど、オーガの皮には敵わない。
防具として使うなら、他にも優秀な皮はある。それでも人気なのは、手触りかな?
きっとお金持ちの人がもふもふする為に買うのだろう。
ブラッテイーウルフの皮でぬいぐるみでも作ってみようかな?
「ユーリ、俺、タケノコに挑戦してみたいな」
リベンジしたいのか。
「いいよ?私もトレントの実とか蜂蜜欲しいし」
ていうか、アオさんに果物も分けてもらいたい。ぴよちゃんの事も話したいし。
よし!お弁当を作ろう!
色々と多めに作っておいてもいつの間にかなくなっているので、作り過ぎは問題ない。
すき焼きも作って、タッパーがあると便利なのにな、なんて思いながら詰める。
勿論蒲焼きも忘れない。タレも自己流だから、老舗の味には比ぶべくもないけど、というか、スーパーに売ってる蒲焼きの味しか知らないけど、テッドも喜んで食べていたので大丈夫だろう。
美味しいワイバーンのサイコロステーキも焼いて、完成。
デザートはどうしようかな?売ってる果物はどれもアオさんの所にある物には敵わない。
珍しい物ではないけど、ハーブを混ぜたシフォンケーキを焼こう。
アオさんにはまだ持って行った事はなかったと思うし。
もうすぐ私とテッドの誕生日だ。近いから一緒にお祝いしよう。
卒業して、一緒に行動を始めたのは春になってからだけど、色々あったな。
近くにゲートを持っていたけど、超感覚で、扉の向こうに人がいる事に気がついた。
銀鉱が見付かったのかな?冒険者にはアオさんの加護はあんまり関係ないよね?
透明になる魔法をかけてこっそりと亜空間から出て、人目につかない所で解除する。
(来てくれたんだね。ユーリ。人が多いから私は出る事が出来ない。だから呼ぶね)
はっと気がつくと、前に見た祭壇のある場所だ。ここは確か聖域のはず。
「久しぶり、ユーリ」
「アオさん、ここって聖域ですよね?いいんですか?」
「構わないよ。人化した私を見抜ける人はいないと思うけど、会話からばれたら嫌だからね」
昔馴染みではあるけど、特別扱いしてもらっていいのかな?
「とりあえず、お弁当食べましょう」
収納庫から次々に出すと、嬉しそうに笑ってくれた。
「淋しくはなくなりましたね?」
「今は少し煩わしいかな。真剣に物作りに取り組んでいる人達ばかりじゃなくて、加護があれば格が上がると考えてる人もいるようだから」
格、ねぇ…
「別に加護を頂いたからって偉くなる訳じゃないですよね?」
「それだけの加護を持ちながら自覚がない?…まあ、ユーリらしいけど」
「私…目立ちますか?」
「物凄くね。私はスキルの管理者エレノスだ」
かっちりとしたスーツが似合いそうな人?が現れた。
「こういう場所でないと降りられないからね。青龍殿、少しお邪魔する」
「管理者、って事は、シャンドラ様みたいな立場の方ですか?」
「ざっくり分ければそんな所だな。君は、新しいスキルを作らざるを得なくなったり、人には持ち得ないスキルを習得したりと、スキル管理者としては注目せざるを得ない。おまけにスキルを得るスピードも速い」
眼鏡をくいっと持ち上げて、ユーリを見下ろす。
「ええと…迷惑かけてごめんなさい?」
「別に謝ってほしい訳ではない。全てが君のせいとも言えないし」
「ユーリ、エレノスは喜んでいるんだよ」
「な…!まあ、見ていて面白くはあるな。主神様のお陰で魂の拡張がされているから、これからも得る物があるだろうし」
「ただ心配なのは、少々生き急いでいる気がしてならないかな?」
「どちらにせよ、同じ事だろう。ではユーリ、またな」
現れた時と同じようにエレノスは唐突に消えた。
「やれやれ、折角ならユーリの料理をつまんでいけばいいものを。忙しい立場だから仕方ないだろうが」
「スキル、ありすぎて全て活用できてない気もしますけど。あ、そういえばぴよちゃん…ええと、朱雀様に会ったんですよ」
「知っているよ。ぴよちゃんて呼ばれたのを自慢しに来たからね」
「自慢…ですか。親しみやすくなっていいとは思いますけど、もふもふで最高に可愛いから、みんな大好きになると思いますけど」
「我々は、皆の前に姿を現す訳ではないからね。長く生きているから、人が怖い物だと判っているんだ」
その基準は分からないけど、私は仲良くなれて嬉しいな。
「果物エリアにも大分人が来てるから、これを持って行きなさい。それと銀鉱は、枯らす予定だから、これを持って行って」
たくさんの果物と、銀。魔道具をたくさん作っても、有り余る量だ。
「そろそろ私の作ったミスリルの鎧は合わなくなるんじゃないかな?」
「ダンジョンでもミスリルは採れますし、足す量もそんなに要らないと思います」
「そうだね。出会った頃よりずいぶん大きくなったね」
もうミスリルの錬成で手間取る事もないし、アオさんが付けてくれた付与と同じ物も付けられるようになった。
私も進歩している。オリハルコンの錬成はまだ難しいけど、ここ数ヶ月で随分慣れてきた。
もうすぐムーンの大剣を作ってあげられるだろう。
私には今の剣で充分。強いていうなら、チャチャのガントレットの一部をオリハルコンにすれば、攻撃力も上がるだろう。
金は売らずにとってある。お金に余裕はあるし、錬金術で使うかもしれない。ダンジョンの金鉱はすぐ枯れちゃうから量も集まらないし。
「銀が枯れたと分かれば人の流れも落ち着くと思う。そうしたら、また気軽に会えるようになると思う。…もし他の四神獣に会うつもりなら、玄武は気難しいから気をつけて」
「特にその予定はないですけど。ぴよちゃんは小鳥の姿を見ていたから気になっただけですし」
自由に動くのはぴよちゃんだけなのかな?
「アオさんも出掛けたりします?」
「縮小化のスキルは持っていないし、私は目立つからね」
人化は持っていても、動くつもりはないのだろう。
「また、落ち着いたら来ますね」
その落ち着いた頃には大人になっていて、アオさんに会えなくなってたら悲しいな。
「ユーリなら大丈夫。魂を濁らせる事もないよ」
…ん?魂と魔力の質って何か関係があるのかな?
いずれまた来よう。もっとアオさんが驚くような魔道具を作れるようになったら。




