空飛ぶ魚の骨
シタールダンジョン14階層。とはいえ、今日は階段を探すつもりだ。
鰻はみんな気に入ったので、採りながら探す。
開けた場所なので、割とすぐに見つかった。
さて、15階層はどんな魔物かな?
青空と日射しの下、襲ってきた魔物は巨大な白菜だ。
手足が生えていて、棍棒を持っている。攻撃が力強い。
倒すと縮む、魔化した植物。それでも鍋物には欠かせない、嬉しい野菜だ。
ジャンプして押し潰そうとするのは、巨大キャベツ。
うん。いいね!良く使う野菜だ。
あ、玉葱も出るんだね。攻撃方法は一緒だ。切ると涙が出るから、切った人は他の人が守る。
そして、ハナタケ。何と毒持ちだ。
けど、倒すと毒はなくなる。良かったー!ハナタケも美味しいから好き!でも舞茸の形で味はえのきだからちょっと混乱しちゃう。
みんな鰻に夢中なのか、殆ど冒険者の姿を見ない。
基本、この世界の人達は肉食だけど、元日本人からすると、野菜あってこその肉料理だよね。
野菜は嬉しいけど、階段も探したい。
うわ!矢が降ってきた!大量に降ってくるので、エメルでも防ぎきれない。
結界で弾くと、落ちた矢はもやしに変わった。
矢がもやしに変わるなんて凄いな。なんとなく微妙だけど。
もやしは水耕栽培してるけど、使い道が多いから範囲指定して全部一気に拾う。
やっと階段を見つけた。ちょっと野菜採りに夢中になってた。
「な…!骨の魚が空を飛んでる?!」
16階層。あまりにも異様な光景に動きが止まってしまった。
「ボーンフィッシュだとさ。お、聖魔法で倒せるな」
骨を落とした。防具の補強に使われるらしい。
聖魔法でなくても力技でもダメージは与えられる。かなり硬いから魔法の方が楽だね。
けど、聖魔法が効くって事はアンデットなんだ…まあ、骨だしね。
魚のアンデットはあんまり怖くないな。
お、魔石も落とすのか。最近砕きまくっているから嬉しい。
元家の近くのダンジョンより、簡単な気がする。テッドは15階層がまだ危ない感じなのに、シタールのダンジョンは今、わりと余裕がありそうだ。
どこまで行けるか分からないけど、テッドの実力が不足してきたら、鰻や野菜を集めてもらってもいいかも。
あとはバジリスクの階層を守りながら強制的に進んで、米を集めてもらうか。
地上のイナゴより強いけど、さすがにイナゴには負けないだろうし、米なら喜んで集めてくれそうだ。
でも聖魔法が使えるから簡単に感じるけど、使えなかったらボーンフィッシュは結構面倒な魔物だ。
次の階層はどんな魔物が出るか分からないけど、油断だけはしないようにしよう。
迷路の途中で、開けた部屋を見つけた。そこには骨竜がいる。
これもアンデットなんだろうな。というか、低レベルの聖魔法ではあんまり効いていない。
「ターンアンデットを試してみるよ」
「その前に物理攻撃が効くか試させてほしい」
「どうせなら、他の属性魔法も試してみようぜ?」
ムーンの力だと、何度か剣を振るって骨折させる事ができた。
属性魔法はあまり効いていない。
やっぱりアンデット特化の魔法がいいよね。
一発で仕留めた。あ!宝箱だ。
中にあったのはギルドなんかにある簡易転移装置だ。手紙を指定のギルドに送るサービスを行っていて、装置そのものはダンジョンの宝箱に頼るしかない。
かなり高く買い取ってくれるみたいだし、売ってもいいかな?
魔道具として作るのは亜空間移動も覚えているから、できなくはないけど、さすがにそっくりに作るのは難しい。
変に目立ちたくないし、作るのは止めておこうかな。
そして、倒して初めて現れる階段。
他の冒険者がどこまで進んでいるか分からないけど、この骨竜は結構強敵だ。
この下は結構危険かもしれない。
「テッドは戻った方がいいと思う。いざとなれば他のみんなは影に入れられるけど、テッドは無理だから」
「そんな…覗くだけでもダメなのか?」
「もしボス戦になったら入った瞬間に扉が閉まって、魔法石の転移ができなくなる。それに強敵だったらテッドを守りながら戦うのはこっちにも危険が及ぶ」
「…分かったよ。けど、俺でも行けそうな時は呼んでくれ」
「うん。必ずしも下の階層に行くほど強くなる訳じゃないみたいだから、確認したら戻るよ」
テッドを見送って、階段を降りた。
そこにいた魔物は、赤黒いウルフ。
「ブラッテイーウルフか。通常の攻撃でも倒せるね。かなり素早いけど」
しかも群れで現れる。ダンジョンの壁を利用して、上からも。大体3匹位の群れで、連携して襲ってくる。
「テッド君を守りながらでも戦えそうよ?心配なら魔法で遠距離攻撃にまわってもらったら?装備もしっかりしてるし、呼ばないと後でうるさいかもよ?」
そうなんだよね。
(テッド、17階層はブラッテイーウルフだよ。どうする?)
(行く!少しでも力の差を縮めたい)
今レベル幾つなんだろう?100は越えてないよね。越えたら絶対自慢しそうだし。
階段付近で待っていたら、テッドが現れた。
「残念ながらドロップアイテムは皮だけど、高級品みたいだね。気をつけて?」
エメルには、私よりもテッドを守ってもらう。
「テッド!武器で対応できてないよ?魔法の援護にまわって!」
「くっ…仕方ない」
レベルの差なのか、スキルなのか、テッドの動きは拙く感じる。
「戻る?」
「いや…今、見切りのスキルを覚えたから、もう少し頑張りたい」
持ってなかったのか。見切り。だからタケノコに負けていたのかも。
予見も持っていなさそうだ。まあ、私の場合右目のお陰だけど。
さっきよりは対応できるようになったみたいだ。もう少し様子を見よう。
怪我をしても治してあげられるけど、命がなくなったら終わりだ。
「やっぱり強い魔物と戦うとスキルも覚えやすいな。ユーリに負けないように、頑張るぞ!」
ライバルか。本当にテッドはそればっかりだな。
向上心があるのはいい事だと考えるようにしよう。
でもいい加減、張り合うのはやめてほしいな…




