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モチキング

ダンジョン28階層へ降りた。

いたのは一つ目の巨人、サイクロプスだ。27階層よりも更に天井が高くなってる。

再生能力が異様に高く、痛みにも鈍いのか、少し位の傷なら気にする風もない。


何も考えたくなかったから強敵に挑もうと、階層を下って失敗したかな…。

危険と判断して、モコとチャチャは私の影の中に入れた。


再生能力なら、私も負けてない…まあ、加護のお陰だけど、エメルも防戦一方だし、ムーンも決定打に欠けている。

(ムーン、タイミングを合わせて奴の頭にホーリーを叩き込むよ!)

魔法はイメージだ。一発では足りない。なら指の一本一本から放出させるイメージで!


10本のホーリーと、ムーンのホーリーブレスでやっととどめを差す事が出来た。

魔力消費が半端ない。とりあえずは魔晶石に溜めておいた魔力を吸い上げた。


宝箱は出なかったけど、採掘ポイントが出現した。

この階層はまだ早かったな。いのちだいじにが作戦なのに、無茶をしすぎた。


ため息をつきながら、採掘をした。

オリハルコン。またもやファンタジー金属だ。

その場で錬成をしようとしたけど、私の錬成に抵抗してくる。

まあ、じっくりやればいい。ミスリルの時だって散々苦労したんだ。

重い金属で、鉱石が出ている所は虹色に輝いている。

(無理させてごめんね。もうこんな無茶はしない)

(それがいいだろう…我らも力不足だ)


敢えて階段は探さず、戻った。

モコとチャチャを出してあげて、二人にもちゃんと謝ったら、逆に謝り返されてしまった。

テッドとレイシアさん。それに今回はシーナさんも来ている。

相当ストレスが溜まっているらしく、テッドも恐々付いていった。


何か甘い物でも作っておいてあげよう。

「料理なら私達がやるわ。ユーリはまだ辛いんじゃない?」

確かに魔力は枯渇しかかったけど、もうかなり回復している。

やっぱり魔晶石は便利だな。みんなにも持たせてあげたい。

魔石どうしを錬成して、小さいのは何とかほんのちょっと大きくなったけど、これは魔晶石とは言えない。

大きな魔石どうしでやると、やっぱり砕けてしまう。


魔石は魔道具にも付与にも使えるから、ギルドには売らない。

たくさんあるし、気長にやろう。


モチが砕けた魔石屑や、ほんの少し錬成できたオリハルコンの屑などを綺麗にしてくれる。

スライムには魔石がないからモチには不要な成分だと思うんだけど、錬成に使った私の魔力が目当てなのかな?

いや、綺麗にするのは自分の仕事だと思っているのかもしれない。


錬金術師としても鍛冶師としてもまだまだだな。

本格的にやりたいのなら誰かに師事するのが一番だけど、みんなの装備を作ったり、手入れが出来ればそれでいいんだよね。


まあ、地道にやっていこう。とりあえずミスリルは扱えるようになったんだし。

でも、この重さはムーンが喜ぶかな?…。頑張ろう。


ムーンが釣りをしたいというので、一緒に川に来た。エメルは海に行ってしまい、モコとチャチャは森の探検だ。

ここの森は広大だから、探検しがいがある。私も奥までは行った事がない。山菜を見つけたら持ってきてくれると言ってた。


モチが久しぶりの川に、影から出たがったので出してやる。また共食いしてる…スライムって美味しいのかな?

海岸から離しすぎた醤油の実は育たなかったのもあるけど、見付からずに採れたのもあった。思ったよりもかなりの実がなる。当分醤油に困る事はないだろう。


私達が釣りをしている姿を、冒険者が不思議そうに見ていく。

それはそうだろう。ここに来る冒険者は殆どがダンジョン狙いなんだから。


足元に寄ってきたモチが、跳ねて私の膝に乗り、プルプルと震える。

「もう川はいいの?」

何気なく影に戻して、驚いた。モチがまた進化するみたいだ。


「ほう…モチは凄いな」

「そうだよね。今度はどんなスライムになるんだろうね」

メタルスライムの上…はぐれ?いや、ゲームじゃないんだから。

なったとしても素早さは変わらないだろうし、倒すと経験値が爆上がりするようなスライムはいないはず…?

外に出したら狙われるようなスライムにはならないよね?


久しぶりの釣りだから、腕が鈍ったかも。まあ、川魚が欲しい時はシタールダンジョンに行けばいいか。

それにしても、釣りは失敗だったかもしれない。嫌な事ばかり思い出す。

「…はぁ」


ムーンは自分の尻尾をユーリの上に乗せる。

「ごめんね?気を使わせちゃって」

もふもふの感触を楽しみながら、改めて大切にされている事を思い出す。

忘れる事は無理だけど、落ち込んでいる姿はなるべく見せないようにしよう。


亜空間に戻って、もう一度オリハルコンの錬成に挑戦していたら、テッド達が戻って来た。

「お前は、まーだそんな顔してんのか?女々しいってのはお前の為にあるような言葉だな!」

「!な…テッドに私の気持ちが分かる訳ないでしょ!」

「分かるか!恋愛経験値低いし。だけど、ユーリのせいでモコ達まで困ってるんだからな?…ほら、これでも食ってヘラヘラしてた方がお前らしいよ」

「トレントの実…え?15階層まで行ったの?」

「母さんが蜂蜜、蜂蜜ってうるさいし」

「失礼ね!無理はさせてないでしょ!」

「いや…俺タケノコに殺されかけたんだけど!母さんがもう進むって強行突破したからだろ!」

「それ位反応して避けなさいよ!魔法専門の私でさえ避けられるんだから!」


「…まあ、とりあえずありがとう。ご飯は出来てるよ」

「やった!米だ!」

「残念、今日はシーフードピザだよ」

「そうか…まあピザでもいいや」


「コーベットでも蜂蜜が出回り始めたのよね。でも、だからってダンジョン攻略は止められないわ!」

「父さんが可哀想だろ?全く」

「だって…私が元平民だからって、鬱陶しいったらありゃしないわよ!平民あってこその貴族でしょうに!」

「何か…ごめんなさい」

「ユーリちゃんは気にしなくてもいいのよ?元々ローナンとの国境にも接している訳だし、兵士の数が増えて助かってるんだから」


「マイクさんの事も、結局押し付ける形になってしまいましたし」

「それに関してはウチのテッドも女神様の使徒だもの。王都にいる人はどうするかはまだ決めていないにしても」

「ライアン君からも何度か手紙を貰っているわ。おだてて懐柔しているから、奴隷紋の効力も実質逃げ出さないようにするだけみたい」

「はあ…それって逆効果だと思いますよ」

「そうみたいね…ふふ。いい気味だわ。古い考えの集団の親玉みたいな奴だから、うちのアル君は未だに目の敵にされてるのよ」

ああ…人族至上主義者ね。…シーナさんて、上のお兄さん達と一緒で、旦那さんも君付けなんだ…へえ。


「そういえばエーファさんは最近見ないですね」

「冒険者だもの。たまに手紙を貰うから、元気みたいよ?」

いいなぁ…私も世界中のもふもふに会いに行きたい。

あ、また顔に出てたかな?モコがジト目で見てる。

いや、眷属だから感情が伝わりやすいだけだよね?


営業の仕事してたから、ポーカーフェイスには自信あったんだけどな。


次の日。出てきたモチを見てびっくりした。…変わりすぎじゃない?


モチ (5)

メタルキングスライム


水魔法 ジャンプ 変形 薬液精製 暴食 悪食

縮小化 超音波 解析


でかい…ムーンより体積があるだろう。王冠はさすがに被ってないけど、悪食…まあ、体に悪そうな物も食べていたからね。


「超音波って?」

「言葉、攻撃」

「!え…モチ、喋れるようになったの?」

「攻撃、魔物、殲滅」


「凄いじゃない!ゴブリン位なら倒せるかもよ?」

「シーナ、あまり近づかない方が」

「平気よ!どう見てもユーリちゃんに従っているじゃない」

「しかし、キングスライムは、スライム種では唯一危険視されています。核を震わせる事で任意の場所から超音波を発します」


とりあえず外に連れ出して、辺りに冒険者がいない事を確認して超音波を放ってもらった。

おお…太い木が真っ二つだよ。

「なるほど。超音波には、声を発するのと攻撃を出す二つの役割があるんだな」

「そうなんだ…凄いね!モチ!」

撫でようとしたら、モチは小さくなった。…まあ、大きいままじゃ、撫でられないからね。


「もう一つの解析って何?鑑定とは違うよね?」

「成分解析、作成」

なるほど…毒とかも舐めてたもんね。だから悪食なんて付いたのかもしれないけど。

「悪食、何でも、食す」

「あはは…でも毒は要らないよ?食べなくてもいいんだからね?」


「俺としては話す知能をスライムが持ったって所が一番驚きだな」

でも、感情はあるんだから、いつかは念話とか覚えてもおかしくないと思ってたけどね。

モチも立派になったな…モチキングって感じだね!



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