従魔達の要求
サツマイモを蒸していたら、チャチャが栗を拾ってきてくれた。
(わ。初お目見えだ。どこで見つけたの?)
というかモコもチャチャも、食べられる物を見つけるのが上手い。
(え?だめ?何で?)
ええと、危険…かな?何が危険か分からないけど、イガイガが痛いとか?
(チャチャが採ってくるって…チャチャは危険じゃないの?)
うーん。大丈夫そうだ。地形とかの問題かな?それか魔物が危険とか。
(無理しなくていいよ?チャチャが危ない目に遭うのは嫌だから)
分かってはくれたと思うけど、行ってしまった。
木魔法で出した蔓を編み込んで作った網に、薄く切ったサツマイモを乗せていく。
(スラミー、どうしたの?)
何かを要求しているみたいだけど、スライムはパスの繋がりが薄いから、上手く意思を理解できない。
水はまだあるし、さっき肉をあげたから、お腹も空いていないと思う。
これも私がテイマーとして未熟だから分からないのかな?
スラミーが、ぽよんと体当たりする。…うーん?何だろ。
エメルが遊びに来た。口にイカを咥えている。
(あら?モコの下げているポシェット可愛い!チャチャもマジックバッグ持っているみたいだし、私にも作ってよ)
(エメルじゃ泳ぐのに邪魔じゃない?それに手が届かないと思う)
(そうねー?ぴったりに作って、ここにポシェットが来るようにすれば)
(でも、ゴムがないみたいだから、難しいよ)
(ゴムって何?)
(うーん…こう、伸び縮みする物だよ)
(それなら、グリーフロッグの皮がそんな感じよ?沼地になら大概いるけど、この辺に沼地はないの?)
(どうかな?森の奥までは行ってないんだよ。奥に行くほど魔物も強くなるし、食料はこの辺で事足りるから)
(なら、私がいるうちに行ってみない?)
もしかするとチャチャなら知ってるかもしれないけど、出掛けちゃったし。
まあ、エメルは強いし、ゴムの代わりに使える物なら、私も髪を結ぶのに使いたい。
(ね、ならあとでモーモーを倒しに行きたいな。明日まで居てくれる?)
流石に廃棄された牛乳は飲みたくない。悪くなってなかったとしても、なんとなく嫌。
(チャチャ?エメルが来たから、沼地を探しに出掛けるね)
(ボクもいるからユーリは大丈夫だよ)
こういう時に返事がないのは淋しい。チャチャも早く念話覚えてくれればいいな。
スラミーが、また体当たりしてきた。
(そうだ。エメル、今日はずっとこんな調子なんだけど、スラミーはどうしたのかな?)
(ユーリに分からないんじゃ、従魔同士の方が分からないわよ。…でも、そうね?影に入れて欲しいんじゃないかしら?)
(そうなの?)
(影の中は、主の魔力で満ちてるから、私達従魔にとっては心地良いのよ)
うーん。おでかけしたかったのかな?ずっと家にこもりきりだもんね。でも、スラミーは安全な所でしか出してあげられないけど。
(おいで)
嬉しそうに跳ねて、私の中に飛び込んできた。
…うん?何か変化しそう?
良く分からないけど、スラミーには必要な事だったみたいだ。
(見当はつくの?)
(うーん。モコはカエル見たことある?)
(それって美味しいの?)
(どうかな?種類によっては食べられるけど)
(喉袋に毒があるから、それさえ気をつければ…でもあんまり美味しくないわよ?)
(それって大丈夫なの?使っても)
(そこさえ気をつければ大丈夫よ。かなり大きいから、上手く使えば色々作れるわよ?)
(やった!絶対見つけるぞ!)
今着ているごわごわの服は、下着から全部紐で縛るタイプなので、結び目がずっと気になっていたんだよね。
これは平民の服セットだから、もしかすると高い服は生地もいいかもしれないけど、私はまだ2歳だから勿体ない。
お洒落は大きくなるまではいいや。
というか、スカートだと防具が付けられないから、これでいいんだ。
ゴムがあれば、伸ばしっぱなしの髪も結ぶことができる。
というか、夏場はこの髪のせいで暑かったけど、この世界の女性はみんな髪を伸ばすみたいだから、切れないかな。
あてもなく歩き始めると、チャチャが戻って来た。
(チャチャ、沼地って分かる?こう…水が張ってて、でも海とか川じゃなくて、こう、ドロドロな感じの所)
チャチャは知ってるみたいだ。私達は、チャチャについて歩いた。




