巨大蜘蛛と餅
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
この頃、遊んでいる時が多すぎる。昨日は海産物を集めはしたけど基本海遊びだし。
戦闘訓練といえばハイオーガだけど、そこは食べられないのでワイバーンに敢えて双剣で挑んでみる。
補助魔法の飛翔を使って挑むけど、空での戦いは流石に向こうに分がある。
ワイバーンからの攻撃は、エメルが防いでくれる。
ショートワープも駆使して、刃に魔力を通しつつ、斬りつける。
羽根をもがれたワイバーンに、素早くとどめを刺す。
このワイバーンの丸太肉はどこの部位なんだろう?やっぱり尻尾かな。
でも尻尾だったら解体したらもっと細くなるし、骨も真ん中に通っているな…
(ユーリ?どうしたの?)
(何でもない)
肉を仕舞って再び空へ。ムーンが狙っているのとは違う物を狙う。
チャチャも時空魔法で作り出した足場を使ってワイバーンに殴りかかる。
ダメージは入っているけど一撃とはいかない。
幸い、再生能力がないから何度でも殴ればそのうち倒せる。
チャチャが空歩を覚えたみたいだ。
魔法の足場とは違うから、思い切り体重を乗せられる。
「やったね!チャチャ!」
嬉しそうに手に入れた肉をしまう。
よし!私も負けてられない!
ショートワープと空歩で近付き、斬りつける。
あ…この魔法は。
新たに覚えた空間断裂を使ってみる。
空間の切れ目には、ワイバーンでさえも敵わない。首を落とされたワイバーンは尻尾を残して消えた。
凄い魔法だな。ただ時空魔法にはまだ先がある。
四属性魔法と違って極めるのは難しそうだ。ちなみに私は四属性魔法の方は極めた。
魔法神様の加護のお陰もあって、魔法を覚えるスピードもとても速い。
(ユーリ、次に進んでみないか?)
うーん。次は食べられない魔物なんだよね。
(みんなは大丈夫?)
(ボクはサポートにまわるよ)
(じゃ、階段を探してみようか)
とはいえ、ただだだっ広い空間なので、探すのは難しくなさそうだ。
あっさりと見つかった階段を降りて、慎重に下を覗く。
(きょ…巨大蜘蛛!)
アーマードボアと同じくらいの大きさの黒い蜘蛛が八つもある紅い瞳を向けてきた。
(こいつはキラースパイダーだ!気をつけろ!ユーリ!)
蜘蛛糸が飛んできた!うわ…ねばねばで気持ち悪い。
服に付いて、動きを阻害されるので、糸だけ燃やそうとしたらちょっと熱かった。
「うー、糸が邪魔!そして素早い!」
攻撃がなかなか当たらない。ムーン達も糸に苦戦しているようだ。
ねばついた糸に混じって硬く鋭い糸も飛んでくる。気が抜けない!
魔法もあまり効かなそうだ。ただ、糸は燃えるから、飛んでくる糸に片っ端から火魔法を打ち込んでいく。
からの!インパクトキック!身体は固そうだと思ったけど、以外とそうでもない。なら剣が通るはず!…けど、たくさんある足に遮られてしまう。
再生はしないみたいなので、蹴り付けた奴を狙う。
ショートワープで蜘蛛の真上に!そこから剣を突き立てた。
やっと…倒せた。ドロップされたのは、布?
鑑定 スパイダーシルク 最高級の布地で、肌触りも良く、付与も付けられる。
確かに、本当のシルクみたいな手触りだ。前に蜘蛛の糸もドロップされたから、ここで布を集めればいい服が作れるかも。
ただ、噛みつかれると猛毒を受ける。私には効かないけど、みんなに護符を配って身に付けさせる。
ねばねばが嫌だけど、焼いている暇もない。常にみんなに気を配って、猛毒を受けたらすぐに回復魔法を使う。
ん…ホーリー?試しに使ってみたら、一直線に光線が走り、軌道上にいた蜘蛛が全てドロップアイテムに変わった。
シルクの布や糸もある。猛毒の小瓶は要らないけど、一つだけ拾った。
(凄い魔法だね!)
(聖魔法だから、そのうちモコも使えるんじゃない?)
チャチャも聖魔法を使うけど、モコよりも明らかに覚え方が遅い。まあ、チャチャは肉弾戦が多いし気長に待つけど。
なるべくなら魔法に頼らない戦いをしたいけど、先に進むのには向いているかも。
こんな艶やかな生地は目立つな。とりあえずは下着にしよう。
(食料品は集まったし、とりあえず戻ろうか)
ちょっと時間あるし、テッドのリクエストもあるからお餅を作ろう。
餅米は充分にあるし、蒸している間にきな粉と大根おろしを作る。
うん。お雑煮も食べたいな。
テッドが帰るまでまだ時間はありそうだし、具材も揃ってる。
臼も杵もないから、つくのは魔法だ。力持ちのムーンに任せてもいいけど、力任せにやればいいっていうもんじゃないんだよね。
真夏に餅とかちょっと不思議な気分だ。まあ、亜空間内は涼しいし、鍋を食べる時もあるんだから拘らない。
「おー!もしかして餅?」
「うん。懐かしいよね。最初に収穫した物はお菓子にしちゃったから」
「あー…海苔は流石にないか」
「そうだね。どっかに海苔がドロップされるダンジョンとかないかな?」
「ダンジョンはスーパーじゃないんだぞ」
「分かってるけど、お陰で餅は食べられる訳だし。レイシアさん、聞いた事ないですか?」
「大概の冒険者は貴重なドロップアイテムや、宝箱等を狙ってダンジョンに入るので…食料品狙いでダンジョンに入る冒険者は少ないですから」
「むう…」
「まあ、収納庫を持ってないと肉とかは腐らせちゃうからな」
「それにドロップアイテムの方が高く売れますからね」
そうだとなると、このダンジョンは冒険者にとってはあんまり嬉しくないかも?
でも蜂蜜なんかの貴重品は嬉しいよね!




