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アルメリア皇国

テッドとモコが王都に行って、ユーリは何もする気がおきず、ムーンをもふりまくり、もっと柔らかくと指示したモチに埋もれて危うく窒息しそうになった。

ダメダメだ。私の心の弱さだ。滝に打たれて修行をすれば治るだろうか?


そんな訳はない。

他人に必要だと思われたい。誰かの支えになりたい。

自分に言い訳しているようで、私も依存している。

浮気も散々されたし、どこかに行けば私がお金を全て出すのが当たり前。

それでも必要とされている事を感じて嬉しくなる。単なる自己満足。


そんな自分が嫌いだったのに変えられない。性格を変えるのは難しい。今でも変わってない気がする。

「ユーリ、クッキー作った」

私の大好きな蜂蜜クッキーだ。エメルと一緒に作ったそれを、熱々のまま持ってきてくれる。

「ありがとう、チャチャ、エメル」

風魔法で粗熱を飛ばして口に入れると、バターの香りと蜂蜜の甘さが口に広がる。

「幸せの味」

以前そんな事を言った気がする。気を使わせている…。涙を見られたくなくて、そのままチャチャに抱きついた。


エメルとは違って、スレンダーで胸も薄い。一見無口でクールだけど、チャチャは感情表現が下手なだけで、とても優しい。

私は一人っ子だったから、兄弟に憧れた。チャチャは年下だけどお姉さん。


ぼんやりとビデオ鑑賞していたら、モコ達が帰ってきた。

「ソータは放っておくの決定な。てか、現状手が出せない」

テッドから詳しい話を聞いた。

「魔法障壁の結界か。じゃあ何もできないね」

それこそ、時空魔法を練習する事もできないだろう。

聖剣の値段は馬鹿みたいに高かった。颯太に買える訳ない。


それにしても、そんなバッタもんみたいなの、私が見た時には一覧に無かったけど?

最も、武器欄は最初だけで、あとは食べ物の所しか見てないから分からないけど。


何にせよ、囚われてるなら、泣く女の子が減るから喜ばしい。

今なら私も王都観光ができる。

…いや、無理だな。


「そういえば、アリエール様に報告した時、お前の目に関するスキルが封印の影響で習得できないとか?…スキル封印とか、お前何やらかしたんだよ?」

「失礼な!ちょっとした不可抗力だよ!」

元はフレイのせい。でも結果はシャンドラ様が残存細胞を全部目に込めたせい。

確かに目が良くなったのは嬉しかった。メガネやコンタクト無しでは近くの物もぼんやりとしか見えなくて苦労していたから。


「分からんけど、お前なら自力で解けるようになるって」

うーん。これ以上は特に必要ないかな。今でさえ眷属から貰ったスキルを活用できてない。

スキル制限解除が2倍になって、また魔物しか使えないスキルが習得できても困るし。


「そういえば、アルメリア皇国の聖地には行かないのか?」

朱雀は四神獣の中では一番親しみやすいと言われている。

さすがに聖域内への侵入は許されてないが、声を聞き、加護や祝福を頂いた人は結構多いらしい。

効果は体力が増え、死ににくくなるようだ。長く患っていた病気が良くなったとも聞く。とはいえ、誰でも貰える物ではない。当然ながら身分は関係ない。


「まあ…私の命は眷属に繋がっているから、私一人の命じゃないもんね」

朱雀は大きな鳥。前に見たのはやっぱり違うよね。


毒々ダンジョンに出て、私とエメルとムーンに透明化の魔法をかける。

(やっぱりムーンに乗るの?)

(空を高速で飛ぶのはやっぱり怖いよ)

それにエメルの甲羅は滑るのだ。掴まる所があるけど、やっぱり怖い。


目指すは最南端。でもムーン達が辛くなる前には降りる予定。

いやその前に、きっと町とかあるだろう。そこで一旦ゲートを開く。


途中で大きな町を見かけた時にもゲートを開いておく。

あれは城も見えるし、皇都かもしれない。観光したいけど、今日はなるべく南に進もう。

途中でジンギスカン用のモコモコも狩って、収納庫に入れた。

(ユーリはこの毛も集めたいのね?)

(冬に今から備えておきたいからね)

脱脂もピュアで済むから楽々だ。去年はぴったりサイズだったから、今年は多分着られない。


目の前に、森と大きな木が見えてきた。あれは世界樹で、そこが聖域になっている。

世界樹の葉は錬金術にも使われる。朱雀に頼むと貰える事もあるようだ。

(私はこれまでね)

(あれ?ムーンは?)

(いや…まだ大丈夫だが、止めておこう。…立派な木だな。森の木々が小さく見える)


本当にムーンは平気なようだ。耐性がついた?…それっぽいスキルはないな。

分からないけど、まあいいや。森に入っていくのは明日にしよう。テッドも行きたがるだろうし、そろそろ日が沈む。


早速ジンギスカン鍋を用意して、今日は焼き肉だ。

キャベツと玉葱、水耕栽培のもやしも乗せる。

「おー、懐かしい味覚だ」


白いご飯を片手に、箸が止まらない。

多めに切ったつもりだけど、全然残らなかった。

「モコモコはもふもふで可愛いくて美味しい。最強の魔物だね!」

「弱いだろう?」

「攻撃力はなくても私の心に攻撃は届いているんだよ」

「はいはい。で?明日は朱雀様に加護を頂く予定なんだよな?」

「それは二の次かなー?是非もふもふさせて貰いたい」

「…いくら何でもそれは罰当たりだぞ?妄想を暴走させて怒りを食らったらおしまいだろ?」

「わ…分かってるもん」


でもせめて、お姿を見てみたいよね。教会にある立派な鳥様は、その通りのお姿なのか…その手触りは。

「はふぅ…テンション上がる!」

「テッド…ボク達は付いて行けないんだ。ユーリの事、お願いね?」

「…お願いされたくねー…」

テッドの心からの叫びは、空しく亜空間に響いた。


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